まず結論から
- 新居浜市・新潟市・名古屋市の市営墓地では、遺骨を移す許可(改葬許可)と、区画を返す届(返還届)の2つを出します。
- 窓口は市で違います。札幌市や名古屋市の霊園は1か所でまとめて受け付け、浦安市は改葬許可が市民課、返還が墓地公園管理事務所です。
- 新居浜市や神戸市は、墓石を撤去しません。使う人が石材業者に頼み、更地にして返します。北九州市は基礎まで撤去し、川口市の安行霊園は基礎石を残して返すなど、範囲は市で違います。
- 名義人が亡くなっていれば、岐阜市や寝屋川市は先に名義を継ぐ手続き(承継)が要ります。名古屋市は承継と返還を同時に申請でき、神戸市は代理人が返還を届け出ます。
- 返したあとの遺骨は、札幌市や大阪市の合葬墓(ほかの人の遺骨と一緒に納める墓)へ移せます。市営の墓を返す人なら、市外に住んでいても使えます。
市営・公営の墓地の墓じまいは、どこに何を出すのか
市営墓地の墓じまいは、遺骨を移すだけでは終わりません。新居浜市は、墓地の管理者に使う権利(使用権)を返す必要があると案内しています。公営の霊園にあった父の墓をしまった人は、自分が動いたことをこう挙げています。
父が建てた公営の霊園の墓を、母の同意を得てしまい、寺の永代供養の墓に納めた娘(個人ブログ・note)
3ヶ月ほどの期間がかかりましたが、特に私が動いたのは、
・霊園の事務所へ墓じまいの意向を伝えにいき流れと書類をもらいに行く
・必要書類を揃えて霊園の組合事務所に提出
・業者さんに改装許可証を渡す
・お寺に永代供養の旨を伝えて料金案内ももらったこと
・綺麗にしていただいたお骨をお寺に持っていき納めさせてもらう
このぐらいでした。
案外動いてみると自分が動き回るという感じはなかったですね。
祖父が亡くなったときに父が建てた墓で、指定された市に住む人が優先して申し込める公営の霊園にありました。撤去の相談も、霊園の組合事務所へ聞きに行く形だったといいます。公営墓地の区画は、管理者の許可を受けて使う権利です。
出典: 2年前に実家の墓じまいをしました(note)(台帳: V0113)
新潟市は市営墓地の墓じまいに、改葬許可の取得・施設の撤去・墓地の返還の3つが要るとしています。返還届には、元に戻したあとの写真を付けます。新居浜市も、返還届に墓石の撤去が終わったと分かる写真を求めています。
横浜市の久保山・三ツ沢・日野公園墓地では、遺骨を全部ほかの墓地へ移すなら、返還の手続きも同時に行います。改葬許可と返還を同じ窓口で出せる市と、別々の窓口に出す市があります。
| 市と墓地 | 改葬許可 | 返還 |
|---|---|---|
| 札幌市の市営霊園・墓地 | 墓園管理係か、各霊園の管理事務所。 | 同じ窓口か郵送。 |
| 名古屋市の八事霊園・愛宕霊園 | 管理事務所でまとめて手続きでき、書類を返送して約2週間後に保健所から許可証が届きます。 | 管理事務所。 |
| 横浜市の久保山・三ツ沢・日野公園墓地 | 墓地管理事務所への届出に加え、区役所での手続きも要ります。 | 墓地管理事務所にある返還届出書で。 |
| 浦安市の墓地公園 | 市民課。 | 墓地公園管理事務所。 |
窓口の場所と順番は、札幌市の墓じまいの記事・名古屋市の墓じまいの記事・横浜市の墓じまいの記事にまとめました。申請書の書き方は墓じまいに必要な書類の記事にあります。
どこまで片づけて返すのか。撤去は誰が頼み、誰が払うのか
墓石の撤去は、市がしてくれるのでしょうか。新居浜市と神戸市は、市では撤去しないので、使う人が自分で石材業者などに頼むよう案内しています。どこまで壊して運び出すかは、見積もりの段階で確かめます。市営墓地の墓をしまった人には、こんな場面がありました。
市営墓地にある祖父名義の父方の墓を、自分の名義に変えてしまった孫(個人ブログ・note)
ちょっと待てよという事態も…
区画内に親戚の方ですかね?◯◯さんという方のお墓もありまして…
思わず、そんなん知らんけど?え!?解体範囲について、市役所さん立ち会いのもと石材屋さんと確認したと見積もりの時言われたんですけど!?と返しました。
遠方の墓で、行政の手続きと見積もりは業者に代行してもらっていました。工事はその後、予定どおり行われています。神戸市は、傾斜地などで基礎の撤去の範囲が分かりにくいときは、管理事務所に前もって相談するよう案内しています。
出典: 墓じまいをしてみた(完結)(note)(台帳: V0125)
札幌市は、使用者が責任をもって墓碑などをすべて撤去し、更地にして返すとしています。返還の申請書には、工事業者の名前と撤去の予定日を書きます。名古屋市の八事霊園・愛宕霊園でも、撤去工事の費用は名義人の負担です。ただ、どこまで撤去すれば「更地」なのかは、市によって違います。
| 市と墓地 | 返すときの状態 |
|---|---|
| 北九州市の市立霊園 | コンクリートの基礎も撤去し、使う前と同じ更地にします。 |
| 岐阜市の市営墓地 | 元の状態にし、基礎や墓石を残しません。 |
| 新居浜市の市営墓地 | 原則として基礎を含めてすべて撤去します。平尾墓園は、上の墓石やその他の設置物を撤去する例が示されています。 |
| 川口市の安行霊園 | 区画を囲む基礎石だけを残した状態で返します。 |
| 寝屋川市の公園墓地 | 撤去して更地にし、土も入れ替えます。再利用できる巻石(区画の周りの石)は、残したまま返すことがあります。 |
| 福井市の市営墓地 | 墓石・境界石・樹木を撤去し、草取りと清掃もします。 |
日本石材産業協会が2023年度に行った業界内の調査(184件の回答)では、見積もりの単位(積算の仕方)は、面積・体積・重さ・一式などに分かれていました。撤去の範囲を管理事務所で確かめ、その範囲で複数の石材店に見積もりを頼みます。北九州市も、複数の業者から見積りを取るよう勧めています。
宮崎県小林市は、市営墓地の返還までの順番を案内しています。遺骨の受入先と施工業者を決め、市民課で改葬許可証を受け取ります。名義が自分でなければ、承継を願い出ます。工事の承認を受けてから撤去し、完了から7日以内に完了届と返還届を出します。
納めた使用料は、横浜市の条例では原則として返しません。戻る市の条件と額は、墓じまいした後の土地の記事にまとめました。撤去の額の目安は墓じまい費用の記事に、返さずに置いた墓がどうなるかは墓じまいしないとどうなるかの記事にあります。
名義人が亡くなっている墓は、誰が返すのか
市営墓地の名義(使用者)が、亡くなった祖父母や親のままの家もあります。名古屋市の八事霊園・愛宕霊園は、返還できるのは名義人で、名義人が亡くなったままでは返還できないとしています。市設の霊園にある墓を、祖母のあとに引き受けた人は、こう書いています。
市設の霊園にある、父と祖母が眠る墓を引き受け、寺の納骨堂へ遺骨を移した当事者(個人ブログ・note)
その祖母もすでにお墓の中で、わたしはそのお墓の相続人になってしまった。想像していたよりも何十年も早くて、身内がいなくなった喪失感で全身が身動きも取れず立ちすくしているのに、「ソウゾクニン」の言葉がまだ若造のわたしにペッとテープで貼り付けられたみたいに思った。
そこから時間をかけて生きているわずかな関係者での話し合いをした結果、みんながお参りに行きづらいその場所よりも、墓石を撤去し、永代供養をしてくれるお寺の納骨堂にご先祖の遺骨を移すことになった。
父を21歳で見送り、祖母も亡くなったあと、出産を控えた時期に手続きを自分で進めた人です。横浜市の条例は、使用者が亡くなると、代わって先祖をまつる人(祭しを主宰する者)が、市長の許可を得て使用権を継げると定めています。
出典: 先祖の遺骨と、妊婦のわたし〜30歳の墓じまい(note)(台帳: V0057)
名義人が亡くなっているときの進め方は、確かめた市の案内では3通りありました。
| 進め方 | 市と中身 |
|---|---|
| 先に名義を継ぐ | 岐阜市と寝屋川市は、使用者が亡くなっていれば承継の手続きが要ります。 |
| 継ぐのと返すのを一度に | 名古屋市の八事霊園・愛宕霊園は、名義の変更と返還を同時に申請できます(承継返還)。 |
| ほかの人が返還を届け出る | 神戸市は、使用者が亡くなっていれば代理人が届け出ます。申立書と、死亡の記載のある戸籍謄本などを付けます。福井市は、実質的に承継している人から届け出られるとしています。 |
継げる人の範囲も市が決めています。札幌市は基本的に親族(配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族)とし、名古屋市は甥や姪も継げるとしています。札幌市では、前の使用者が滞納した管理料は、継いだ人が払います。
家族のうち誰が継ぐかの決め方は祭祀承継者と墓じまいの記事に、神戸市の代理人の届け出は神戸市の墓じまいの記事にまとめました。
返したあとの遺骨は、市の合葬墓へ移せるのか
墓を返したあとの遺骨の行き先に、合葬墓を用意している市があります。神戸市は鵯越墓園に合葬墓を整え、管理を市が永続的に行います。市営の墓を返す人なら、市外に住んでいても使える合葬墓があります。
| 市と施設 | 墓を返す人の扱い | 使用料 |
|---|---|---|
| 札幌市の合同納骨塚 | 市営霊園・墓地を返す使用者は、札幌市民でなくても使えます。分骨でも申請でき、生前の予約は受けていません。 | 1体9,100円。 |
| 大阪市設瓜破霊園の合葬式墓地 | 2026年度の募集では、市設霊園の霊地を返して遺骨を移す人は、大阪市に住んでいなくても申し込めます。 | 直接合葬は1体5万円。大阪市に住んでいない人は1.5倍です。 |
| 市川市霊園の合葬式墓地 | 一般墓地を返すことを条件に、特例で許可します。市外の人も申し込め、生前と遺骨あわせて2体までです。 | 1体用71,000円。 |
| 浦安市墓地公園の合葬式墓地(合祀室) | 墓所返還者等支援事業に申し込むと、墓所を返す人は合祀室の使用料を負担せずに遺骨を移せます。 | 本人と配偶者の生前予約は1人35,000円。 |
都立霊園の墓は東京都の墓じまいの記事に、合葬墓のほかの行き先は墓じまいの遺骨の行き先の記事にまとめました。自分の市の窓口と手順は、地域別の記事から探せます。
まとめ
新居浜市や新潟市の市営墓地の墓じまいでは、改葬許可と返還届を出します。窓口が1か所の市も、分かれる市もあります。新居浜市のように、墓石は使う人が石材業者に頼んで撤去する市があり、どこまで更地にするかも市で違います。撤去の範囲をそろえ、複数の石材店の見積もりを比べてから決めます。
名義人が亡くなっていれば、承継から始めるのか、返還と同時に出せるのか、代理人が届け出るのかを、市の案内で確かめます。返還に付く市の助成は、墓じまい補助金の記事にまとめました。
市営の霊園の墓じまいを進めた3人の口コミ
最後に、市営の霊園にある墓の墓じまいを進めた3人の記録から、一節ずつ紹介します。
電車とバスを乗り継ぐ遠い市営の霊園にある墓をしまい、遺骨を合葬墓地へ移した当事者(個人ブログ・note)
墓じまいをするなら、とりあえず石材店に問い合わせればいいらしいと知り、実際に問い合わせたのが4月頃。
出典: 墓じまい 費用と手続き期間の記録(note)(台帳: V0002)
熊本の市の霊園にある実家の墓をしまうため、父と妹と熊本へ向かった当事者(個人ブログ・アメブロ)
お墓の解体工事は
どこの石材店にお願いするか
については
熊本についてから調べて
決めようという事になりました
出典: 墓じまい①(アメブロ)(台帳: V0034)
市営霊園にあった家族の墓をしまい、祖父母の代から知る住職の寺で永代供養にした姉妹の一人(個人ブログ)
30年後には合祀(遺骨を骨壺から取り出し、複数まとめて一緒に埋葬する)になります。
その時まで私達姉妹が生きているかどうか分かりません。
お寺にお任せできた事で1つの不安が解消されました。
出典: 墓じまい:費用とやり方を解説!私たちの選んだ永代供養の詳細(Rinのシンプルライフ)(台帳: V0013)
