まず結論から
- お寺には、決める前の早い段階で「相談」として切り出します。曹洞宗は2023年の見解で、菩提寺(葬儀や法事を頼むなど、付き合いのある寺)との関係に疑問や要望があれば、できる限り早い段階で相談するよう勧めています。浄土宗も、移す先を決めて手続きを終えてから伝えるのではなく、はじめに相談するよう求めています。
- 困りごとが無かった人が最多という調査があります。墓じまいの代行を手がける株式会社huhuが、2026年2月に経験者100人に聞きました。離檀(檀家をやめること)をめぐる困りごとは「とくにない」が58人で最多でした。
- 伝えるのは、墓を守れなくなった事情です。同社が2026年3月に檀家をやめた100人に聞くと、最大の理由は「お寺が遠方でお参りや管理が大変」の39人でした。次が「後継者がおらずお墓の維持が難しい」の35人です。
- 話がこじれたら、寺の外にも相談先があります。離檀料(檀家をやめるときに寺へ慣習的に払うお礼)などでわからないことは、消費者ホットライン188などに相談できます。遺骨が納められている証明を出してもらえないときは、墓のある区市町村の窓口に相談します。
お寺には、いつ、どう切り出せばいいのか
墓じまいを考え始めても、住職に何と言えばいいのか迷う人は少なくありません。株式会社huhuが2026年3月に檀家をやめた100人に聞くと、離檀の手続きで最も苦労したことは「お寺(住職)への切り出し方」が39人で最多でした。
次は、母が毎年寺に納めてきた「護持会費」を、自分が亡くなったあとは払い続けられないと考え、寺へ相談に行った人の記録です。
父が買った、父と母だけが入る寺の墓の今後を、県をまたいで寺へ相談しに行った子(アメブロ)
私が生きているうちは、私が継続して払うことはできるのですが、
私も居なくなったら、支払いを続けられませんから、それも相談しました。
そしていつ旅立ってもおかしくない状態の母の葬儀についてもです。
母がまだ存命のうちに出向いた相談でした。寺からは、母の納骨のあと、三回忌などの節目に永代供養の場所へ移す案が出ています。曹洞宗は、疑問や要望はできる限り早い段階で菩提寺に相談するよう勧めています。
出典: 檀家さんへ相談(アメブロ)(台帳: V0105)
そもそも、住職と話す場は多くありません。全日本仏教会と大和証券は2022年12月、全国の20〜79歳にインターネットで調査しました。菩提寺がある人に、住職と会話する機会を、あてはまるものを全て選ぶ形で聞いた結果が図1です。
会話の機会は葬儀・法要が中心で、「会話をする機会はない」が36.3%でした。悩み相談の場で話す人は0.6%です。
離檀料をめぐってこじれる例の背景を、国民生活センターの月刊誌で全日本墓園協会の横田睦氏が説明しています。長年連絡のない墓を寺が手入れしてきたところへ、突然墓じまいを申し込まれた。その感情の行き違いが、もとになることも珍しくないそうです。
全日本仏教会のQ&Aも、改葬(遺骨を別の墓へ移すこと)では、まず日頃からの菩提寺との話し合いが一番大切だと答えています。手紙で相談の時間をお願いする作例は、墓じまいの挨拶状の記事にあります。
最初の相談では、何を伝え、何を聞かれるのか
寺へ出向いたら、まず墓をしまいたい事情を伝えます。浄土宗は、遠くてお参りに行けない、身内がもう故郷にいないといった事情を挙げています。そのうえで、まず菩提寺に事情を説明し、よく相談するよう勧めています。
次は、菩提寺へ離檀を申し出に行った人の記録です。住職から先に尋ねられたのは、遺骨の行き先と、寺との関係でした。
母の署名と捺印をもらった書類を持ち、夫と菩提寺へ離檀を申し出に行った人(note)
「今後 墓じまいをされたあと、ご遺骨はどうなさるおつもりですか? お寺との関係は・・?」
みたいに聞かれたと思う。
「離檀をさせて頂きたく・・」 自分自身 離檀と言う言葉が、するっと出たのに とっさにハッ!とした。
あれほど、直接的な言葉を使わず・・ソフトな展開でもっていくつもりだったのに。。
ズバリ 言ってしまった。
前の訪問では離檀の話を言い出せず、この日は夫を連れて出直していました。住職は離檀書を出し、書き方を説明しています。浄土宗は、移すか、遺骨の一部を分けるか(分骨)まで十二分に話し合うよう勧めています。
出典: 菩提寺でついに「離檀」。墓じまいの費用と本音、全部書く(note)(台帳: V0067)
やめた理由を聞いた調査もあります。株式会社huhuは2026年3月、檀家をやめた経験がある100人に、やめようと決めた最大の理由を聞きました。
「お寺の対応や関係性に不満がある」は5人でした。理由は寺との関係の悪さより、距離や後継者がいないことに集まっています。最初の相談で話すことと、その手がかりを表にまとめます。
| 最初に話すこと | 手がかり |
|---|---|
| 墓をしまいたい事情 | 遠くて通えない、継ぐ人がいないなど。まず事情を説明し、よく相談します。 |
| 遺骨をどこへ移したいか | 移すか、分骨にするかも含めて相談します。同じ寺の永代供養墓へ移す道は永代供養の記事、行き先の選び方は遺骨の行き先の記事にあります。 |
| 撤去の前の法要(閉眼供養) | 改葬の手続きを終えたら、抜魂式という法要をしてから墓石を撤去します。撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。お布施の額はお布施の記事へ。 |
| 遺骨が納められている証明 | 改葬の許可の申請には、墓地の管理者が作る、遺骨を納めた(埋蔵した)事実を示す書面を添えます。名古屋市では、申請書に管理者の記名押印をもらうか、埋蔵証明書を出してもらいます。書類の全体は必要な書類の記事へ。 |
お寺と話がこじれたら、どうすればいいのか
株式会社huhuの2026年2月の調査では、100人のうち58人が、離檀をめぐる困りごとは「とくにない」と答えました。この100人には、離檀の必要がなかった11人も入っています。一方で24人が「離檀そのものを強く引き止められた」、15人が「金額の折り合いがつかず何度も話し合った」と答えています。
次は、実家の菩提寺に墓じまいをお願いした人の記録です。2014年の墓じまいを振り返って書いています。
実家の菩提寺にあった父の墓をしまい、遺骨を散骨した人(note・2014年の記録)
住職は大層不機嫌になり(そりゃそうだ、檀家からの収入がなくなるのだから)「お母さんの葬儀はどうするの?」とか、「遺骨はどうするの?」とか聞いてきたので「無宗教で葬儀をし、散骨します」と答えた。
供養への感謝と、墓を管理できない事情を丁重に伝えた直後でした。話は最後に、閉眼供養をして更地に戻すことでまとまり、離檀料はありませんでした。人口が減っている地域の寺にとって、墓じまいは檀家が減ることでもあります。
出典: 汚実家片付け番外編 『墓じまい〜散骨』② 具体的な流れ(note)(台帳: V0003)
お金の話でこじれたときについて、国民生活センターは助言しています。離檀料に明確な基準はなく、金額に納得がいかないときは、基本的に寺などと話し合うことになります。わからないことがあれば、消費者ホットライン188などに相談できます。こじれ方ごとに、まずすることと、寺の外の相談先を表にまとめます。
| こじれ方 | まずすること | 寺の外の相談先 |
|---|---|---|
| 強く引き止められた | 移すか分骨かも含めて、十二分に話し合います。家族や親族を交えて話します。 | わからないことは、消費者ホットライン188など。 |
| 額に納得できない | 離檀料が要る根拠と額を寺に尋ねます。檀家の代表(檀家総代)や、同じ寺の檀家の親族に、適正な額かを確かめます。 | 消費者ホットライン188、市の消費生活センター。 |
| 証明を出してもらえない | 経緯をまとめます。代わりに認められる書類は、市町村によって違います。 | 墓のある区市町村の改葬の窓口。 |
| 争いとして人に任せたい | 争いになった件で、報酬を得て交渉の代理を仕事にできるのは、原則として弁護士です。 | 法テラスの無料法律相談。収入と資産の基準があり、1回30分、同じ問題で3回までです。 |
証明を拒まれたときの扱いについて、全日本墓園協会のFAQは1955年の通達を引いています。管理者は証明を拒むべきではなく、拒んだ場合は代わりの書面で扱って差し支えない、という内容です。全日本仏教会にも無料の法律相談がありますが、対象は加盟団体に属する寺院です。
まとめ
お寺には、決める前の早い段階で、「相談」として切り出します。墓じまいの経験者100人のうち58人は、離檀をめぐる困りごとは「とくにない」と答えています。
伝えるのは、遠さや継ぐ人がいないといった事情です。話がこじれたら、消費者ホットライン188や、墓のある区市町村の窓口に相談できます。
墓じまい全体の流れは墓じまいとはの記事にまとめています。
お寺に墓のことを相談しに行った3人の口コミ
最後に、墓のことでお寺に相談しに行った人の記録から、一節ずつ紹介します。
熊本の市の霊園にある実家の墓をしまうため、檀家になっている寺の住職に相談した人(アメブロ)
昨年2024年10月末に お墓がある熊本に出向き 檀家であるお寺の住職様に相談
これからやるべきことの アドバイスをいただきました
ここから 本格的に動き出しました
出典: 墓じまい①(アメブロ)(台帳: V0034)
92歳で一人暮らしの檀家に代わり、曹洞宗の菩提寺を訪ねた高齢者の支援者(note)
ご住職は静かにうなずき、Tさんの事情に丁寧に耳を傾けてくださった後、穏やかな笑顔でこうおっしゃいました。
「Tさんのお気持ちは本当に尊いですが、今後は、このお盆のお布施なども、もうお受けしないようにしましょう。
出典: 墓じまいに泣いた92歳(note)(台帳: V0046)
子がなく、母を住職を呼ばない直葬で送ったあと、寺へ離檀を申し入れた人(note)
「墓に入れず、離檀したい」旨の申し入れをしに行った。
他のお寺では離檀の際に数百万円を要求されたという記事を見たことがあったが、そういうこともなく仏壇じまい(閉眼料)数万円で済んだ。良心的なお寺であった。
出典: 早期退職してそろそろ1年 #番外、墓じまい と 実家じまい(note)(台帳: V0051)
