まず結論から
- 寺院や霊園にある墓なら、墓じまいした後の土地は手元に残りません。墓石と基礎を撤去して更地にし、墓地に返します。札幌市と北九州市の市営霊園も、そう定めています。
- 墓地の多くは、土地を持つのではなく使う権利を得たものです。横浜市の2022年の調査では、墓を持つか使える市民1,119人のうち、個人の所有地にある墓地は4.2%でした。
- 払った土地代(永代使用料)は、東京都と横浜市の条例では返さないのが原則です。都立霊園・仙台市・北九州市は、許可から3年以内に返すと半額が戻ります。磐田市は期間に関係なく50%です。
- 松戸市や高知市の市営の墓地では、更地にする工事の費用は使う人が払います。工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も勧めています。
- 自分の土地にある墓は、しまったあとも土地が残ります。雲南市の案内では、墓地の廃止の許可を受けて更地にし、登記された土地の用途(地目)を墓地以外に変えると廃止が終わります。
墓じまいした後の土地は、どうなるのか
「墓を買う」とよく言いますが、東京都消費生活総合センターは、実際には永代使用料を払って、墓となる土地を使う権利を得ることだと説明しています。所有するわけではないので、売ることも貸すことも、墓地以外に使うこともできません。
墓じまいで手放すのは、この使う権利です。返された区画を、霊園の側から見ていた人の記録があります。
青森の霊園で、夫婦から区画の返還を受け付け、工事に立ち会った霊園で働く書き手(個人ブログ・note)
20年間、一度も遅れることなく管理料を納めてくださったこと。
毎年、お彼岸に足を運んでくださったこと。
いつも笑顔で挨拶してくださったこと。
その感謝を込めて、工事が終わるまで立ち会った。
やがて墓石がなくなり、きれいに整地された。
そこにはもう、 20年間ここにお墓があったことを示すものは何もない。
20年前、50代半ばの夫婦が自分たちのために求めた区画で、納骨は一度もありませんでした。東京で暮らす息子に負担をかけたくないと、元気なうちに返すことを選んでいます。磐田市の市営霊園は、返された区画の使用者を随時募集しています。
出典: 一度も使われなかったお墓を、今日、解体した。(note)(台帳: V0049)
返された区画は、次の使用者に回ることがあります。磐田市は、駒場霊園を除く市営霊園で、返還のあった区画の使用者を随時募集しています。以前は年に1度の抽選でしたが、返還があり次第すぐに募集し、申請は先着順にしました。
前橋市の市営墓地3か所(計13,266区画)では、2005〜2015年度の11年間に、年平均24.1区画が返されていました。
ただ、どの墓も同じではありません。土地が誰のものかで、墓じまいのあとが分かれます。
| 墓のある場所 | 使う人が持つもの | 墓じまいのあと |
|---|---|---|
| 寺院の墓地、自治体の霊園、業者が運営する霊園 | 土地を使う権利(使用権)です。曹洞宗は、土地は個人の所有地ではないと答えています。 | 更地にして返します。返された区画の使用者を募集する墓地もあります。 |
| 家の敷地や、地区にある古くからの墓地 | 土地そのものです。長野市は個人墓地を、個人がその敷地内に所有する墓地と説明しています。共同墓地は扱いが異なることがあります。 | 土地が残ります。墓地の廃止の許可と、地目の変更が続きます。 |
返さずに置いておくとどうなるかは、墓じまいをしないとどうなるかの記事にまとめました。
払った永代使用料(土地代)は戻るのか
墓を求めたときに払う永代使用料は、墓となる土地を使う権利を得るためのお金です。墓じまいで区画を返すとき、このお金は戻るのか。家族の墓地を返すことにした人の記録から見ていきます。
義父が買っていた墓地を返し、義父母を樹木葬の墓に納めることにした当事者(個人ブログ・アメブロ)
義父がお墓を購入したころ、自分の墓を生前に求めるのはごく自然なことでした。
そうしてやっと一人前といった部分もありました。
お墓はみんなが持つもので、核家族となっても一家に一つあることが当然だったのですね。
義父が生前に買った墓地を、諸経費をかけて返すことにした人の記録です。義父母の遺骨は、お盆に契約した樹木葬の墓に納めます。東京都の霊園条例は、すでに納めた使用料を原則として返さないと定めています。
出典: お盆にお墓の契約です(アメブロ)(台帳: V0087)
東京都の霊園条例は、すでに納めた使用料と管理料を「還付しない」と定めています。ただし、知事が相当の理由があると認めるときは、全部か一部を還付できます。横浜市の条例も返還しないとし、規則で定める場合は全部か一部を返還できるとしています。東京都消費生活総合センターも、墓地を返しても、払った永代使用料は戻らないのが普通といわれていると答えています。
一方で、戻る場合と額を決めている公営の墓地もあります。戻るかどうかと額は、墓地ごとの定めで決まります。
| 墓地 | 使用料が戻る場合と額 |
|---|---|
| 都立霊園 | 許可から3年以内に届け出て、元の状態に戻すと、使用料の半額。 |
| 仙台市の市営墓地 | 許可から3年以内の返還で、永代使用料の半額。管理料は返した月の分まで払い、年度分を払い済みなら月割りで戻ります。 |
| 北九州市の市立霊園 | 許可から3年以内の返還で、使用料の半額。 |
| 松戸市営白井聖地公園 | 許可から1か月以内は全額、1年以内は半額、1年を超えると戻りません。1か月を超えて返すと、管理料は翌年度以降の前納分が戻ります。 |
| 市川市霊園 | 許可から3年以内に未使用(更地)で返すと2分の1、それ以外は4分の1。 |
| 磐田市の市営霊園 | 使用期間に関係なく、使用料の50%。 |
| 岐阜市の市営墓地 | 返還の際、墓地使用料の3分の1を返還金として受け取れます。 |
仙台市の手続きは仙台市の墓じまい補助金の記事に、市川市の原状回復の助成は墓じまい補助金の記事にまとめました。
更地にする工事の費用を、使う人の負担と定める市があります。松戸市は市営白井聖地公園の冊子に、墓地を元の状態に戻す費用は使用者の負担と書いています。高知市も、市有墓地の撤去工事の費用は名義人の負担としています。仙台市は市営墓地について、自費で更地に戻し、墓園管理事務所の証明を受けてから返すよう案内しています。
北九州市は、コンクリートの基礎まで撤去し、使う前と同じ更地にして返すよう求めています。土の中に骨壺が埋まったままの例が散見されるとして、十分に掘り返すよう注意しています。
日本石材産業協会が2023年度に会員の石材店に聞いた調査では、見積もりの単位(積算の仕方)は店によって違いました。撤去の範囲など項目をそろえて、複数の石材店から見積もりを取り、額と内訳を比べます。北九州市も、市が指定した業者は無いとして、複数の業者から見積りを取るよう勧めています。
その墓の土地は誰のものか。自分の土地なら、しまったあとどうなるのか
自分の墓が、借りている区画なのか、自分の土地なのか。はっきりしない家もあります。父が買った墓の土地の持ち主を、書類から探した人の記録です。
父が分譲で買った墓を、管理する寺が廃寺と分かってからしまった一人息子の当事者(個人ブログ・note)
実は、墓はその廃寺の土地ではない。
地主が別にいるはずで、古い書類をひっくり返して、地主のところに電話をした。
廃寺の連絡先なり所在を聞いてみようとした。
あくまでも交渉だ。
父が30年前に分譲で買った小さな霊園の墓で、管理する寺は別の県にありました。最後は自治体に事情を説明し、遺骨を移す許可(改葬許可証)を受けています。墓地の土地の持ち主は、個人・寺院・公益法人・株式会社・集落などに分かれます。
出典: 実家じまい(三) 墓(note)(台帳: V0127)
どちらか分からないときの手がかりは、改葬の申請書にもあります。雲南市の記入例では、「墓地等の管理者」の証明は、今の墓地が申請者の所有地なら申請者本人がします。宗教法人の墓地や他人名義の土地にある墓地なら、貸主の住所・氏名・印が要ります。
八王子市は、自宅の墓地からの改葬は、その墓地が経営の許可を受けていることが前提だとしています。許可を受けているか分からないときは、先に保健所へ問い合わせるよう案内しています。
自分の土地の墓をしまっても、土地は残ります。墓地をやめるには、法律で許可が要ります。長野市は、個人墓地の廃止には、遺骨の改葬許可と墓地の廃止許可の2つが要るとしています。廃止許可とは、すべての区画の遺骨を移し、墓石などを撤去して、墓地としての土地の使用をやめることです。申請には、ほかの利用者全員の同意書も付けます。
雲南市の2018年度版の案内では、改葬許可と廃止許可を同時に申請します。遺骨を移し、廃止の許可を受けてから墓石を撤去して更地にします。最後に地目を墓地以外に変えると、墓地の廃止が終わります。地目の変更の登記は、変わった日から1か月以内に申請します。申請するのは、土地の持ち主として登記されている人です。
税の扱いも、墓地かどうかで違います。雲南市は、墓地として登記された土地は、固定資産税や相続税などが非課税になると説明しています。借りている区画については、高知市が、土地の購入ではなく利用権の貸付なので固定資産税等はかからないと答えています。地目を変えたあとの扱いは、確かめた案内には書かれていませんでした。国税庁は、固定資産税についての質問は、市区町村や担当区域の都税事務所などに問い合わせるよう案内しています。地目を変える前に確かめておきます。
長野市の家の墓地の手続きは長野市の墓じまいの記事に、家や集落の墓地をしまう手順は島根県の墓じまいの記事にまとめました。
まとめ
寺院や霊園にある墓なら、墓じまいした後の土地は手元に残らず、更地にして墓地に返します。返された区画の使用者を募集する墓地もあります。払った永代使用料が戻るかどうかと額は、墓地ごとの定めで決まります。
工事の費用は、松戸市や高知市のように使う人の負担と定める墓地があります。複数の石材店の見積もりを比べてから決めます。自分の土地にある墓は、廃止の許可を受けて更地にし、地目を変えるまでが墓じまいです。取り出した遺骨の行き先は墓じまいの遺骨の行き先の記事に、終えたあとにどこで手を合わせるかは墓じまいとはの記事にまとめました。
墓を更地にした3人の口コミ
最後に、墓を更地にするところまで終えた3人の記録から、一節ずつ紹介します。
寺に墓じまいを願い出て、2014年に実家の墓をしまい、散骨した当事者(個人ブログ・note)
まだ墓じまいが一般的でなく大変だったが 「閉眼供養をする」 「 更地に戻すこと」 の2点でOKとなった。
出典: 汚実家片付け番外編 『墓じまい〜散骨』② 具体的な流れ(note)(台帳: V0003)
檀家だった寺にある実家の墓をしまい、住む街の公営の墓地公園へ移した当事者(個人ブログ・note)
墓からお骨を取り出し、墓石を撤去し、最後は更地にする。
作業が終わると、更地になった墓地の写真が送られてきた。
14代続いた墓が、そこにはもうなかった。
少し寂しさはあった。
出典: 墓じまいで一番心配だったこと(note)(台帳: V0022)
本家の一人娘として実家の墓をしまい、菩提寺の永代供養塔に納めた当事者(個人ブログ・アメブロ)
しばらくして、石屋さんが、更地になり整地された墓所の写真を送ってくださいました。
一緒に確認書が送られてきて、サインをし返送。
出典: 全て完了しましたー墓じまいー(アメブロ)(台帳: V0118)
