まず結論から
- 墓じまいの役所の手続きは、天台宗の家でも同じです。遺骨をほかの墓へ移す許可(改葬許可)は、遺骨がいまある市町村の長が出します。
- 申請書には、墓地の管理者が作る、遺骨が納まっていることの証明を付けます。寺の墓地なら、証明を出すのは寺です。
- 天台宗の公式サイトのQ&Aに、墓じまいや改葬の項目はありません。お礼の包み方は一般例を示し、迷ったら菩提寺(付き合いのある寺)の住職に尋ねるよう書いています。
- 天台宗の寺にも、継ぐ人のいない檀家(寺を支える家)のための永代供養墓を計画した例があります。東京都世田谷区の天台宗の寺は、2017年度に建てる計画を立てました。
- 撤去工事は、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。
天台宗の家だと、墓じまいの何が変わるのか
墓じまいは、墓を片付けて墓地の管理者に返すことです。遺骨をほかへ移すには、市町村長の許可を受けなければならないと法律が定めています。申請書に書くことと付ける書類は、省令が決めています。
この手続きは法律と省令で決まっていて、宗派で変わるものではありません。宗教の違う家の例は、創価学会の墓じまいの記事でも整理しています。お墓のある寺へ、先のことを相談しに行った人の記録です。
父が自分で買った、父と母だけの墓のことで、寺へ相談に行った子(個人ブログ・アメブロ。宗派の書かれていない記録)
なんせお寺さんと私たちの住居地は、いくつかの県をまたいでいますので、
その時が来た時に、
どうしたらよいか、
お金の準備はいくらくらいなのか、
とにかく心配なことは、不謹慎とは考えず、正直に全部お聞きしました。
寺からは、母の納骨のあと三回忌や七回忌などの区切りで、永代供養の場所へ移す提案を受けました。墓を移すときは霊を抜く儀礼をし、その呼び名は宗派によっていろいろだと、花園大学の佐々木閑さんは書いています。
出典: 檀家さんへ相談(アメブロ)(台帳: V0105)
では、天台宗は墓じまいについて何と言っているのか。天台宗の公式サイトのQ&A(よくある質問)には、お経・檀家・お墓参り・お盆・戒名などの問いが並びます。墓じまいや改葬、霊を抜く法要の項目はありません。Q&Aにあることと無いことを表にしました。
| 知りたいこと | 天台宗の公式Q&A | どこで確かめるか |
|---|---|---|
| 墓じまい・改葬の手順 | 項目はない | 法律と省令で決まる。書類の記事 |
| 遺骨を出す前に霊を抜く法要(閉眼供養) | 項目はない | 呼び名は宗派によっていろいろ。菩提寺の住職に尋ねる |
| 僧侶へのお礼の包み方 | 市販の祝儀袋を使う。法事や年回(年忌法要)に来た僧侶への御礼は赤い水引。あくまで一般例 | 迷ったら菩提寺の住職に尋ねる。表書きの記事 |
| 墓の方位・墓相(向きや形の吉凶) | 方位を特に気にする必要はないと思う | 不幸・祟りの記事 |
| 仏壇 | 本尊は菩提寺に相談し、開眼法要(仏壇を祀り始めるときの法要)は菩提寺に頼む | 菩提寺の住職に尋ねる |
| 合祀墓(ほかの人と一緒に納める墓) | 自分の意志で他人と一緒に納骨されるお墓。納骨堂とともに注目を浴びている | この記事の3つ目の節 |
Q&Aは仏壇について、祀る本尊は菩提寺に相談し、開眼法要は菩提寺に頼むよう書いています。霊を抜く法要の日取りや中身も、Q&Aに無い以上、菩提寺の住職に確かめることになります。遺骨を出す前の法要の考え方は、不幸・祟りの記事でも紹介しています。
菩提寺の住職に、法要とお礼をどう尋ねるか
菩提寺は、葬儀や法事を頼むなど、付き合いのある寺のことです。天台宗の公式Q&Aは、檀家を「帰依する寺院(菩提寺)を護持する家」と説明しています。江戸時代の寺請制度で寺に属した世帯を、やがて「檀家」と呼ぶようになったとも書いています。墓じまいでは、その寺にお金のことも尋ねることになります。寺に相談した場で、額を聞けなかった人の記録です。
義実家の墓じまいを、寺に相談しに行った人(個人ブログ・note。まだ実施していない。宗派の書かれていない記録)
「お気持ちで」と言われたぶんを足していくと、どうやら100万円を超えるらしい。
「お気持ち」がいくらなのか、勇気を出して聞いてみた。けれど、はっきりとした答えは返ってこなかった。
「みなさん、それぞれですから」
そう微笑まれるのが、一番怖い。
納骨せずに墓じまいにしたいと相談すると、寺は、一度納骨して戒名を付けてから墓じまいをする順番を示しました。どの僧侶に布施するか、金額をいくらにするかは、すべて布施をする側に選択権があると、佐々木閑さんは書いています。
出典: お坊さんは、私を見なかった|義実家の墓じまいで言われたこと(note)(台帳: V0004)
住職と話す機会は、もともと限られています。全日本仏教会と大和証券が2022年12月に、菩提寺がある3,288人(ウエイトバック後)に複数回答で聞いた調査があります。住職と会話をする機会は「葬儀・法要」が53.1%で、「会話をする機会はない」も36.3%でした。
天台宗の公式Q&Aは、法要を「お寺さんにお経をあげてもらうこと」、法事を「法要と後の食事を含めたもの」と区別しています。お礼の包み方については、市販の祝儀袋を使い、法事や年回に来た僧侶への御礼は赤い水引にすると答えています。Q&Aはこれを一般例とし、地域によって習慣は変わると書いています。墓じまいの法要がどの場面に当たるかは、Q&Aにありません。包み方に迷ったら、菩提寺の住職に尋ねます。
お布施や離檀料(檀家をやめるときに寺へ払うお礼)の額で迷うこともあります。国民生活センターは、離檀料に明確な基準はなく、納得できなければ基本的に寺などと話し合うことになると助言しています。家族や親族を交えて、よく話し合うことも勧めています。額の調査はお布施の記事に、寺への手紙の例文は挨拶状の記事にまとめています。
墓じまいのあとも、天台宗の寺で供養を続けられるか
墓をしまったあと、遺骨を寺の永代供養墓へ移す道があります。永代供養墓は、継ぐ人がいなくても、寺や墓地の管理者が供養を続ける墓です。檀家になっている寺の合祀墓へ移すと決めた人の記録です。
熊本の市の霊園にある実家の墓をしまうため、父と妹と熊本へ向かった人(個人ブログ・アメブロ。宗派の書かれていない記録)
両親と話をして
祖父と祖母を一つの骨壷に
他のご先祖様を1〜2つの骨壷に
合わせて
2つか3つの骨壷を
檀家になっているお寺の永代供養の合祀墓に
納骨させていただくことに決めました
墓は寺ではなく市の霊園にあり、住職からは、古い遺骨を少しずつ取って一つの骨壷にまとめる形を提案されていました。継ぐ人のいない檀家のために、寺が永代供養墓を建てた例を調べた論文があります。
出典: 墓じまい①(アメブロ)(台帳: V0034)
辻井敦大さんの2018年の論文は、東京都区部と兵庫県新温泉町の6つの寺の住職に聞き取りをしています。そのうち東京都世田谷区の天台宗の寺(檀家約230世帯)は、2010年代に、墓地を買った80代の夫婦から、墓を継ぐ人がいないと相談を受けました。
寺は、墓を改葬して区画を元に戻し、遺骨を33回忌まで供養する必要があったといいます。そこで2017年度に永代供養墓を建てる計画を立て、使うのは檀家に限り、広告もしない考えでした。天台宗の公式Q&Aも、三十三回忌で「弔い上げ」(年忌法要の締めくくり)とする型が鎌倉時代の頃に整ったと説明しています。
墓を残したまま、寺に頼む道もあります。佐々木閑さんは、墓を残したいが世話をする人がいない場合、管理費を納めて檀那寺(菩提寺)に管理を頼む方法を挙げています。墓じまいをして位牌を家に置き、継ぐ人がいなければ位牌そのものを寺に納める方法もあるとしています。
菩提寺がある人も、移し先の希望は一つではありません。全日本仏教会と大和証券の2024年12月の調査で、将来お墓を移したい人のうち、菩提寺がある398人(ウエイトバック後)の答えです。寺院にある永代供養墓は12.5%、寺院にある墓地は10.8%、公営・民営の墓地は13.0%でした。
2008年の参議院の調査資料は、比叡山延暦寺が1985年に、宗派を問わず継ぐ人の要らない「久遠墓地」を売り出したことを紹介しています。同じ資料は、永代供養には法的な基準がなく、供養の期間は墓地の経営主体によって違うと書いています。契約の前に、供養の期間と管理費を確かめます。移し先の選び方は、永代供養の記事と遺骨の行き先の記事で比べられます。
天台宗の家の墓じまいは、どの順番で、いくらかかるのか
見積もりの単位(積算の仕方)は、石材店によって違います。最初に複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて額と内訳を比べます。北九州市も、市立霊園の工事で複数の業者からの見積りを勧めています。
役所の手続きの順番は、法律と省令で決まっています。申請書には改葬の場所を書くので、移し先を先に決めます。墓地の管理者は、改葬許可証を受け取ったあとでなければ、遺骨を納めさせてはならないとされています。
費用の目安は、宗派を分けずに聞いた調査で見ます。鎌倉新書が2026年1月に、同社のサイト「いいお墓」の利用者に聞いた調査があります。実際に墓じまいをした・している人の費用は、「31万円~70万円」が31.3%で最も多くなりました。内訳は費用の記事で、業者に頼める範囲は業者の記事で整理しています。
まとめ
天台宗の家でも、遺骨を移す許可を役所で取る手続きは同じです。天台宗の公式Q&Aに墓じまいの項目は無く、お礼の包み方に迷ったら菩提寺の住職に尋ねるよう書いています。天台宗の寺にも、継ぐ人のいない檀家のために永代供養墓を建てる計画を立てた例があります。撤去は、複数の石材店の見積もりを比べてから頼みます。墓じまい全体の流れは、墓じまいとは何かをまとめた記事で確かめられます。
