まず結論から
- 寺の墓で住職に頼むのは、遺骨を納めた証明と、閉眼供養(墓から魂を抜く法要)の2つです。証明は墓地の管理者が作り、寺の墓地では菩提寺(葬儀や法事を頼んできた寺)の住職などが管理者です。日蓮宗は、墓を移すときの法要は菩提寺の住職に相談するよう答えています。
- 改葬(遺骨を別の墓へ移すこと)の許可を出すのは、寺の墓でも、遺骨が今ある市区町村です。寺の墓地に使用規則があれば、その手続きを守る場合があります。規則の有無と中身は住職に尋ねます。
- 墓をしまうことと、檀家(寺を支え、法事を頼んできた家)をやめること(離檀)は、別の話です。月報司法書士の解説では、檀家をやめても、寺の墓地を使う権利は消えないとされます。檀家の関係が終わっても、当然に改葬できるわけでもありません。
- 撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積り取得を勧めています。見積もりの単位は店によって違うので、項目をそろえて比べます。
寺の墓は、公営や民営の墓と何が違うのか
寺の墓は、まず誰に連絡するかから違います。地域の高齢者の相談を受け、頼まれて墓じまいを手伝ってきた人は、初めての支援を次のように始めました。
高齢者の支援を仕事にして独立し、墓じまいを手伝ってきた支援者(note)
「墓じまい」 話しとしては聞いていましたが、実際に自分がその支援をする。 どうしたらいいのか?
素直に、お墓のある住職に連絡をして、「墓じまい」を希望されていることを伝えることから始めました。
AIにも聴いてみたり、ネットから情報を集めてから。
この人は、墓が寺の墓地・霊園・その他のどこにあるかで対応が変わると書いています。寺なら住職に、霊園なら管理事務所に連絡する、という分け方です。曹洞宗も、寺の墓地の規則は管理者である菩提寺の住職などに尋ねるよう案内しています。
出典: 高齢者の支援 ~墓じまい~(note)(台帳: V0044)
墓地は、経営する主体で分けられます。寺が経営する墓地にも、檀家のための墓地と、宗派を問わない霊園の2つがあります。違いを表にまとめます。
| 墓地の種類 | 経営するのは | 使うときの決まり |
|---|---|---|
| 寺の境内などの墓地(寺院墓地) | 寺 | もともとその寺の檀家のための墓地です。曹洞宗は、寺が管理する墓地の規則の基本に「お檀家さまであること」を挙げています。 |
| 宗派を問わない寺の霊園 | 寺などの宗教法人 | 原則として宗派を問わない墓地で、檀家のための墓地とは別のものです。 |
| 公営の墓地 | 都道府県や市町村 | 宗派は特定していません。使う権利は、自治体の許可で生まれます。 |
| 民営の墓地 | 宗教法人や財団法人など | 宗派を問わないところがほとんどです。 |
寺院墓地を使う権利は、檀家になった人と寺との契約で成り立ちます。近年は「墓地使用規程」を定める寺が増えていると、竹内康博氏は月報司法書士で解説しています。どの墓地でも、買ったのは土地ではなく、墓地を使う権利です。
寺の墓をしまう人は、少なくありません。全日本仏教会と大和証券は2024年12月、全国の20〜79歳にインターネットで調査しました。お墓をほかの場所へ移した人に、どこのお墓から移したかを聞いた結果が図1です。
移した人の33.2%は、寺院墓地にあるお墓から移していました。横浜市が2022年度に行った市民アンケートでも、墓を持つか使える1,119人の48.8%が、寺や教会などの宗教法人墓地でした。横浜市の手続きは横浜市の墓じまいの記事にあります。
寺の墓をしまうとき、住職に何を頼むのか
寺の墓地では、菩提寺の住職などが墓地の管理者です。改葬の許可の申請には、管理者が作る、遺骨を納めた事実の証明を添えます。国民生活センターも、墓じまいは勝手にできず、寺などが出す「埋葬証明書」などが要ると助言しています。
次は、菩提寺へ離檀を申し出た日に、住職から閉眼供養の段取りを聞いた人の記録です。
菩提寺にある墓をしまうため、夫と寺へ出向き、離檀を申し出た人(note)
つづけて、住職様のお話は、
「お骨上げのときに、閉眼供養をします。 その時のお布施として10万 長年 お寺の土地を使わせていただいたこと、御仏のお力に賜ったこと(ちょっとよく覚えていない) その感謝の気持ちとして、志納金 10万
10 10 でお願い致します。」
と すらーっと言われた。
離檀書の書き方の説明を受けた、すぐあとの場面です。この日は、改葬許可申請書にも住職の押印をもらっています。墓を移すときは墓から霊を抜く法要をすると、花園大学の佐々木閑氏も説明しています。
出典: 菩提寺でついに「離檀」。墓じまいの費用と本音、全部書く(note)(台帳: V0067)
寺の墓をしまうときに、相手ごとに頼むことを表にまとめます。
| 相手 | 頼むこと・出すもの |
|---|---|
| 寺の住職(墓地の管理者) | 墓地の規則の有無と中身を尋ねます。遺骨を納めた証明を書いてもらい、閉眼供養の相談をします。お布施の額はお布施の記事へ。 |
| 墓のある市区町村 | 改葬の許可を申請します。証明が出ないときは、前もって窓口に相談します。書類の順番は必要な書類の記事へ。 |
| 石材店 | 墓石を撤去し、区画を元に戻す工事です。複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も、複数の業者からの見積りを勧めています。単位は店によって違うので、項目をそろえて比べます。選び方は墓じまい業者の記事へ。 |
寺から証明が出ないこともあります。全日本墓園協会の横田睦氏は、寺の境内の墓でも、寺から証明を出してもらえないことがあると書いています。法律の施行規則は、それが難しい特別の事情があるときは、市町村長が認める、証明に準ずる書面で代えられると定めています。何が認められるかは市町村で違うので、改葬の許可を出す窓口に前もって相談します。
返し方を案内している寺もあります。大谷本廟(西大谷)は、使用権を返すときは、出骨(遺骨を取り出すこと)の手続きのあと元の状態に戻すよう案内しています。大谷墓地を返すときは、墓石の撤去が要ります。お寺への切り出し方は、お寺との交渉の記事にまとめています。
墓をしまうと、檀家もやめることになるのか
寺の墓をしまえば、檀家もやめることになる。そう考える人もいるでしょう。けれど、墓をしまうことと、檀家をやめることは別に考えられます。そもそも、どこからを檀家と呼ぶかも寺によって違います。浄土宗は、檀家と信徒の分け方は一定ではなく、寺が管理する墓を持っているかで分ける寺もあると説明しています。
次は、父が買い、父と母だけが入る寺の墓の今後を、寺へ相談しに行った人の記録です。
父が買い、父と母だけが入る寺の墓の今後を、県をまたいで寺へ相談しに行った子(アメブロ)
お墓は母が納骨された後、あるタイミング(三回忌、七回忌など)で、永代供養への場所に移すという提案をされ、
そうしようかなと思案中です。
中に納まっているのが、父とこれから旅立つ母の2体だけなので、まだそれほど大変ではない気がします。
これが先祖代々の墓じまいだと大変でしょうね。
母が存命のうちに、毎年寺に納める護持会費を、自分のあとは払えないことも相談した日です。墓を残したいが世話をする人がいないなら、管理費を納めて檀那寺(菩提寺)に管理を頼む方法もあると、佐々木閑氏は書いています。
出典: 檀家さんへ相談(アメブロ)(台帳: V0105)
寺の墓をどうするかで、墓石と寺との関係がどう変わるかを表にまとめます。
| 寺の墓をどうするか | 墓石 | 寺との関係と手がかり |
|---|---|---|
| 墓を残し、寺に管理を頼む | 残す | 管理費を納めて管理を頼む方法です。境内の墓なら住職に託せば、改葬の手続きも要らないと横田睦氏は提案しています。 |
| 同じ寺の永代供養墓や納骨堂へ移す | 撤去する | 同じ墓地の中で移すときも、改葬の許可が要るというのが厚生労働省の見解です。詳しくは永代供養の記事へ。 |
| ほかの墓地や納骨先へ移す | 撤去する | 檀家をやめるときに、お礼として慣習的に払う「離檀料」には、明確な基準がありません。別の寺の墓地へ移すなら、その寺の檀家になるよう求められることが多いとされます。離檀料の考え方は墓じまい費用の記事、行き先は遺骨の行き先の記事へ。 |
永代供養にしても、寺との関係が全くなくなるわけではないと、安藤喜代美氏の論文は指摘しています。年忌法要やお盆の仏事を続ければ、時間や費用がかかります。墓をしまったあとの寺との付き合い方も、最初の相談で住職と話しておきます。手紙で相談を切り出す作例は、墓じまいの挨拶状の記事にあります。
まとめ
寺の墓でも、改葬の許可を出すのは遺骨が今ある市区町村です。寺の墓で違うのは、遺骨を納めた証明と閉眼供養を、菩提寺の住職に頼むことです。
墓をしまうことと、檀家をやめることは別の話です。墓を残して、寺に管理を頼む道もあります。撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も市営霊園の案内で、そう勧めています。
お寺への切り出し方はお寺との交渉の記事に、墓じまい全体の流れは墓じまいとはの記事にまとめています。
お寺と墓のこれからを考えた3人の口コミ
最後に、お寺とつながる墓のこれからを考えた人の記録から、一節ずつ紹介します。
実家の近くに住み、いずれ父から寺の墓を任される長男(note)
正直に言って父としてもお寺との付き合いは流れでやっているだけで、なんの思い入れもなく、それでもご先祖さまをないがしろにするわけにも行かず、言われるがままに慣習に従っているだけ、という感じ。
出典: 墓じまいをするつもり(note)(台帳: V0114)
父までは先祖の墓に入れ、その後は檀家の寺の共同墓地での永代供養を考えている人(アメブロ)
それでも父までは
先祖のお墓に入れてあげたい
その後は私の子供たちのために
檀家であるお寺の共同墓地にて
永代供養をお願いしようと
思ってはいる
出典: お墓と実家(アメブロ)(台帳: V0119)
山の上にあった墓をしまうため、檀家の寺の納骨堂の一部屋を借りることにした人(アメブロ)
墓じまいは、まず檀家のお寺に
納骨堂の空きを確認するところから始まった
まだ空きはあるということで
詳しい金額
方法などを確認した
出典: 墓じまい〜③(アメブロ)(台帳: V0079)
