まず結論から
- 菩提寺がある人の45.8%は、寺と付き合う中心の人と別に暮らしています。全日本仏教会と大和証券が2024年12月に、菩提寺がある5,133人に聞いた結果です。「自分が中心」は28.2%でした。
- 寺との付き合いを親に任せてきた人も、まず菩提寺の住職に相談できます。曹洞宗は、普段の交流が薄くなっていても、遠慮なく相談するよう答えています。
- 菩提寺は、墓のある寺とは限りません。浄土宗は、先祖の御霊を弔う役割を担う寺なら、世話になる側からは菩提寺にあたると説明しています。
- 墓が寺の外にあれば、菩提寺に頼むのは法要の相談です。日蓮宗は、墓を移して墓石を処分するときは必ず御霊抜き(墓から魂を抜く法要)を営み、法要は菩提寺の住職に相談するよう答えています。遺骨を納めた証明は、墓地の管理者が書きます。
- 菩提寺が遠い家もあります。同じ調査の1万人のうち12.2%は、菩提寺が住まいと違う都道府県にありました。曹洞宗は、遠くてもまずお寺と相談するよう答えています。
菩提寺はどの寺か、家で知っているのは誰か
菩提寺とは、どの寺のことでしょう。全日本仏教会と大和証券の調査は、菩提寺を「葬儀や法事を執行するなど、お付き合いのある寺院」として聞いています。けれど、その付き合いを親に任せてきた家もあります。
次は、父を見送ったあと、父方の墓じまいに取りかかった人の記録です。
父の三回忌を前に、父方の墓じまいに取りかかった子(アメブロ。文中の「トト」は書き手本人)
親戚づきあいも煙たがり 祖先に関して詳細なことは オヤジも知らないし トトもさっぱり、 という状況なのだ。
オヤジには生前から 墓じまいについては 再三プッシュしていた。
たが、とうとうオヤジは 無責任なまま旅立った というワケ。
ややこしいことに 昔はよくあったらしいけど 父方は 菩提寺(浄土真宗)と 墓がある寺(浄土宗)が 別なんだよね。
書き手はまず墓のある寺を訪ねましたが、誰の骨か一切わからない、という返事でした。菩提寺の台帳で分かったのは4人の名前です。寺に置かれた過去帳は戸籍台帳のようなものだと、花園大学の佐々木閑氏は説明しています。
出典: 墓じまい①(アメブロ)(台帳: V0029)
寺と付き合ってきたのは自分ではない、という人は珍しくありません。全日本仏教会と大和証券は2024年12月、全国の20〜79歳の1万人にインターネットで事前の調査をしました。菩提寺がある5,133人に、菩提寺との関わりを聞いた結果が図1です。
中心の人と別に暮らす人は、女性の30代で64.9%でした。男性の70代では、「自分が中心」が64.6%です。寺との関係を知らないまま、墓を継ぐこともあります。東京弁護士会のコラムは、祭祀承継者(墓や仏壇を継ぐ人)が、寺との従来の関係を知らずに困ることがあると書いています。
曹洞宗は、菩提寺との付き合いを両親に任せてきた人に、まず菩提寺の住職に相談するよう答えています。普段の交流が薄くなっていても、遠慮なく相談してよいとしています。同じ調査の1万人のうち23.5%は、菩提寺があるかどうかを知りませんでした。どの寺か分からないときも、まず家族の中で話し合います。墓じまい全体の流れは、墓じまいとはの記事にまとめています。
墓が菩提寺の外にあるとき、菩提寺に何を頼むのか
菩提寺がある家でも、墓が寺の境内にあるとは限りません。辻井敦大氏の2018年の論文が調べた兵庫県新温泉町の旧浜坂町の3つの寺は、どれも檀家向けの墓地を持っていませんでした。檀家の墓は、自治区の墓地や村の共同墓地にありました。
全日本仏教会と大和証券の2024年の調査は、菩提寺がありお墓を移した110人(集計の人数)に移す前の場所を聞いています。52.9%が、寺院墓地や寺院の納骨堂以外の場所のお墓から移していました。次は、そうした墓をしまった人の記録です。
村の外れの墓地にあった実家の墓をしまい、母の葬儀を頼んだ寺に閉眼供養(墓から魂を抜く法要)を頼んだ子(アメブロ)
うちの場合は
先祖代々の檀家を外れてしまったので
母の葬儀をしていただいたお寺とお付き合いが始まる
なので、そのお寺に連絡して
閉眼供養をお願いしました
役所への届け出の用紙は、書き手が市役所でもらいました。墓地の管理者の埋葬証明の署名は、石材店に頼んで取ってきてもらいました。墓を移すときは墓から霊を抜くお霊抜きをすると、佐々木閑氏も書いています。
出典: 親が亡くなってからも大変!墓じまいにかかる費用-お金⑭(アメブロ)(台帳: V0015)
墓のある場所によって、遺骨の証明を書く人が変わります。改葬(遺骨を別の墓へ移すこと)の許可の申請には、墓地の管理者が作る、遺骨を納めた事実の証明を添えるためです。
| 墓のある場所 | 遺骨の証明を書く人 | 菩提寺に頼むこと |
|---|---|---|
| 菩提寺の境内の墓地 | 墓地の管理者である、菩提寺の住職など | 法要の相談と、証明の両方です。詳しくは寺の墓の墓じまいの記事へ。 |
| ほかの寺の墓地 | その墓地の管理者 | 墓石を処分する前の法要の相談です。 |
| 公営・民営・自治会などの墓地 | その墓地の管理者 | 墓石を処分する前の法要の相談です。書類の順番は必要な書類の記事へ。 |
法要のお布施は、お布施の記事にまとめています。墓石の撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積り取得を勧めています。見積もりの単位は店によって違うので、項目をそろえて比べます。選び方は墓じまい業者の記事へ。
菩提寺が遠いとき、どう相談すればいいのか
故郷を離れて暮らすと、菩提寺との行き来は難しくなります。曹洞宗は、世代が子や孫へ移ると、故郷や寺とのつながりがさらに薄くなるかもしれないと書いています。
次は、遠くの県にある代々の寺に、墓じまいを任せた人の記録です。
兵庫県姫路市に住み、広島県尾道市の代々の寺に、墓2基の墓じまいを任せた人(アメブロ)
支払いはネットバンキングからの振り込みをさせていただきました。
尾道は大好きな街です。
代々お世話になったお寺にも愛着があります。
今後も私が元気なうちはのんびりお参り旅に行きたいと思っています。
やり取りは電話とLINEで済ませています。遺骨は合同塚へ移す永代納骨にし、書き手は姫路にいながら墓じまいを任せました。曹洞宗も、故郷に菩提寺と墓がある人に、まずお寺と相談するよう答えています。
出典: 墓じまいの流れと費用(アメブロ)(台帳: V0097)
菩提寺が遠い家は、どれくらいあるのでしょう。同じ事前調査の1万人に菩提寺の場所を聞き、住む地方別に並べたのが図2です。
菩提寺が住まいと違う都道府県にある人は、全体で12.2%でした。関東地方に住む人では17.5%です。遠い菩提寺について、宗派の公式の答えを表にまとめます。
| 寄せられた問い | 公式の答え |
|---|---|
| 故郷に菩提寺と墓があり、親戚も減った(曹洞宗) | まずお寺と相談を、と答えています。できる範囲で、家族の中で話し合っておくことも勧めています。 |
| 菩提寺が遠く、親の法事を住む所で営みたい(曹洞宗) | まず菩提寺に相談します。遠方でも法要の場所へ出向く住職もいて、無理なら近所の寺を紹介してもらえる場合もあると答えています。 |
| 地元の寺と疎遠だが、東京で葬式をしてもよいか(築地本願寺) | 今まで疎遠でも、遠慮なく地元の寺に相談しようと答えています。 |
| 故郷から遠く、近くに墓を移したい(日蓮宗) | 墓を移すことを改葬と呼び、墓地、埋葬等に関する法律に基づく手続きが要ると答えています。違いは改葬の記事へ。 |
寺の側から縁をつなぐ例もあります。辻井氏の論文が取り上げた兵庫県の寺は、都市へ移った檀家の葬儀に、移住先の同じ宗派の寺を紹介していました。永代供養墓に納めた人の祥月命日(亡くなった月日と同じ日)には経を上げ、遺族に葉書で知らせていました。
付き合いをどこまで続けるかは、人によって違います。佐々木閑氏は、檀那寺(菩提寺)が遠くにあっても、いざというときは住職に来てもらい、葬儀をしてもらいたい人もいると書いています。一人一人の感性に基づく判断だとしています。相談の時間を手紙でお願いする作例は、墓じまいの挨拶状の記事にあります。
まとめ
菩提寺がある人の45.8%は、寺と付き合う中心の人と別に暮らしています。まず家族の中で話し合い、菩提寺の住職に相談します。
墓が寺の外にあれば、菩提寺に頼むのは法要の相談で、遺骨の証明は墓地の管理者が書きます。撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って決めます。北九州市も市営霊園の案内で、そう勧めています。寺が遠くても、まずお寺と相談します。
檀家を続けるかどうかは寺の墓の墓じまいの記事に、お寺への切り出し方はお寺との交渉の記事に、同じお寺の永代供養墓へ移す道は永代供養の記事にまとめています。
菩提寺と墓のこれからに向き合った3人の口コミ
最後に、菩提寺と墓のこれからに向き合った人の記録から、一節ずつ紹介します。
片道2時間かかる、実家の菩提寺の境内にある墓を守ってきた人(note)
墓地は実家の菩提寺の境内にあるのだが、家から片道2時間程度かかり、そんなに頻繁に行き来することができない。それを言い訳にして、せいぜい年に2回春と秋のお彼岸くらいしか墓参りをしなかった。
出典: 墓じまいの話(note)(台帳: V0021)
市営霊園の墓をしまい、祖父母の代から知る住職の寺の永代供養へ移した姉妹の一人(ブログ)
父が元気なうちに、できるだけ早く決断し、行動に移すことが必要だと感じました。
そこで、住職に相談し、墓じまいの詳細や流れ、そして費用について教えてもらいました。
出典: 墓じまい:費用とやり方を解説!私たちの選んだ永代供養の詳細(Rinのシンプルライフ)(台帳: V0013)
山の中にあった母方の墓をしまい、遺骨を菩提寺の永代供養に預けた人(note)
また仏壇も遠方の自宅に移すのが止むなしであったので、棚経して頂くこともなくなり、菩提寺に毎年のお盆の施餓鬼供養をお願いしているだけである。
出典: 墓じまいと怪異(note)(台帳: V0054)
