まず結論から
- 墓じまいをするつもりのない人は、少なくありません。全国石製品協同組合が2026年4月、全国の40〜70代500人に聞いた調査では、「将来もするつもりはない」が57.2%でした。全日本仏教会と大和証券が2024年12月、継ぐ墓がある人に聞いた調査でも、すでに墓を移した人は5.3%です。
- 墓地埋葬法に、改葬(遺骨をほかの墓や納骨堂へ移すこと)をするよう求める条文はありません。改葬について定めているのは、するときに市町村長の許可を受けることなどです。
- 墓を残すなら、継ぐ人が要ります。横浜市の条例では、使用者が亡くなるか所在不明になって10年たち、継ぐ人がいなければ、墓地を使う権利が消えます。
- 継ぐ人がいないまま「無縁仏でいい」とすると、片付けは墓地の側に回ります。松戸市の白井聖地公園は、管理料を3か年納めないと使用許可を取り消します。使用者が元に戻さなければ市が改葬し、その費用は使用者から徴収するとしています。
- 自分の墓や遺骨はいらない、と考える人もいます。横浜市の調査では、自分の遺骨を散骨にしてほしい人が25.5%でした。遺骨は、いらなくても捨てられません。刑法190条は、遺骨を遺棄した者を三年以下の拘禁刑とします。
墓じまいをしない人は、どれくらいいるのか
墓じまいの話をよく見聞きすると、しないのは少数派のように思えるかもしれません。実家の墓を自分たちで守っている人の記録です。菩提寺(先祖の墓がある寺)では、お盆の法要を寺で檀家がまとめて受けるといいます。
実家の墓を自分たちで管理している、娘が2人いる当事者(個人ブログ・アメブロ)
お坊さんを家へお招きする訳ではないので、お布施を多く包んだり、余計な気を遣ったりする必要がなくて、本当に助かります。
とは言え、ぶっちゃけ「お墓や仏壇なんて無ければ、お盆休みはもっと気楽に遊びに行ったりできるのに…。」と思うこともあります。
墓は自宅と同じ市内にあり、維持費は年約3万円と書いています。菩提寺に不満はなく、自分の代での墓じまいは考えていません。継ぐ墓がある人への調査でも、60代以上では「移したくない」の割合が高まる傾向でした。
出典: 「墓じまい」について(アメブロ)(台帳: V0086)
しない人の多さは、調査の数字にも出ています。聞いた相手が違う3つの調査を並べます。
| 調査 | 誰に聞いたか | 結果 |
|---|---|---|
| 全国石製品協同組合(2026年4月) | 全国の40〜70代の500人。インターネット調査で、回答者の76.6%は男性 | 墓じまいを「将来もするつもりはない」57.2% |
| 全日本仏教会・大和証券(2024年12月) | 全国の20〜79歳のうち、継ぐ墓がある人(集計上3,292人) | すでに墓を移した5.3%、将来移したい16.0% |
| 横浜市(2022年10月) | 無作為に選んだ20歳以上の市民。郵送とインターネットで1,822人が回答 | 先祖の墓を守る立場が「ある(墓じまいを予定)」6.1%(図1) |
回答した市民全体では、先祖の墓があり今後も所有し続ける人が39.7%で、墓じまいを予定する人の6.1%を大きく上回ります。
墓じまいを考えて、やめた人もいます。鎌倉新書が2026年1月、「いいお墓」の利用者に聞いた調査では、検討してやめた人の理由の最多は「解体費用が高すぎた」の22.2%でした。ほかの理由は反対されたときの記事に、調査どうしの数字の違いは墓じまいの調査を比べた記事にまとめました。墓を残すと決めたときに払い続けるものは、墓じまいしないとどうなるかの記事にあります。
継ぐ人がいないまま残したら、誰が片付けるのか
「無縁仏でいい」と考える人もいます。誰も世話をしなくなった墓は、その後どうなるのか。誰も管理していないとみられる、義母の実家の墓について書いた人の記録です。
縁のある墓が5つあり、そのうち高知県にある義母の実家の墓の行方を案じる嫁(個人ブログ・note)
家は見えてる。利権もある。報道もされる。
お墓は?。
管理料のかからない、ポツンと一軒家に行く道中にある、山の中の墓地のお墓が放置されても、誰も困らない。放置されるがままに放置されるだろう。
しかし、それでいいのか?。
その墓の姓を名乗る親族は、もういないといいます。片付ける権利のある親族は墓の話題に触れず、書き手はその時を待つしかないと書いています。無縁になった墓の改葬には、多くの費用と年数がかかります。
出典: 墓の世話は誰がする?(note)(台帳: V0066)
放置された墓で「誰も困らない」とは限りません。引き継ぐ親族などがいなくなった墓を片付ける改葬(無縁改葬)の費用と手間が、どこに回るかを並べます。
| 誰に | 何が回るか |
|---|---|
| 市町村(公営の墓地) | 一橋大学の国際・公共政策大学院に出された2016年の報告書によると、鹿児島市は100基前後の改葬に5年と年4,000万円程度をかけました。東京都は2009〜2011年度に、平均で年約9,390万円です。厚生労働科学研究の2024年の報告書は、使用者に代わって整地する費用を賄えない自治体が少なくない、と指摘しています。 |
| 寺や民間の墓地 | 同じ2016年の報告書は、これだけの費用と歳月を民間、特に中小規模の寺院墓地が負担できるとは思えない、としています。 |
| 墓の使用者 | 松戸市の白井聖地公園は、管理料を3か年納めないと使用許可を取り消します。使用者が墓地を元に戻さなければ市が改葬し、その費用は使用者から徴収します。横浜市の条例も、返還しない人に代わって市長が措置を採り、その費用を徴収できると定めています。 |
無縁の墓として整理が始まるまでの順番と年数は、墓じまいしないとどうなるかの記事にまとめました。撤去されたあとの遺骨と墓石の扱いも、同じ記事の後半にあります。継ぐ人がいないときの墓と相続の関係は、相続放棄と墓じまいの記事へ。
自分の代で片付けると決めたら、撤去は複数の石材店から見積もりを取って頼みます。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。総額の目安は墓じまい費用の記事、頼める範囲は墓じまい業者の記事、お金が足りないときはお金がないときの記事にあります。
自分の墓も遺骨もいらない、と考えたら
いらないのは、今ある墓だけとは限りません。自分が入る墓や、自分の遺骨もいらない、と考える人もいます。父と同じ墓に入りたくない母を持つ、娘の記録です。
父と同じ墓に入りたくない母を持ち、墓そのものに疑問を持つ娘(個人ブログ・アメブロ)
私だけでは決められないけど、死んだ後のことなんて、死人は何も分からないのに、なぜ、わざわざ、お金を出したり、法要に集まったりしなくてはいけないのか。
私は、どうしても、そう思ってしまうんです。
ほかの家族は、墓はあったほうがよいと考えています。母は自分の遺骨を、海に撒くか樹木葬で別にしてほしいと話しました。本人も今は樹木葬を望み、子に管理費を遺したいと書いています。横浜市の調査では、自分の遺骨を散骨にしてほしい人が25.5%でした。
出典: 父と同じ墓に入りたくない母。野生動物の役に立ちたい私。(アメブロ)(台帳: V0115)
横浜市のアンケートで、自分の遺骨の希望は「納骨(お墓や納骨堂に納める)」が最多で、「散骨」が続きました。その他の書き込みには、火葬のあと遺骨を引き取らない「ゼロ葬」も6件ありました。2009年の調査ですが、第一生命経済研究所が全国の35〜79歳584人に入りたい墓を聞くと、「お墓はいらない」は20.5%でした。
「いらない」と言うとき、指しているものは3つに分かれます。それぞれ、決まりの上で何ができるかを並べます。
| いらないもの | できること | 決まり・案内 |
|---|---|---|
| 今ある墓(墓じまい) | しないで残せる。残すなら、継ぐ人を決めておく | 墓地埋葬法が改葬について定めるのは、するときの許可など。横浜市では、使用者の死亡か所在不明から10年たって継ぐ人がいないと、使う権利が消える |
| 自分が入る新しい墓 | 墓石の要らない合葬式墓地(ほかの人の遺骨と一緒に納める墓地)に入る。散骨を望む人もいる | 大阪市の合葬式墓地は、墓石を建てる必要がなく、墓を継ぐ人のことで悩む人も使えると案内している。散骨の決まりは散骨の記事へ |
| 遺骨 | 捨てられない。合葬の墓に納める、散骨するなど、行き先を決める | 刑法190条は、遺骨を遺棄した者を三年以下の拘禁刑とする。行き先は遺骨はどうなるかの記事へ |
宗教者の見方は分かれます。日蓮宗の公式のQ&Aは、「お墓はいらない」という問いに、墓や仏壇は家族の心の柱だと答えています。国民生活センターの月刊誌「国民生活」2025年12月号には、仏教学者の佐々木閑・花園大学文学部特別教授への取材記事があります。佐々木氏は「もうお墓は不要という人は、墓じまいして構いません。」と述べています。記録を残したい人には、インターネットを使う墓を提言しています。ほかの宗派の答えは墓じまいは罰当たりかの記事にまとめました。
遺骨は、いらないと思っても捨てられません。合祀(ほかの人の遺骨と一緒に納めること)を選ぶ前に、遺骨が戻らなくなる境目を墓じまいの後悔の記事で確かめておきます。
まとめ
墓じまいを将来もするつもりはない人は、全国石製品協同組合の2026年の調査で57.2%でした。墓地埋葬法に、改葬をするよう求める条文はありません。墓を残すなら、継ぐ人を決めておきます。
継ぐ人がいないまま放っておくと、片付けの費用と手間は、墓地を営む市町村や寺の重荷になります。松戸市のように、使用者から費用を取る墓地もあります。自分の墓は合葬式墓地や散骨で持たずに済ませられても、遺骨は捨てられません。自分の代で片付けるなら、撤去は複数の石材店から見積もりを取って頼みます。
「墓はいらない」をめぐる3人の口コミ
最後に、「墓はいらない」という考えをめぐる3人の記録から、一節ずつ紹介します。
義母の遺言とは違い、きょうだいが墓を建てることになった家の嫁(個人ブログ・note)
義母の遺言では
お墓はいらない
両親が眠っている大阪の納骨堂に納めてほしい
きょうだい仲良くしてほしい
出典: 今となっては(note)(台帳: V0056)
家族が合祀でよいと話すなか、父から墓地を手放したいと相談された娘(個人ブログ・note)
代行してもらうくらいなら、手放したほうがよいとも思うから。
お金で解決する問題ではなく、お墓は心の拠り所のような存在だと思っている。
出典: note Diary #31 墓じまいに迷う(note)(台帳: V0059)
未婚の一人っ子で、脳梗塞のあと親の墓の墓じまいに動き出した当事者(個人ブログ・アメブロ)
子供の頃から
死んだらお墓に入るというのが好きではなくて
とにかく死後は自由になりたくて
海に散骨と思っていましたが、
出典: 11月11日11時に墓じまい(アメブロ)(台帳: V0030)
