まず結論から
- 仏式の墓じまいの法要に呼ばれたら、包みの表書きは「御仏前」です。法事で仏前に供える包みの語です。
- 宗教が分からなければ「御供物料」と書けば、どの宗教でも通用します。浄土真宗では「御霊前」とは書きません。
- 額は、香典の半額ぐらいが目安です。法要を営む側から「特別な心配はしないように」と言われたら、香典の2〜3割にします。
- 工事などの費用を親戚で分けるかは、身内の話し合いで決めます。葬儀や先祖のまつりごとの費用を誰が持つかに、法律の特別な定めはありません。
- 分ける前に、複数の石材店から見積もりを取りましょう。北九州市も、市立霊園の案内で勧めています。
墓じまいの法要に呼ばれた。袋には何と書くのか
墓じまいでは、墓石を撤去する前に、墓から霊を抜く法要(閉眼供養など)を営みます。国民生活センターの月刊誌で、全日本墓園協会の横田睦氏は、これを「抜魂式」といった法事と書いています。
呼び名は宗派でさまざまです。日蓮宗は、墓を移すとき(改葬)は必ず「御霊抜き」の法要を営むとしています。宮崎県小林市の案内は、移す先で魂を入れる法要(開眼供養)にも触れています。
夫を亡くし、義父母の墓をしまった当事者(個人ブログ・アメブロ)
水桶と柄杓がお墓の前に置いてあったし、お花を飾るのもやってくださって、ほとんどやることなし、でした。
まもなく義姉も来て、最後にお坊さんがマイカーで到着。すぐに法要が始まり、すぐに終わりました。
正午から墓前で営んだ閉眼供養の日の記録です。法要のあと、遺骨は改葬先の寺へ運ばれ、翌日に集合墓へ納められる予定でした。法要に招かれるのは、親類のほか、故人とごく親しかった友人・知人です。
出典: 墓じまい。閉眼供養が終わりました。(アメブロ)(台帳: V0095)
「香典」は本来、通夜や葬儀で参列者から喪主に渡す包みの名前です。全日本冠婚葬祭互助協会は、法事の包みは香典と同じように包み、表書きを「御仏前」とするよう案内しています。曹洞宗の公式も、法事で故人の仏前に供える金品に「御仏前」を使うとしています。
日本の葬儀の多くは仏式で行われています。宗派によって書き方が少し変わるので、表にまとめました。
| 法要の宗教・宗派 | 表書きと袋 |
|---|---|
| 仏式の法要 | 「御仏前」。水引(袋に掛けるひも)は銀一色か黒白。 |
| 浄土真宗本願寺派 | 書くなら「御仏前」。「御供」「御香典」「御香資」も使われます。「御霊前」とは書きません。 |
| 真宗大谷派 | 「御香儀」か「御仏前」。金封は黒白か黄白を用意します。 |
| 神式 | 「御玉串料」。 |
| 宗教が分からない | 「御供物料」。 |
市販の袋には、「御霊前」と印刷されたものもあります。曹洞宗の公式は、御霊前を、葬儀のときに故人の霊前に供える金品の語としています。袋の水引は、弔事には黒白や双銀の結び切りがふさわしいと、浄土宗の公式は説明しています。
宗教が分からないときは、「御供物料」と書けば、どの宗教でも通用します。
法要を営む人(施主)が僧侶に渡す「御布施」は、呼ばれた親戚の包みとは別のものです。お寺に包む額は、墓じまい費用の記事の「お寺に包むお金」の節にまとめました。
いくら包むのか。香典と同じ額でいいのか
表書きの次に迷うのが額です。まず、法要を営む側が、1回ぶんの出入りを書き出した記録を見てみます。
母を見送り、東海地方にある実家の墓を守る当事者(個人ブログ・note)
1回あたりの内訳は、次の通りです。
お布施 ご住職へ 3万円
御膳料 ご住職用 0.5万円
お斎 6,000円 × 10人 6万円
香典のお返し 5,000円 × 3家族分 1.5万円
ご香典(いただく分) 1万円 × 3家族分 △3万円
1回あたり合計 8万円
墓じまいではなく、関東に住む本人が、実家の地域で営む年忌法要の実例をもとに書いたものです。全日本冠婚葬祭互助協会は、招かれたら早めに出欠を返すよう勧めています。招く側が引出物や会場を用意するのに、人数の確認が要るためです。
出典: お墓を守るということ ― 30年間でいくらかかる?(note)(台帳: V0073)
全日本冠婚葬祭互助協会は、法事の包みは香典の半額ぐらいが目安だとしています。ただ、茶菓子だけで簡素に営むこともあるので、案内のされ方で目安は変わります。
| 法要を営む側からの案内 | 包む額の目安 |
|---|---|
| ふつうに法事に招かれた | 香典の半額ぐらい。 |
| 「特別な心配はしないように」と言われた | 香典の2〜3割程度。 |
| お金でなく品物を供える | 金額はお金で包むときと同じ。祭壇に飾るので早めに届けます。参会者が多いときは、お金で包むほうが無難です。 |
同協会は、額は法要の規模や食事の有無、土地のしきたりで違うとして、「自分の立場を第一に考えて決めましょう」と書いています。お金と一緒に菓子を持っていく必要も、特にないそうです。
菓子の扱いは、案内によって分かれます。真宗大谷派の案内は、法事には供物や花より、金封と菓子折りを持っていくほうが一般的になっているようだ、としています。菓子折りには、「御仏前」か「御供」と書いた水引を掛けます。
包みには、費用を分け合う面もあります。『月報司法書士』(2015年)で石川美明氏は、葬儀の香典の基本的な性格を「葬儀費用の一部負担」と整理しています。
工事の費用まで、親戚が出すものなのか
包みとは別に、撤去工事や次の納骨先の費用を身内で分けるか、という話もあります。民法が定めているのは、墓を誰が引き継ぐかです。墓は相続財産とは別に、先祖のまつりごとを主宰する人(祭祀承継者)が引き継ぎます。
母方の祖父母の墓を、いとこ9人でしまった当事者(個人ブログ・note)
今回、石屋さん(遺骨の取り出し、墓石の撤去・運搬・処分、墓地の整地など)と、お寺(供養と合祀墓への納骨)に支払った費用は、こちら☟
お寺 300,000円+12,000円(昨年の管理費)
石屋 473,000円
合計 785,000円 *税込み785,000円をSさんと折半。9人で割って1人当たり約43,600円です。
Sさんは、墓を継ぐ意思のなかった伯父の一家から、遺産を相続した人です。遺産から全額を払う予定でしたが、祖父にかわいがってもらった孫として、いとこたちが半分を持つことにしました。費用を誰が持つかの考え方は、分かれてきました。
出典: いとこ9人で墓じまい。きっかけ、しまい方、費用。そして墓参りは続く…(note)(台帳: V0071)
森謙二氏の論文によると、葬儀や先祖のまつりごとの費用を誰が負担するかに、法律の特別な定めはありません。以前は、祭祀承継者がすべての責任を持つと解釈する人が多かったといいます。近年は、相続人の間で分担すべきという解釈も多いそうです。森氏も、現代の解釈としてこの意見に「とりあえず賛成する」と書いています。
先の石川氏も、葬儀費用を誰が負担するかは民法に規定がないと整理しています。裁判例は、実際に葬儀を取り仕切った人、相続人の共同、相続財産などに分かれています。
決まった分け方がないので、分け方は身内の話し合いで決めます。墓を継ぐ人でさえ、実際には親族の話し合いで決まるのが通常だと、同じ月報で浦川道太郎氏は述べています。全日本墓園協会の横田睦氏も、墓じまいの前に、なるべく多くの親族と相談するよう勧めています。
株式会社huhu(墓じまいの代行業者)は2026年5月、墓じまいを経験した100人に、補助金以外で費用の負担を抑えるためにしたことを聞きました(複数回答)。「親族間で費用を分担できるよう相談する」が40人で最も多く、「複数の石材店から相見積もりを取る」の38人が続きます。
話し合う前に、複数の石材店から見積もりを取っておくと、額をもとに相談できます。北九州市も市立霊園の案内で、施工業者はどこでもよく、複数の業者から見積りを取るよう勧めています。見積もりの比べ方は墓じまい費用の記事、石材店の選び方は墓じまい業者の記事にまとめました。
自治体の助成が使える墓かどうかは、墓じまい補助金の記事で確かめられます。
まとめ
墓じまいの法要も、法事の一つです。仏式なら表書きは「御仏前」、宗教が分からなければ「御供物料」です。額は香典の半額ぐらいを目安に、法要を営む側の案内に合わせます。
工事などの費用の分け方は、身内の話し合いで決めます。葬儀や先祖のまつりごとの費用の負担に、法律の特別な定めはありません。話し合う前に、複数の石材店の見積もりをそろえておきましょう。費用の全体は、墓じまい費用の相場の記事で確かめられます。
墓の費用を身内でどう持つか、2人の口コミ
最後に、身内で費用をどう持つかに向き合った2人の記録から、一節ずつ紹介します。
義父の遺骨を墓から永代合祀墓へ移すことにした、義理の娘の当事者(個人ブログ・アメブロ)
義母の貯蓄?
うちの家計?そうなると他の兄弟と折半?
いやいや他のお嫁さんはお金にシビアだから半分出してくださいなんて言えない
出典: 永代合祀墓の見学(アメブロ)(台帳: V0092)
父と実家の墓をしまい、墓にあった姉の遺骨を姉の婚家へ返した当事者(個人ブログ・はてなブログ)
婚家の方達は姉が入るお墓を用意することが出来ないらしく……MちゃんとKちゃんの2人は費用を出し合ってお墓を建ててくれました。
Mちゃんは私達に理解を示してくれて墓じまいに協力してくれましたがKちゃんは少し納得できない(お墓を建てる費用を自分の父親が出さずに自分が負担することに)でした。
出典: 【終活】墓じまいをして新たに永代供養墓を購入したお話です。(はてなブログ)(台帳: V0012)
