まず結論から
- 墓じまいの法要で住職に渡す包みの表書きは、「御布施」です。曹洞宗・真宗大谷派・浄土真宗本願寺派・天台宗の公式が、僧侶へのお礼の包みの語として挙げています。
- 全日本墓園協会の横田睦氏は、墓石を撤去する前に営む、墓から魂を抜く法要(いわゆる抜魂式)を、法事の一つとして書いています。
- 袋と水引(袋に掛ける色のついた紙糸)は、宗派の公式で答えが分かれます。天台宗は市販の祝儀袋、浄土宗は黒白などの結び切りの不祝儀袋を挙げています。
- 新札の扱いも分かれます。築地本願寺は、新札を包んではいけないという宗教上の決まりは一切ないとしています。浄土宗は、新札以外が無難としています。
- 迷ったら、菩提寺(先祖の墓があるお寺)の住職に尋ねましょう。曹洞宗の公式は、仏事のしきたりは全国で統一できないとして、菩提寺に尋ねるよう求めています。
表書きは「御布施」でいいのか。包みが2つあるときは
墓じまいで墓石を撤去する前には、いわゆる「抜魂式」を行います。全日本墓園協会の横田睦氏が、国民生活センターの『国民生活』でそう書いています。横田氏は、これを法事の一つとして扱っています。
このとき住職に渡す包みが、2つになることもあります。次の人は、菩提寺の住職から包みを2つ示されました。
母に署名捺印してもらった書類を持ち、夫と菩提寺を訪ねて離檀(檀家をやめること)を申し出た当事者(個人ブログ・note)
主人はよく分からなかったみたで、何か言いたそうだったけれど、
私はすぐ理解して、「お包みの肩書は お布施と志納金 で宜しいでしょうか?」 と言った。
すると、 「それがいいですね。」
と言われた。
そーだよね、お布施が2つじゃ どっちがどっちか分からなくなっちゃう。
住職はその直前に、お骨上げの日に営む閉眼供養(墓から魂を抜く法要)のお布施と、長年寺の土地を使わせてもらった感謝の志納金を示していました。曹洞宗も、離檀にあたり感謝の気持ちとして布施を納める場合があるとしています。
出典: 菩提寺でついに「離檀」。墓じまいの費用と本音、全部書く(note)(台帳: V0067)
では、僧侶に渡す包みの表書きは、宗派の公式でどう書かれているのか。並べると次のとおりです。4つの宗派が、そろって「御布施」を挙げています。
| 宗派の公式 | 僧侶に渡す包みの表書き | あわせて書いてあること |
|---|---|---|
| 曹洞宗 | 「御布施」。葬儀や法事などで、お寺や僧侶へのお礼の金包みに使います。「御法礼」も同じように使います。 | 「志」は、通夜や葬儀の世話役などへのお礼に使う語です。 |
| 真宗大谷派 | 「御布施」「御法礼」が望ましいとしています。 | 御布施は、読経料のような仏事の対価ではないと説明しています。 |
| 浄土真宗本願寺派 | 施主(法要を営む人)が僧侶に差し出す金封には、「御布施」と書かれることが多いとしています。 | 「御礼」「御経料」「回向料」は、趣旨から言ってふさわしくないとしています。 |
| 天台宗 | 法事や年回(年忌法要)に来た僧侶への御礼に、「御布施」「御礼」を挙げています。 | 水引の上段にその意味を、下段に自分の名前を書くとしています。 |
包みを目的で分ける例は、天台宗の一覧にもあります。同じ葬儀でも、僧侶への御礼・寺への御礼・戒名の御礼で、表書きの例を分けています。どの場面の例にも「御布施」が入っています。
「御礼」の扱いは、天台宗と本願寺派で分かれます。本願寺派のいう趣旨とは、御布施はお寺の御本尊の阿弥陀さまに供えるもの、ということです。
真宗大谷派と浄土宗は、お布施は読経の対価や報酬ではないと説明しています。浄土宗は、「布施行」という仏道の修行に由来するとしています。
法要に呼ばれた親戚が施主に渡す包みは、別の表書きです。曹洞宗の一覧では、法事で故人の仏前に供える金品は「御仏前」です。
御布施のほかにも包むのか。何を用意すればいいのか
法要の日に住職へ渡すものは、御布施だけとは限りません。何を用意すればよかったのか、終わってから気づくこともあります。
両親の墓をしまい、遺骨を寺の合同墓へ移した当事者(個人ブログ・アメブロ)
そいうえば、父の葬儀や法事では
「お車代」も包んでいたように思うけれど…バイクでやってこられた
ご住職に包むべきだったか…終わってから気づく…
それこそ「お気持ち」か…
先祖代々の檀家を外れていたため、母の葬儀を頼んだ寺に閉眼供養をお願いした人です。お布施の額は、前もって寺に尋ねていました。全日本仏教会などの調査でも、回答者の6割近くが、葬儀や法要に何が必要か分からないと答えています。
出典: 親が亡くなってからも大変!墓じまいにかかる費用-お金⑭(アメブロ)(台帳: V0015)
この人が額を寺に尋ねた場面は、墓じまい費用の記事の「お寺に包むお金」の節で紹介しています。
全日本仏教会と大和証券は2024年12月、全国の20〜79歳(ウェイトバック後6,192人)に、葬儀や法要で不安なことを項目ごとに尋ねました。「葬儀や法要に何が必要か分からない」にあてはまる人は、57.9%でした。
「お布施の金額が分からない」は62.9%、「どこに相談して良いか分からない」は51.7%です。
菩提寺がある60代以上に絞っても、「葬儀や法要に何が必要か分からない」は41.3%です。
曹洞宗の公式は、法事の営み方について、各地方に慣習があるので事前に菩提寺によく伺っておくとよいとしています。
天台宗も、お礼の包み方の習慣は地域で変わるとして、迷ったときは恥ずかしがらずに菩提寺の住職に尋ねるよう書いています。何を包むかは、法要の前に住職に尋ねておきましょう。
どの袋に入れるか。水引・新札・お札の向きは
袋と水引の答えは、宗派の公式どうしで違います。祝儀袋を挙げる宗派も、不祝儀袋を挙げる宗派もあります。主なところを並べます。
| 宗派の公式(どの包みの話か) | 袋と水引 | 新札・墨 |
|---|---|---|
| 天台宗(法事・年回の僧侶への御礼) | 市販の祝儀袋に赤い水引。葬儀の僧侶への御礼は黒い水引です。 | この回答には書かれていません。 |
| 浄土宗(お布施とお香典) | 不祝儀袋。弔事には黒白や双銀などの、結び切りの水引がふさわしいとしています。 | 新札以外が無難です。薄墨で書くのが良いとする慣習もあります。 |
| 築地本願寺(浄土真宗本願寺派・お布施の金封) | 市販でも手製でもよい。のしはなるべく付いていないもの。水引は無くてもよく、付くなら黒か銀です。 | 新札を包んではいけないという宗教上の決まりは、一切ないとしています。 |
| 真宗大谷派(僧侶へのお礼) | 年忌法要や葬儀のお礼は、黒白か黄白の水引が一般的。真っ白な無地の袋でもかまわないとしています。 | この回答には書かれていません。 |
| 曹洞宗 | 仏事のしきたりは地域や寺でさまざまで、全国では統一できないとしています。 | 菩提寺に直接尋ね、指示を受けるよう求めています。 |
のしについて書いているのは築地本願寺で、なるべく付いていない袋を選ぶとしています。
中包みとお札の入れ方まで書いているのは、浄土宗の公式です。お香典とお布施の包み方をまとめて尋ねる問いに、次のように答えています。
| 項目 | 浄土宗の公式の説明 |
|---|---|
| 中包み | お金は袋に直接包まず、白無地の封筒を中包みにするとより丁寧です。 |
| 中包みに書くこと | 表に金額を、裏に住所と氏名を書きます。 |
| 金額の字 | 旧字体で書くのが一般的です。一は壱、二は弐、三は参、五は伍、十は拾、万は萬です。 |
| お札の向き | 人物が描かれていない面を表にして入れます。 |
| 包み方 | 裏面は、下向きの折り返しが外側になるように包みます。 |
| 渡すとき(香典袋の説明として) | 袱紗(贈り物を包むための四角い布)に包み、渡すときは袱紗を開いて、袋をその上にのせて渡します。 |
家の宗派が分からない人も、少なくありません。先の調査では、「自分の家系の宗派などが分からない」にあてはまる人が37.3%でした。
宗派が分からなくても、表書きは「御布施」で書けます。4つの宗派が、そろって挙げている語です。袋と新札は、法要を頼む寺に確かめましょう。
まとめ
墓じまいの法要で住職に渡す包みの表書きは、「御布施」です。曹洞宗・真宗大谷派・浄土真宗本願寺派・天台宗の公式が、僧侶へのお礼の包みの語として挙げています。
袋・水引・新札の答えは、宗派の公式どうしで分かれます。何を包むかも含めて、法要の前に菩提寺の住職に尋ねておきましょう。費用の全体は、墓じまい費用の相場の記事で確かめられます。
御布施のほかに包んだもの、2人の口コミ
最後に、住職への御布施のほかに包んだもの・包む予定のものを書いた2人の記録から、一節ずつ紹介します。
母が遺したお金で墓をしまい、遺骨を菩提寺の合同墓に納めた当事者(個人ブログ・アメブロ)
お墓まで来ていただいたので御車代が5,000円
お食事を用意していないので御膳料が5,000円
出典: 【墓じまい】かかった費用まとめ(アメブロ)(台帳: V0010)
明治と平成の墓2基をしまうため、閉眼供養のお布施を石材店の見積もりとは別に見込んだ当事者(個人ブログ・note)
これは私が菩提寺へ別途依頼します。2基あるのでお布施として7万ほど、後はお車代とお膳料でそれぞれ5,000円ずつ、合計8万円くらいかなと考えています。
出典: 墓じまいの予算が出ました(見積り段階です)(note)(台帳: V0006)
