まず結論から
- 墓から出した遺骨を撒くのに、遺骨を別の墓へ移すための役所の許可(改葬許可)は要りません。総務省行政評価局の2023年の報告書に載った、厚生労働省の見解です。千葉市桜木霊園は、散骨のために遺骨を取り出すとき、焼骨取出し申出書と墓地使用許可証の原本を出すよう求めています。
- 撒く前に、骨は形が分からない粉に砕きます。砕き方を決めた法律はなく、業者や市民団体の自主規制とされています。
- 散骨事業者には、文書での契約、費用の明細書、撒いたあとの散骨証明書を、国の事業者向けガイドラインが求めています。墓石の撤去は、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も、市営霊園の工事は複数の業者から見積りを取るよう勧めています。
- 撒いた骨は、再び集めることが困難です(浄土宗の公式のQ&A)。一部を手元や別の墓に残す選び方もあります。郡山市と大津市は、遺骨の一部を分ける分骨に改葬許可は要らないとしています。
- 北海道長沼町・宮城県松島町・熊本県南阿蘇村は、条例で散骨を禁じています。長野市は、散骨する市区町村にも事前に確かめるよう案内しています。
散骨にするとき、誰に何を出すのか
撒く場合と家に置く場合に改葬許可が要らないのは、厚生労働省の見解です。行き先ごとの要否は、墓じまいで骨はどうなるかの記事に表でまとめました。
八王子市と千葉市桜木霊園の案内では、書類のやり取りの相手は、役所ではなく、今の墓地の管理者と散骨事業者です。相手ごとに並べます。
| 相手 | 出すもの・確かめること |
|---|---|
| 今の墓がある市区町村 | 改葬許可の申請はしません。八王子市は、散骨に届出や許可申請の制度はないとしています。川口市は、散骨事業者から証明書類を求められたら、保健総務課に問い合わせるよう案内しています。 |
| 今の墓地の管理者(寺・霊園) | 千葉市桜木霊園は、散骨のための焼骨の取出しに、焼骨取出し申出書と墓地使用許可証の原本を求めています。墓地を使わなくなったら、区画を元に戻してから返還を届け出ます。 |
| 散骨事業者 | 八王子市は、事業者に頼むときの必要書類は事業者に確かめるよう案内しています。 |
| 石材店 | 墓石の撤去を頼みます。北九州市は、市営霊園の工事を複数の業者から見積もるよう勧めています。 |
墓から出した骨は、そのまま撒けるのか
父の骨と一緒に海へ撒くと決めて、遠い墓をしまった家族の記録です。
父の骨と一緒に海へ撒く予定で、石川県の山にある父の実家の墓じまいを、母・兄・妹と見届けた人(個人ブログ・note)
骨壺に一人一人名前が書いてあったらいいのだけど、まさか掘り起こされるとは思ってないからね。(石屋さんによると、名前が書いてある骨壺もあるらしい)
このお骨たちは、後日、父のお骨と一緒に海洋散骨するので、郵送で散骨の業者に送られ、粉砕してもらう予定。
開けた納骨室は骨壺で満室で、祖母の骨を包んだ風呂敷は湿気を含んで濡れていました。国の事業者向けガイドラインは、骨を形が分からない粉に砕くよう求めています。
出典: 墓じまいを見届けてきた(note)(台帳: V0069)
厚生労働省の研究事業でまとめられたこのガイドラインは、プラスチックやビニールの副葬品などを撒かないことも求めています。
2015年の月報司法書士の論考は、砕く手続きを法律は何も定めておらず、業者や市民団体の多くが自主規制の形で粉にしているようだ、としています。
日本海洋散骨協会は加盟事業者に、遺骨と分からない程度(1〜2mm程度)まで粉にするよう決めています。骨の形のまま撒くと、見た人には遺骨を捨てているのか見分けがつかず、宗教的な感情を害するおそれがあるためです。
湿った骨の扱いは先祖の遺骨の記事に、遺骨を送るときの運送会社の扱いは遠方の墓じまいの記事にまとめました。
業者に任せたら、撒いたことを何で確かめるのか
粉にする作業も撒く作業も、事業者に任せる人がいます。2014年7月の墓じまいを、手順の箇条書きで振り返った記録です。
実家の菩提寺(家が代々付き合ってきた寺)にあった父の墓をしまい、3人分の遺骨の粉骨と散骨を業者に任せた娘(個人ブログ・note)
③墓解体墓石回収業者探す
④粉骨業者(散骨もやってる)探す
⑤役所へ相談に行く
⑥「遺骨引渡し証明書」お寺よりもらう
⑦工事当日、墓石の閉眼供養してもらう
⑧粉骨業者が取りにきたので遺骨を引き渡す
⑨解体工事、朝から夕方までかかり、更地に
⑩寺へ報告
当日は業者が出張してきて、3人分の遺骨を受け取りました。後日、作業完了の書類が届き、遺骨は東京湾の沖合に撒かれています。日本海洋散骨協会の加盟事業者は、遺族が望めば、撒いた場所の緯度・経度を書いた散骨証明書を出します。
出典: 汚実家片付け番外編 『墓じまい〜散骨』② 具体的な流れ(note)(台帳: V0003)
立ち会わない人にとって、撒いたことを確かめる手がかりは、事業者が渡す散骨証明書です。ガイドラインが事業者に求めることを、時期ごとに並べます。
| 時期 | ガイドラインが事業者に求めること |
|---|---|
| 契約の前 | 契約の内容を書いた約款を作って公表し、求められたら見せる |
| 契約のとき | 契約は文書で結び、費用の明細書を契約書に付ける |
| 撒いたあと | 散骨を行ったことを証する散骨証明書を作り、利用者に渡す |
| 年度ごと | 散骨の件数や場所などの実施状況を、自社のホームページなどで公表する |
海に撒くなら、日本海洋散骨協会は加盟事業者に、人が立ち入れる陸地から1海里以上離れた海だけで撒くよう定めています。撒く海の決まり・乗る船・家族の見送りは、海への散骨の記事にまとめました。
散骨にするときの段取りを図にまとめます。最初に、墓石の撤去は複数の石材店から見積もりを取り、額と内訳を比べます。北九州市も、市営霊園の工事は複数の業者から見積りを取るよう勧めています。散骨の費用は、約款と費用の明細書で比べます。
全部撒くか、一部を残すか
墓じまいのあとに散骨を選ぶ人は、多くはありません。墓じまいパートナーズが2026年3月、墓じまいの経験者52人と検討者178人の計230人にネットで聞いた調査です。墓じまい後(予定を含む)の供養先に散骨を挙げた人は3.5%でした。
撒くと決めたあとも、全部を撒くか、一部を残すかは選べます。子がなく、両親の遺骨を散骨した人の記録です。
子がなく、住職を呼ばずに母を見送ったあと寺の檀家をやめ、両親の遺骨を散骨した人(個人ブログ・note)
墓の撤去、遺骨の粉骨、離檀、散骨。
住職や石材店の協力もあり滞りなく済んだ。
全部散骨せず粉骨は少し残しておいた。
両親の写真は見開きの写真立てに入れていつも見える場所に置いてある。
写真の裏には大サジ一杯程度の残しておいた粉骨を入れてある。
墓には父の遺骨が入っていました。撤去を頼むのと同時に、母の遺骨と一緒に粉骨も頼んでいます。浄土宗の公式のQ&Aは、撒けば再び集めることは困難で、後年「遺骨を返してほしい」と言われる例もあるとしています。
出典: 早期退職してそろそろ1年 #番外、墓じまい と 実家じまい(note)(台帳: V0051)
日本海洋散骨協会は、本人の希望が確かめられず、葬儀を主宰した人も親族でないときの決まりを置いています。全量散骨を避けるなどの助言に努めるよう、加盟事業者に定めています。あとで遺族が現れて墓や手元供養を望んだとき、もめるおそれがあるためです。残し方ごとの手続きを並べます。
| 残し方 | 手続き |
|---|---|
| 全部を撒く | 改葬許可は要りません。撒いた骨は、再び集めるのが困難です。 |
| 一部を家に置く | 改葬許可は要りません。八王子市は、遺骨を家に引き取るなら、あとで納めるときに備えて墓地の管理者から埋蔵証明書などをもらうよう勧めています。 |
| 一部を別の墓に納める | 遺骨の一部を分ける分骨は、改葬許可が要りません(郡山市・大津市)。今の墓地の管理者から分骨証明書をもらい、移す先の管理者に出します。 |
撒いてほしい人の理由も、全部と一部で違いました。第一生命経済研究所が2009年9月、全国の35〜79歳の男女600人に聞いた調査です(有効回収584人)。自分の遺骨を全部撒いてほしい人は17.0%、一部だけ撒いてほしい人は11.8%でした。
全部撒いてほしい人では「お金がかからないから」が、一部だけの人では「思い出の場所に眠りたいから」が多く挙がりました。
家に置くときの決まりは遺骨を自宅に置く記事に、継ぐ人がいない墓は一人っ子・独身の墓じまいの記事にまとめました。
散骨は、法律でどう扱われているのか
総務省行政評価局の2023年の報告書は、散骨を、墓地埋葬法や施行規則が想定していない葬法としています。撒いてよいか、どう撒くかは、各地方公共団体の判断に委ねられているとも書いています。
2008年の参議院の調査資料は、法務省が非公式ながら、節度をもって行われる限り違法性はない旨の見解を示している、と紹介しています。地方自治研究機構は、法務省などが公式な文書で見解を示したものは確認できない、としています。
2015年の月報司法書士の論考は、陸で撒いた骨に土や落ち葉をかける例を挙げています。墓地埋葬法が禁じる、墓地の外に骨を埋めることに当たるのではないか、という論点です。
散骨を条例で決めている市町村もあります。地方自治研究機構が2026年4月1日時点で確認した条例を、型ごとに並べます。
| 条例の型 | 市町村 |
|---|---|
| 散骨を禁止 | 北海道長沼町・宮城県松島町・熊本県南阿蘇村 |
| 原則禁止(要件を満たして届け出などをすれば撒ける) | 埼玉県秩父市・鹿児島県伊佐市 |
| 散骨場の経営を許可制に | 長野県諏訪市・静岡県御殿場市・埼玉県本庄市・神奈川県湯河原町・静岡県熱海市・神奈川県箱根町・静岡県伊東市・静岡県三島市・愛媛県愛南町・神奈川県三浦市 |
| 散骨場の許可制と、散骨の原則禁止 | 北海道岩見沢市 |
散骨場の許可制の型は、撒く行為そのものは規制していません。長野市は、条例などで散骨を制限している自治体もあるとして、散骨する市区町村にも事前に確かめるよう案内しています。
遺骨を捨てることを罰する刑法190条は墓じまいで骨はどうなるかの記事、法律の全体は墓じまいの法律の記事で扱っています。
まとめ
墓から出した遺骨を撒くのに、役所の改葬許可は要りません。千葉市桜木霊園のように、取り出しの届け出を求める墓地があります。骨は形が分からない粉に砕き、事業者とは文書で契約し、費用の明細書と散骨証明書を受け取ります。
墓石の撤去は、複数の石材店から見積もりを取ります。撒いた骨は再び集めるのが難しいので、一部を手元や別の墓に残す道もあります。撒く場所の市区町村の決まりも、事前に確かめます。
墓の遺骨を散骨にした・考えた3人の口コミ
最後に、墓をしまって遺骨を撒くと決めた人と、考えたうえで別の道を選んだ人の記録から、一節ずつ紹介します。
3月に母を見送り、妹・弟と実家近くの寺の墓をしまった人(個人ブログ・note)
お骨の入った骨壺は、一旦、弟が預かり、その後、「散骨」の予定です。
まだスケジュールが決まっていないので、独り者の弟の家に一旦、骨壺を預ける形になりました。
出典: 墓仕舞い(note)(台帳: V0070)
疎遠だった父方の、京都府の市営墓地にある墓をしまうことにした人(個人ブログ・note)
とりあえず、材料が出揃った感じになったので、方針を決めました。
骨が出てきたら困る。絶対に引き取りたくない。
出てきたら、海洋散骨。
これが大原則でした。
出典: 墓じまいをしてみた(途中)(note)(台帳: V0017)
母の遺骨を、散骨ではなく納骨堂に納めた息子(個人ブログ・note)
私も当然、それは考えた。ただ、私もこうなると古い人間らしく、自分のことならともかく母を当人が願ってもいないのに海に撒いてしまってはいけない気がした。
出典: 399 お墓の話(note)(台帳: V0126)
