まず結論から
- 仏教学者の佐々木閑・花園大学特別教授は、墓の場所を移すことに宗教的な縛りはないはずだと述べています。墓が要らない人は墓じまいして構わない、とも話しています。
- 檀那寺(代々付き合いのある寺)とのつながりが無いと将来不幸になる、という考え方は仏教に本来ない、とも述べています。
- 全日本仏教会と浄土宗の公式Q&Aは、墓を移すときは、まず菩提寺(先祖の墓がある寺)や家族とよく話し合うよう勧めています。
- 墓じまいを済ませた41人に困ったことを聞いた2023年の調査では、最も多い答えが「困ったことはない」でした。
- 日の吉凶は浄土真宗の教えに関係がなく、墓の方位も特に気にする必要はない、と築地本願寺と天台宗の公式Q&Aは答えています。
墓じまいをすると、祟りや不幸は起きるのか
墓を別の場所へ移すことを、改葬といいます。2024年度に全国で許可された改葬は、176,105件でした。自分の家の番が来ると、祟りが頭をよぎる人もいます。父の実家の墓じまいに立ち会った人の記録です。
父を見送ったあと、父の実家の墓じまいに家族で立ち会った娘(個人ブログ・note)
墓じまいというと、正直、たたりが起きるのでは?と変なことを考えて、行くまでドキドキしてしまい、
お墓を開けたらお骨は溶けてなくなってる?
カビとかいっぱい生えてる?
など考えてしまい、出発の前日まで怖くて、悪夢を見るほどだった。
1月に父を見送り、金沢市の山の墓地にある父の実家の墓を、家族でしまいに行った日の記録です。書き手は最後に、立ち会えてよかったと結んでいます。2011年の全国規模の意識調査では、祖先の祀りを怠ると祟りがあるか、という問いに、若い世代のほうが高齢の人より肯定的に答えていました。
出典: 墓じまいを見届けてきた(note)(台帳: V0069)
仏教学者の佐々木閑・花園大学特別教授は、国民生活センターの月刊誌「国民生活」2025年12月号の取材に、こう答えています。墓を移すときは、墓から霊を抜くお霊抜きをして、新しい場所でお霊入れをする。だから場所を移すことに宗教的な縛りはないはずだ、という説明です。
檀那寺とのつながりが無いと、将来不幸になるのか。この問いにも、仏教には本来そのような考え方はないと答えています。宗派の公式Q&Aは、墓を移すことを次のように書いています。
| 宗派・団体 | 墓を移すことについて |
|---|---|
| 全日本仏教会 | 改葬は「お墓の引っ越し」。まず日ごろから菩提寺と話し合い、家族・親戚とも理解し合える関係を持つことが、いちばん大切としています。 |
| 浄土宗 | 墓の移転は不可能ではない。移すか、分骨(遺骨の一部だけを分けること)にするかなど、十分に話し合うことが大切としています。 |
| 日蓮宗 | 改葬でそれまでの墓石を処分するときは、必ず御霊抜きの法要を営む。法要は菩提寺の住職に相談するとよい、としています。 |
法要は宗派の作法です。墓地埋葬法の施行規則が定める改葬許可の申請書の記載事項と添付書類に、法要は入っていません。
墓を残した場合にどうなるかは墓じまいしないとどうなるかの記事に、取り出した遺骨の行き先は墓じまいの遺骨の行き先の記事にまとめました。
墓じまいの前後の体調不良は、墓じまいのせいなのか
墓じまいの時期に体調を崩すと、つい墓じまいと結びつけて考えてしまいます。けれど、順番が逆の人もいます。体の不調が先にあり、それで墓じまいを早めた人の記録です。
脳梗塞のリハビリ中に、母と弟の眠る墓の墓じまいを段取りした一人っ子(個人ブログ・アメブロ)
脳梗塞になって
もうこれ以上は
無理だなあ〜💦💦と。もともと未婚の一人っ子、
いつかはやらなければならない
大事なお役目でしたが、
病気によって
それがかなり前倒しになった格好。
震災の年に母を亡くして墓石を建て、父の亡きあとは一人で墓参りと草の手入れを続けてきた人です。父の月命日の11月11日を目標に、石屋さんを通じて納骨先の受け入れ予約まで済ませました。墓じまいで大変だったことを尋ねた調査もあります。
出典: 11月11日11時に墓じまい(アメブロ)(台帳: V0030)
鎌倉新書は2026年1月、お墓の情報サイト「いいお墓」の利用者に、改葬・墓じまいについて尋ねました。大変だったことの1位は遺骨の移し先選びの38.8%、2位は役所の手続きの32.3%です。
全国石製品協同組合が2023年12月、40代以上の男女に聞いた調査もあります。墓じまいを済ませた人と、検討中の人とで、答えが分かれました。
| 聞いた相手 | 困ったこと・心配なことで最も多い答え |
|---|---|
| 墓じまいを済ませた41人 | 困ったことはない。次いで、移す先の墓を見つけるのが大変だった |
| 墓じまいを検討中の141人 | 高額な離檀料(寺の檀家をやめるときに求められるお金)を請求されること |
済ませた人の答えで最も多かったのは、困ったことはないでした。手続きや工事のどこまでを人に任せられるかは、墓じまい業者の記事にまとめました。
当日の雨や日取り、墓の方角は、何かのしるしなのか
当日の天気や日の吉凶、墓の方角が気になる人もいます。お経の最中に大雨になった家の記録です。
母方の家の山上の墓を、近親者と住職・石屋さんの5人でしまった当事者(個人ブログ・note)
「いえいえ、大雨になりましたけれどもね、こういうことがありますと、かえって後々まで記憶に残るものです。あの時は大変だったなぁと、それはそれで佳い思い出として皆さんで、何年経ってもお話しして頂ければと思います。それもまた供養になります」
さすがは千年以上も歴史のある由緒あるお寺のご住職である。
突然の悪天候を怪異とすることもなく、墓じまいをご先祖さまが望んでいないなどと言うこともない。
男子が絶え、墓が無縁になるのを案じた母方の家の墓じまいです。お経の最中に、横なぐりの雨と突風が来ました。書き手は、墓じまいのあと、とり立てて悪いことは起きていないと書いています。浄土真宗の築地本願寺は、日の吉凶は教えに関係がない、と答えています。
出典: 墓じまいと怪異(note)(台帳: V0054)
日取りや方角の心配に、寺や宗派の公式Q&Aは次のように答えています。いずれも、葬儀や法事、墓を建てるときの問いへの答えです。
| 気になること | 宗派の答え | 答えた寺・宗派 |
|---|---|---|
| 葬儀や法事の日の吉凶・六曜(大安・友引などの暦の吉凶) | 浄土真宗の教えには関係がない | 築地本願寺(浄土真宗) |
| 葬儀の日の友引 | 迷信にすぎない。日取りは家族や住職と相談して決めればよい | 真宗大谷派 |
| 墓を建てるときの方角・墓相(墓の形や向きの吉凶) | とらわれる必要はない。仏教とは関係のない迷信 | 真宗大谷派 |
| 墓の方位や墓相が悪いと言われたとき | 方位を特に気にする必要はない。建て直せばいいというものでもない | 天台宗 |
真宗大谷派は、こうしたこだわりは亡き人を敬っているようで、実は自分に都合の悪いことを避けたい思いからきているのではないか、と問いかけています。天台宗は、良い墓とは縁のある人が気持ちよくお参りできることではないか、と書いています。
うしろめたさが残るとき、誰に話すか
鎌倉新書の2026年1月の調査で、墓じまいを検討してやめた人に理由を聞くと、最多は解体費用が高すぎたの22.2%でした。先祖にうしろめたい気持ちになった、は11.1%で、前回の調査より増えています。
費用が理由なら、撤去を頼む石材店を1社に決めず、見積もりを比べます。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積もりを勧めています。相場は墓じまい費用の記事に、助成は墓じまい補助金の記事にまとめました。
気持ちの迷いを、誰にも話していない人もいます。全国石製品協同組合は2026年4月、全国の40〜70代の500人に、墓じまいを考えたときの相談先を複数回答で聞きました。墓じまいをするつもりのない人も含めた答えです。
夫・妻の33.2%と並んで、誰にも相談しないが32.8%ありました。専門の相談先では寺院・霊園の21.0%が最も多く、石材店・役所・葬儀社より上です。浄土宗は、移す先を決めて手続きを終えてから伝えるのではなく、はじめに菩提寺に相談するよう勧めています。
まとめ
仏教学者の佐々木閑さんは、墓の場所を移すことに宗教的な縛りはないはずだと述べています。全日本仏教会と浄土宗は、まず菩提寺や家族とよく話し合うよう勧めています。墓じまいを済ませた41人の答えで最も多かったのは、困ったことはない、でした。
日の吉凶は浄土真宗の教えに関係がなく、墓の方位も特に気にする必要はない、と築地本願寺と天台宗は答えています。うしろめたさが残るなら、移す先を決める前に、菩提寺に相談してみましょう。
墓じまいの前後の気持ちを書いた3人の口コミ
最後に、墓じまいをした3人の記録から、そのときの気持ちを書いた一節を紹介します。
公営霊園にある父の墓を、母の同意を得てしまった娘(個人ブログ・note)
墓石屋さんに改装許可証を持っていったときいよいよ本当に始まるんだと思うと、今まで押さえていた感情が溢れてしまい、業者さんの前で「罪悪感はあります」と涙が流れてしまいました。
出典: 2年前に実家の墓じまいをしました(note)(台帳: V0113)
大雨警報の出た日に、祖父母の遺骨を霊園の永代供養塔へ移した当事者(個人ブログ・note)
父は気がかりだったお墓のことが片付いてスッキリした!と言っていました。
出典: 雨が止んだら、墓じまいも無事に終わった(note)(台帳: V0052)
遠方の市営霊園の墓を、現地に行かずに石材店に頼んでしまった当事者(個人ブログ・note)
まだ気力も体力もあるうちにやっておいて、本当に良かったと思う。
ずっと頭の片隅にあったことが一つ片付いて安心した。
出典: 墓じまい 費用と手続き期間の記録(note)(台帳: V0002)
