まず結論から
- 役所に出す中心の書類は、遺骨を移す許可を求める「改葬許可申請書」です。今の墓の管理者に、申請書の欄へ遺骨が納まっている証明を書いてもらって出します。横浜市・京都市・福岡市の案内がこの形です。
- 国の省令が添付として名指しするのは、この証明と、名義人以外が申請するときの名義人の承諾書です。ほかは「市町村長が特に必要と認める書類」として市が決めます。
- 移し先の証明(受入証明書か使用許可証)は、世田谷区・八王子市・富山市の案内が求めています。横浜市と奈良市の案内の「必要なもの」には挙がっていません。
- 出す先は、住まいのある市区町村ではなく、遺骨がいまある市区町村です。墓の区画を返す手続きは別で、神戸市は市立墓園なら市の返還手続きを、民間の墓地なら各墓地の管理者への問い合わせを案内しています。
- 書類より先に、複数の石材店に撤去の見積もりを頼んでおきましょう。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積もりを勧めています。
「墓じまいの書類」は、役所では何と呼ばれているのか
墓地のことを定める法律(墓地、埋葬等に関する法律)にも、その省令にも、「墓じまい」という言葉は出てきません。法律の言葉は「改葬」で、遺骨を別の墓や納骨堂へ移すことを指します。改葬には市区町村長の許可が要ります。
神戸市は墓じまいを、遺骨を別の墓や納骨堂に移したうえで、元の墓を撤去することと説明しています。書類も、遺骨を移す許可と、墓の区画を返す届けの2つに分かれます。
熊本の市の霊園にある実家の墓の、墓じまいを進めた当事者(個人ブログ・アメブロ)
墓じまいの流れとしては
1. 現在納骨されている遺骨の行き先を決める
⬇️
2. 役所に
❶改葬許可申請届
❷墓地使用廃止届
を申請⬇️
3. 役所から
❶改葬許可証
❷墓地使用廃止届
に許可印をもらう
2024年10月末に熊本へ出向き、寺の住職に相談して動き出した人の記録です。墓は寺ではなく市の霊園にあったので、2つとも役所に出す流れです。横浜市の市営墓地も、遺骨を全部移すなら返還の手続きを同時に行うとしています。
出典: 墓じまい①(♪マミの気ままなブログ♪・アメブロ)(台帳: V0034)
書類ごとに、誰に書いてもらい、どこへ出すかをまとめました。横浜市や八王子市では、申請書の用紙を窓口かホームページで手に入れられます。
| 書類 | 誰が書く・どこでもらう | どこへ出す |
|---|---|---|
| 改葬許可申請書 | 自分で書く。遺骨が納まっていることの証明(埋蔵証明)の欄は、今の墓の管理者に書いてもらう | 遺骨がいまある市区町村 |
| 名義人の承諾書・委任状 | 墓の名義人(墓地使用者)が書く。京都市では、名義人以外が申請するなら承諾書、代理で出すなら委任状 | 申請書に添えて市区町村へ |
| 移し先の証明 | 移し先の墓や納骨堂の管理者が出す。受入証明書か使用許可証で、求める市の場合だけ | 申請書に添えて市区町村へ |
| 改葬許可証 | 申請を受けた市区町村が出す | 移し先の管理者に渡す |
| 区画を返す届け | 墓地ごとの書式。横浜市の市営墓地は返還届出書 | 今の墓地の管理者。市営の墓地なら市(神戸市・横浜市の案内) |
改葬許可証は、亡くなったときに受け取る埋葬許可証・火葬許可証とは別の書類です。法律は、市区町村長が埋葬・改葬・火葬の許可を出すとき、それぞれの許可証を交付すると定めています。埋葬と火葬の許可は死亡の届出を受けた市区町村長が、改葬の許可は遺骨がいまある地の市区町村長が出します。長崎市の案内は、移し先の管理者に渡すのは改葬許可証で、亡くなって初めて納めるときは火葬許可証を渡すとしています。自宅で保管していた遺骨を墓に納めるだけなら改葬許可は要らず、火葬済みの証明が付いた埋火葬許可証で納められると、柏市は答えています。
墓の区画を返す届けは、遺骨を移す許可とは別の書類です。太田市(群馬県)の公園墓地の案内も、返還届とは別に、お骨があれば改葬の手続きが要るとしています。
返す先は、墓の種類で変わります。横浜市が2022年10月に市民へ聞いた調査では、墓を持つか使える1,119人のうち、寺などの宗教法人の墓地が48.8%でした。市営などの公営墓地は14.7%です。公営の霊園を返すときの手続きと助成は、墓じまい補助金の記事にまとめました。
国が決めている書類はどこまでで、何が市で変わるのか
全国で共通なのは、国の省令が決める枠です。申請書に添える書類として、省令は3つを挙げています。
1つ目は、今の墓の管理者が作る、遺骨が納まっていることの証明です。2つ目は、名義人以外が申請するときの名義人の承諾書。3つ目は「その他市町村長が特に必要と認める書類」です。厚生労働省の資料も、名義人以外が申請するなら名義人の承諾が必要だとしています。
近くに墓を借り、父と母の遺骨を移すことにした当事者(個人ブログ・アメブロ)
改葬許可証を取るのはかなりややこしいと聞いていたが、元の墓地の管理者と自治体が親切で、必要書類は最小限、郵送で手続きが出来て、郵便が素早く届くなら2週間程度で改葬許可証がもらえるらしい。
進行性の神経難病がある人が、電動車椅子で15分ほどの墓地を借りたときの記録です。これまでの墓は叔父に任せ、父と母の遺骨だけを近くへ移すことにしました。必要な書類の量は、遺骨がある市の決め方で変わります。
出典: 終活 ~墓じまい~ その3(アメブロ)(台帳: V0098)
確かめた市の案内を並べると、違いは移し先の証明・手数料・出し方に出ます。
| 市 | 移し先の証明 | 手数料と出し方 |
|---|---|---|
| 横浜市 | 「必要なもの」に挙がっていない | 無料。窓口か郵送 |
| 京都市 | 案内の手続きの流れに出てこない | 無料。申請書はフォームで作れるが、オンライン申請はできない |
| 奈良市 | 「必要なもの」に挙がっていない | 1枚300円。オンラインでも申請できる |
| 八王子市 | 使用許可証か受入証明書の写し(原本は不要) | 無料。郵送もできる |
| 富山市 | 使用許可書の写しか受入証明書等 | 1通300円。郵送なら郵便小為替で払う |
| 豊中市 | 受入証明書等「があれば」用意する | 1通450円。オンラインで事前に申し込める |
| 札幌市 | 市営の霊園へ移すなら使用許可証の原本。民間なら施設名と住所が分かるメモ | 申請の書類の名前が「埋蔵等届」。郵送もできる |
今の墓の管理者が出す証明にも、手数料がかかることがあります。北九州市の市立霊園では、この証明に300円かかります。横浜市は、管理者に確かめるよう案内しています。福岡市は申請書を2部出し、1部は許可証に添えて返されます。
豊中市は、様式は市町村ごとに違うので、遺骨がある市町村に問い合わせるよう案内しています。書類をそろえる前に、遺骨がある市区町村の案内を開いてください。
書類は、どの順番でそろえるのか
鎌倉新書は2026年1月、「いいお墓」の利用者のうち、改葬や墓じまいを検討・実施した人に調査をしました。大変だったことの上位は、遺骨の移し先選び(38.8%)と役所の手続き(32.3%)です。
金沢の奥にある父の家の墓を、東京の近くへ移そうとした当事者(個人ブログ・note)
さらに墓じまいには
改葬許可申請という行政手続きが必要で
これ自体は数百円程度なんですが
新しい納骨先が決まっていないと申請できない
つまり
とりあえず墓じまいだけしておく
ということはできない仕組みのようです
10年ほど前、高齢の父に代わって資料を取り寄せ、調べた人の回想です。一家は最終的に、墓をそのまま残すことにしました。国の省令は、申請書に「改葬の場所」を書くよう定めています。
出典: お墓じまいに挫折(note)(台帳: V0025)
八王子市の案内では、まず今の墓の管理者に伝え、遺骨が何体あるか、火葬骨か土葬骨かを確かめます。次に移し先を決めて、使用許可証か受入証明書をもらいます。移し先は、申請書を書く前に決めておきます。
そのあと申請書に今の管理者の証明をもらい、名義人以外が出すなら名義人の承諾ももらって、市に出します。受け取った許可証を今の管理者に見せて遺骨を取り出し、移し先の管理者に渡して納めます。墓地の管理者は、許可証を受け取るまで遺骨を納めさせてはならないと、法律で決まっています。
撤去の見積もりは、この流れより前に頼んでおきます。宮崎県小林市の市営墓地の案内も、最初の段で受入先と施工業者を決めるとしています。見積もりの単位は石材店によって違うので、複数の石材店から見積もりを取り、額と内訳を比べてください。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積もりを勧めています。
小林市の市営墓地では、撤去工事は工事施工の承認を受けてから始め、完了から7日以内に完了届と返還届を出します。移し先の選び方は、墓じまいの遺骨の行き先の記事にまとめました。石材店の選び方は墓じまい業者の記事、撤去の費用は墓じまい費用の記事で扱っています。
改葬許可申請書には、何を書くのか
申請書の様式は市ごとに違いますが、書く中身は国の省令が決めています。
| 欄 | 書く中身 |
|---|---|
| 亡くなった人 | 本籍・住所・氏名・性別と、亡くなった年月日 |
| 埋葬・火葬 | 埋葬か火葬をした場所と、その年月日 |
| 移すこと | 改葬の理由と、改葬の場所(移し先) |
| 申請する人 | 住所・氏名、亡くなった人との続柄、墓の名義人との関係 |
申請書は、遺骨1体ごとに用意する市があります。世田谷区は1体につき1通、奈良市は遺骨1体につき1枚です。八王子市は2体目から続きの用紙(続紙)に書き、申請書と続紙にまたがる割印を今の管理者にもらいます。郡山市は、5体以上なら申請書の裏面をコピーして使うよう案内しています。
鎌倉新書は、埋葬されている人数分だけ申請書の記入が要るケースを、役所の手続きが負担になる理由の一つに挙げています。亡くなった人のことで分からない欄は、空欄にせず「不明」と書くよう福岡市は案内しています。申請書づくりを人に頼める範囲は、墓じまい業者の記事にまとめました。
まとめ
墓じまいで役所に出す中心の書類は、今の墓の管理者の証明をもらった改葬許可申請書です。名義人以外が出すなら名義人の承諾書を添えます。ほかに何が要るかは、遺骨がある市区町村が決めます。
順番は、見積もりと移し先が先で、役所はそのあとです。区画を返す届けは、別に出します。迷ったら、遺骨がある市区町村の窓口に問い合わせてください。
墓じまいの書類に向き合った3人の口コミ
最後に、これから調べる人・書類を受け取った人・手続きを終えた人の記録から、一節ずつ紹介します。
実家など3つの墓を抱え、墓じまいを考え始めた60歳目前の当事者(個人ブログ・note)
そのほか、墓石の撤去や更地への復旧、墓地の返還なども必要になります。必要書類や手順は自治体や墓地によって違うので、実際には一つずつ確認することになります。
出典: 自分的5大事業③ 墓じまい(note)(台帳: V0110)
都立霊園にある祖父母の墓について、霊園の管理事務所から申請の書類を郵送してもらった当事者(個人ブログ・note)
書類には、重要な箇所に蛍光マーカーが引いてあったり、分かりにくいところには、手書きで注意書きが添えられているではないか!
やさしい配慮がとてもありがたくて、嬉しかった。
出典: 墓じまいのはなし ③(note)(台帳: V0058)
市設の霊園にあった父と先祖の墓をしまい、寺の納骨堂へ遺骨を移した当事者(個人ブログ・note)
費用はかけられない我が陣営なので、手続き類はすべて自分でやって極小予算に抑えた。お墓を解体して中の遺骨を移動させるには、お役所の手続きも必要だった。幸いわたしはペーパーワーク系は苦にならないタイプ。
役所や霊園とは郵便でもやり取りしながら、聞き慣れない書類を6人分取り寄せなんとか進めた。
出典: 先祖の遺骨と、妊婦のわたし〜30歳の墓じまい(note)(台帳: V0057)
