まず結論から
- 墓じまいの役所の手続きは、真言宗の家でも同じです。遺骨をほかの墓へ移す許可(改葬許可)は、遺骨がいまある市町村の長が出します。
- 費用は、宗派を分けない調査で見ます。鎌倉新書が2026年1月に同社サイト「いいお墓」の利用者に聞いた調査では、墓じまいをした・している人の費用は「31万円~70万円」が31.3%で最多でした。
- 離檀料(檀家をやめるときの寺へのお礼)に明確な基準はないと、国民生活センターは助言しています。お布施の額は布施をする側が決めると、花園大学の佐々木閑さんは書いています。
- 高野山真言宗の総本山金剛峯寺の公式Q&Aは、位牌や仏像から霊を抜くこと(お性根抜き)を「撥遣(はっけん)供養」として案内しています。墓石の閉眼(墓から霊を抜く法要)の項目はないので、菩提寺(付き合いのある寺)と話し合います。
- 撤去工事は、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。
真言宗だと、お布施や離檀料に決まった額はあるのか
墓じまいを前に、まず気になるのは何にいくら払うかです。全日本仏教会と大和証券が2024年12月に、全国の20〜79歳6,192人に聞いた調査があります。葬儀や法要で「お布施の金額が分からない」にあてはまる人は62.9%でした。
では、寺の側は額をどう考えているのか。真言宗豊山派の寺の住職が、取材に答えた言葉です。
真言宗豊山派の寺の住職(週刊SPA!編集部の取材記事・日刊SPA!。墓じまいをした人ではなく、寺の側のコメント)
離檀料は決まった料金があるわけではありません。多いのは、それまで溜まっていたものが一度に出てくるケース。未納の護持会費や、やってこなかった法事、檀家なのに別のお寺で出した葬式。それを全部足した数字が請求として出るわけです。
取材は、北関東の代々の墓をしまおうとして、寺から離檀料1000万円を告げられた男性の件を尋ねたものです。男性は弁護士に相談したうえで、墓じまいを諦めました。離檀料に明確な基準はないと、国民生活センターも助言しています。
出典: 墓じまいを切り出したら「離檀料1000万円」、別の寺では「祟られる」と150万円要求、遺骨を“人質”に…急増する泥沼トラブル(日刊SPA!)(台帳: V0019)
お布施の額について、花園大学の佐々木閑さんは、どの僧侶にいくら布施するかは、布施をする側が決めることだと書いています。墓じまいで払うお金は、費目ごとに額を決める相手が違います。
| お金・手続き | 払う相手・出す先 | 額や中身を決めるもの |
|---|---|---|
| 墓石の撤去工事 | 石材店 | 見積もりの単位(積算の仕方)が店によって違う。業者の記事 |
| 遺骨を出す前の法要のお布施 | 菩提寺 | 布施をする側が決める。お布施の記事 |
| 離檀料 | 菩提寺 | 明確な基準はない。納得できなければ寺と話し合う |
| 改葬許可の申請 | 遺骨がいまある市区町村 | 手続きは法律と省令で決まっている。書類の記事 |
| 移し先の費用 | 移し先の墓地の管理者 | パンフレットだけでなく、使用規則や料金表を見る。永代供養の記事 |
総額の目安は、鎌倉新書が2026年1月に行った調査で見ます。対象は、同社のサイト「いいお墓」で資料請求や霊園見学をし、墓じまいを検討・実施した人です。実際にした・している人の費用は「31万円~70万円」が31.3%で、最も多くなりました。内訳は費用の記事で、お布施の額の調査はお布施の記事で確かめられます。
閉眼の法要は、真言宗では何と呼び、誰に頼むのか
遺骨を出す前には、墓から霊を抜く法要(閉眼供養)を頼むことがあります。墓を移すときは霊を抜く儀礼をし、その呼び名は宗派によっていろいろだと、佐々木閑さんは書いています。菩提寺の住職が、雨の中で読経した墓じまいの記録です。
母方の山上の墓を、直系の近親者3人と菩提寺の住職、墓守を兼ねた石屋さんの5人でしまった人(個人ブログ・note。宗派名の書かれていない記録)
お寺さんは法衣の色がすっかり変わるほど雨に濡れながら、何一つ動じることもなく、雨を切り裂くかのように高らかにお経を上げ続けていた。 15分くらいでようやくお経が終わり、妙鉢(黄銅製のシンバルのようなもの)を擦り合わせて浄化し、ご先祖さまの骨壺はお寺さんの車に乗って菩提寺に戻っていった。
男子が絶え、墓が無縁になることを案じた母方の家の墓でした。寺に戻ると、住職は遺骨を預かって永代供養すると告げています。高野山真言宗の総本山金剛峯寺は、位牌や仏像のお性根抜きを「撥遣供養」として案内しています。
出典: 墓じまいと怪異(note)(台帳: V0054)
撥遣は、浄土宗の辞典にも見出し語があります。新纂浄土宗大辞典は撥遣式を、仏像や位牌などを修復したり、浄焚(お焚き上げ)したりするときの儀式と説明しています。仏像や石塔、位牌などの「お性根を抜く」ともいうと書いています。
ただ、金剛峯寺の公式Q&Aに、墓じまいや改葬、墓石の閉眼の項目はありません。全日本仏教会は改葬について、まずは日頃からの菩提寺との話し合いが一番大切だと答えています。遺骨を出す前の法要の日と中身は、菩提寺の住職と話して決めます。寺の墓地の墓をしまうときに頼むことは、寺の墓の墓じまいの記事で整理しています。
家の宗派の名前を確かめておくことも要ります。全日本仏教会は、問い合わせの中で「真宗系」に「真言宗」が入っていると思っていた人の例を挙げています。そのうえで、加盟宗派の一覧で確かめるよう呼びかけています。
真言宗と浄土真宗では、法要の言葉も違います。浄土真宗本願寺派の公式FAQは、墓が完成したときの法要を建碑式と呼び、お性根入れとは呼ばないと書いています。全日本仏教会と大和証券の調査では、「自分の家系の宗派などが分からない」にあてはまる人も37.3%いました。お布施の包み方は、5宗派の公式を比べた表書きの記事にまとめています。
墓じまいのあと、宗派の違う先へ移してよいのか
真言宗の家でも、移し先が真言宗の寺とは限りません。墓を移すとき、場所を移すことに宗教的な縛りはないはずだと、佐々木閑さんは書いています。家の宗教が変わり、墓の形を変えた家の記録です。
元は真言宗で、毎年高野山に参っていた家の娘(個人ブログ・note)。父の改宗のあと、実家の墓をキリスト教の墓に変えた家で、墓じまいはしていない
それまでは真言宗で、毎年高野山に参り、お坊さんが月参りに来るような家だった。 父の遺志を継ぎ、葬儀はキリスト教式に。 お寺と牧師さんの双方に相談し、母の決断で仏教のお墓をキリスト教のお墓へと変えた。
父の改宗は30年前、亡くなる直前でした。のちに墓じまいを持ちかけられましたが、墓はいまも息子夫婦が手入れしています。お墓を移した・移したい700人に理由を聞いた全日本仏教会と大和証券の2024年12月の調査では、「宗派を変えたため(変えたいため)」は2.6%でした。
出典: お盆に、受け継ぐもの(note)(台帳: V0055)
移し先が寺の墓地なら、宗派が条件になることがあります。福岡県立図書館のレファレンス事例が、法律実務の本の答えを紹介しています。寺の墓地を使う権利を得るときは、その寺の檀家(寺を支える家)になることを求められることが多いとしています。
1960年の厚生省環境衛生部長の通知は、墓地の管理者は埋葬そのものを一般に拒んではならない、という法律の定めを解釈しています。儀式(典礼)の方式まで、依頼する側の求めに応じる定めではないとしています。宗派の違う寺の墓地へ移すなら、檀家になるか、納骨の儀式をどうするかを先に寺に尋ねます。宗派を問わない移し先もあります。
| 移し先 | 宗派について確かめたこと |
|---|---|
| 今の菩提寺(墓を残す) | 墓を残したいが世話をする人がいないなら、管理費を納めて檀那寺(菩提寺)に管理を頼む方法がある |
| 宗派の違う寺の墓地 | 檀家になることを求められることが多い。昔からの寺の墓地なら、住職の行う儀式に従って納骨するとする本もある |
| 公営の墓地 | 名古屋市みどりが丘公園は、宗旨・宗派は問わず購入できるとしている。川口市安行霊園も、宗旨・宗派による違いはないとしている |
| 高野山の奥之院 | 金剛峯寺は、宗旨や宗派を問わないと答えている。預かるのは喉仏で、全骨は預からない |
金剛峯寺は、読経供養と灯明供養を最長1年まで受け、永代供養は受け付けていません。永代供養を望むなら、最寄りの寺院か高野山内の各寺院に、費用を含めて相談するよう案内しています。喉仏のほかの遺骨の行き先は、遺骨の行き先の記事と永代供養の記事で比べられます。
真言宗の家の墓じまいは、どの順番で進めるのか
見積もりの単位(積算の仕方)は、石材店によって違います。最初に複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて額と内訳を比べます。北九州市も、市立霊園の工事で複数の業者からの見積りを勧めています。
移し先は、墓じまいに臨む前になるべく多くの親族と相談して決めるよう、全日本墓園協会の横田睦さんは勧めています。申請書には改葬の場所を書くので、移し先を先に決めます。申請書には、墓地の管理者が作る、遺骨が納まっていることの証明を付けます。寺の墓地なら、証明を出すのは寺です。
寺から証明が出ないこともあると、横田睦さんは書いています。その場合は市町村長が認める書面で代えられ、何が認められるかは市町村で違うので、窓口に前もって相談します。墓地の管理者は、改葬許可証を受け取ったあとでなければ、遺骨を納めさせてはならないとされています。
役所の手続きが宗派で変わらないことは、天台宗の墓じまいの記事と創価学会の墓じまいの記事でも整理しています。業者に頼める範囲は業者の記事で、お寺への手紙の例文は挨拶状の記事で確かめられます。
まとめ
真言宗の家でも、遺骨を移す許可を役所で取る手続きは同じです。費用は宗派を分けない調査で「31万円~70万円」が最多で、離檀料に明確な基準はありません。金剛峯寺の公式Q&Aは、位牌や仏像のお性根抜きを撥遣供養として案内しています。墓石の閉眼の項目はないので、法要は菩提寺の住職と話して決めます。宗派の違う寺の墓地へ移すなら、檀家になるかを先に尋ねます。撤去は、複数の石材店の見積もりを比べてから頼みます。墓じまい全体の流れは、墓じまいとは何かをまとめた記事で確かめられます。
