まず結論から
- 国の省令が改葬(遺骨をほかの墓へ移すこと)の申請に添えさせる同意の書類は、名義人(墓地の使用者)の承諾書だけです。親族の同意書や「何親等まで」という範囲は、省令にありません。
- 名義人が亡くなった墓では、市営墓地が相続人などの同意書を求めることがあります。吹田市は名義を継ぐとき、東大阪市は墓を返すときに求めます。
- 札幌市・川崎市の市営霊園が挙げる「6親等以内の血族」などは、同意を取る範囲ではなく、名義を継げる親族の範囲です。
- 書類の要らない親族にも、手続きの前に話します。横浜市・大津市・東京都の案内がそう勧めています。同意書がそろわないときに、不自然でない親族からの申請を認める管理者が多くなってきたと、全日本墓園協会は2016年度のFAQで答えています。
- 見積もりの単位(積算の仕方)は石材店によって違います。話す前に複数の石材店から見積もりを取り、費用の案をそろえます。北九州市も、市営霊園の案内で複数の業者からの見積りを勧めています。
親族全員の同意書がないと、墓じまいはできないのか
改葬の申請書に添える書類は、国の省令が3つ挙げています。墓の管理者が書く遺骨の証明、名義人でない人が申請するときの名義人の承諾書、市町村長が特に必要と認める書類です。
では、名義を継いで申請した人は、親族の誰に声をかけたのか。市営墓地にあった父方の墓をしまった孫の記録です。
両親の離婚で母方で育ち、祖父の名義だった父方の墓を自分の名義に変えて、市営墓地からしまった孫(note)
1人だけ連絡先を知っているのはいますが、それ以外は連絡もしようがないので、本来は連絡するのが儀礼的には正しいのでしょうけど、そこは省略しました。(感情的にも断固拒否)
例の、市役所から、この人に確認しても良いですか?と聞かれたのが、唯一連絡先を知ってる人です。
名義を変える申請では、祖父との続柄を示す戸籍をそろえ、簡単な家系図も書いたといいます。吹田市の市営墓地も、名義を継ぐ申請に、継ぐ権利のある人を全部書いた家系図と同意書を求めています。
出典: 墓じまいをしてみた(完結)(note)(台帳: V0125)
確かめた市営墓地で親族の同意書が要ったのは、名義人が亡くなったあとの、名義を継ぐときと墓を返すときでした。場面ごとに並べます。
| 場面 | 同意の書類 | 確かめた例 |
|---|---|---|
| 名義人が自分で申請する | 省令が添えさせる同意の書類はない | 省令が求めるのは、管理者の証明などです。 |
| 名義人でない人が申請する | 名義人の承諾書 | 宇治市は「承諾書(改葬同意書)」と呼びます。郡山市は申請書の中に承諾書欄があります。 |
| 名義人が亡くなり、市営墓地の名義を継ぐ | ほかの相続人などの同意書 | 吹田市は、継ぐ権利のある人全員の同意。甲府市は、相続する人以外の相続関係者全員。函館市は直系親族(親・子・孫など)の同意で、配偶者が継ぐなら不要です。 |
| 名義人が亡くなり、市営墓地を返す | ほかの相続人の同意書 | 東大阪市は、ほかに相続人がいれば全員の返還同意書。浜松市は、相続人以外が手続きするとき同意書です。 |
| 管理者の証明が取れない墓 | 代わりの書面 | 共同墓地などで証明が取れないとき、代わりの書面の例に、故人の親族からの同意書や確認書が挙がります。 |
札幌市と川崎市の市営霊園が挙げる「6親等以内の血族、3親等以内の姻族」(姻族は配偶者の側の親族)などは、名義を継げる親族の範囲です。名古屋市の市営霊園は、甥や姪も名義を継げるとし、続柄によっては、より近い親族の同意書が要る場合があるとしています。
名義を継ぐ手続きは祭祀承継者の記事に、申請書に添える書類の全体は墓じまいの書類の記事に、市営墓地の返し方は市営墓地の墓じまいの記事にまとめました。
書類の要らない親戚には、どこまで話せばいいのか
書類は名義人だけでも、親族に話すかは別の問いです。両親が元気なうちに、墓じまいの準備を進めている息子の記録です。
父から墓じまいを頼まれ、両親が存命のうちに準備を進めている息子(note)
墓じまいをするにあたり、まず親族への確認を行った。 父方の親族については、父が墓じまいについて説明し、了承を得ている。 また、この墓には母方の祖父らの遺骨も納められているため、母にも確認し、墓じまいについて了承を得た。
母方の親族はほとんどが亡くなっており、現在連絡を取っている親族もほとんどいない。そのため、現時点では墓じまいをめぐって親族間でトラブルになる可能性は低いと考えている。 さらに、僕の兄弟である妹にも確認し、了承を得た。
父は、自分の代ではなく、息子の代での墓じまいを望みました。全日本墓園協会の横田睦専務理事は、改葬の申請で、墓に納められた故人の親族の同意書や確認書が要る場合もあり得るとしています。
出典: 僕の「墓じまい」(note)(台帳: V0005)
親族と前もって話すよう勧める案内は、いくつもあります。話す相手をどう言っているかを並べます。
| 案内 | 話す相手の言い方 |
|---|---|
| 横浜市の改葬の案内 | 手続きを始める前に「ご親族内」で話し合う。 |
| 大津市の墓じまいの案内 | 手順の最初が「親族間での意思確認・意思決定」。 |
| 東京都「東京くらしねっと」 | 家族の中でも意見の違いが考えられるので、「家族や親族間」で事前に十分話し合う。 |
| 横田睦氏(『国民生活』2025年12月号) | 墓じまいに臨む前に「なるべく多くのご親族、お身内の方」と相談する。 |
| 日本石材産業協会の調査(2023年度・石材店) | 受注のときに、墓じまいについて「家族や親族」に相談しているかを確かめる。 |
どの案内も、話す相手を親等では区切っていません。いちばん広く言うのは、横田氏の「なるべく多く」です。
経験者への調査でも、話し合いは大変な工程に挙がります。株式会社フーフーが2026年2月に経験者100人に聞くと、最も大変だった工程(複数回答)の最多は「親族との話し合い・合意形成」の45人でした。墓じまいパートナーズが2026年3月に経験者52人に聞いた調査では、「親族との話し合い」は17.3%で3番目でした。最多は「お寺(住職)とのやり取り」の38.5%です。
話す前に、費用の案もそろえておきます。見積もりの単位(積算の仕方)は石材店によって違います。複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。北九州市も、市営霊園の案内で複数の業者からの見積りを勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事に、誰にどの順で切り出すかは反対されたときの記事にまとめました。
話がまとまったら紙に残すのか。判子は要るのか
親族との約束を、書面にした人もいます。祖父母の遺骨が入った実家の墓をしまうため、叔父と電話で話をまとめていた孫の記録です。叔父は、墓じまいはしてよい、更地になった墓地をゆずってほしい、ゆくゆくは自分の墓を建てたい、と話していました。ところが叔父の家庭の中で、それがもめごとになります。
祖父母の遺骨が入った実家の墓をしまうため、叔父や従妹に連絡した孫(アメブロ)
奥さんや子供たちにとっては迷惑でしかない
言った、言わないになると後々ややこしいと思い
「墓地はいらない、一切の責任を負わない、墓じまいに口出ししない」
と書面で覚書をかわしました
書き手と妹は、どちらも離れた土地へ嫁いでいます。叔母はすでに亡くなっていたため、その娘の従妹にも連絡しました。役所に出す書面には、様式がある市もあります。京都市は、名義人でない人が申請するときの承諾書の参考様式を載せています。
出典: 【墓じまい】最初の関門は「親族の同意を得る」(アメブロ)(台帳: V0116)
墓地に出す同意書には、形まで決まっているものがあります。全員の自署や、実印と印鑑登録証明書を求める墓地があります。
| 求められる形 | 確かめた例 |
|---|---|
| 全員の自署 | 吹田市の名義を継ぐ同意書。作成例では、父の名義を子の1人が継ぐとき、母と残りの子2人の3人全員が自署します。 |
| 実印と印鑑登録証明書 | 札幌市は、墓を返すときに使用者の実印と印鑑登録証明書。神戸市は、名義人が亡くなっていれば、代理人の実印を押した届書と申立書。大谷本廟(西大谷)は、名義変更に名義人と継ぐ人の印鑑登録証明書と、必要に応じて同意書。 |
| 同意書に代えて誓約書 | 福井市の名義を継ぐ手続き。将来紛争が生じる可能性がなければ、同意書は要らず、誓約書を出します。 |
東大阪市の返還同意書や甲府市の同意書は、市が様式を用意しています。親戚に前もって送る相談の手紙や、終えたあとの挨拶状の作例は挨拶状の記事にあります。
同意書がそろわない・継ぐ人が決まらないときは
名義を継ぐときの同意書は、集まらないことがあります。県の墓地の担当者は、複雑な家系や所在不明、身内の確執で、同意書を求めるのが容易でないと全日本墓園協会に尋ねています。
協会が2016年度の研究に伴って公開した答えは、「申請者主義」です。申請した人が、祭祀(先祖をまつること)を継ぐうえで不自然でない係累(つながりのある親族)なら認める考え方で、導入する管理者が多くなってきたとしています。異議が出たら申請者が家庭裁判所の手続きをする、という一文を申請書に入れるよう勧めています。
継ぐ人が決まらなければ、家庭裁判所が定めます。ただ実際は、親族の話し合いで決まるのが通常で、家庭裁判所に求めるのは稀だと、浦川道太郎・早稲田大学教授(当時)は書いています。申し立ての手続きは祭祀承継者の記事に、名義人が認知症のときの進め方は同じ記事の後見の節にあります。
まとめ
国の省令が改葬の申請に添えさせる同意の書類は、名義人の承諾書です。確かめた市営墓地で親族の同意書が要ったのは、名義人が亡くなって名義を継ぐときや墓を返すときで、吹田市や東大阪市が求めています。「6親等」は名義を継げる範囲で、同意の範囲ではありません。
書類の要らない親族にも、手続きの前に話します。話す前に複数の石材店に見積もりを頼み、費用の案をそろえます。北九州市も市営霊園の案内で勧めています。知らされなかった側の話は勝手に墓じまいされたときの記事に、法律の全体は墓じまいの法律の記事にあります。
親族に話す前・話せないまま・終えた日の3人の口コミ
最後に、親族への話を前にした人、話が進まない家族、終えた日に親族から声をかけられた人の記録から、一節ずつ紹介します。
実父と母の眠る墓を含む3つの墓を、娘1人に背負わせたくないと考える60歳目前の親(note)
墓じまいは、今の父が亡くなったあとに進めるつもりです。
そのころ、苦情を言いそうな関係者がどれくらい残っているのか。
まだ何も話していない弟が、どういう反応を示すのか。
出典: 自分的5大事業③ 墓じまい(note)(台帳: V0110)
一人っ子の夫を亡くし、田舎にある夫の先祖代々の墓を義父がどうするかを待つ妻(アメブロ)
義父は、墓じまいにあたって兄弟への説明や
了承を得ることを先延ばしにし続け、
気づけば数年が経っていた。
どうやら兄弟に話すのが相当気が重いようだ。
出典: 《墓じまい問題 その1》(アメブロ)(台帳: V0031)
三姉妹で寺の墓をしまった長女。法要のあと、立ち会った叔父たちと別れる場面(note)
「今まで面倒なことをありがとうね」と言う言葉をいただき、心底ホッとした。あらかじめ了承は得ていたものの、本心はわからなかったから。
出典: 墓じまい③ 〜無理ゲーと思われた壁に、自動ドアがついていた件〜(note)(台帳: V0060)
