まず結論から
- 墓じまい(改葬)を申請するのは、原則として墓の名義人(墓地の使用者)です。名義人でない人が申請するには、名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本(判決などの写し)が要ります。
- 国の省令が申請書に添えさせる書類に、親族の同意書の名前はありません。名義人が亡くなった墓は、名古屋市の市営霊園では、親族で話し合って決まった人が名義人になってから墓じまいをします。
- 墓を残したい人が申し出られる手は4つです。名義を継ぐ、分骨(遺骨の一部を分けること)を受ける、遺骨の一部だけ合葬墓(ほかの人の遺骨と一緒に納める墓)へ移す、近くの親族や住職に管理を託す、です。
- 墓を継いで残すと、名古屋市の市営霊園では、名義人が毎年の管理料と、墓の清掃・修繕を引き受けます。札幌市の市営霊園の管理料は、2026年度から1区画で年6,800円です。
- 合祀(ほかの人の遺骨と一緒に納めること)のあとは、遺骨を取り出せない施設があります。札幌市の合同納骨塚は、納骨後の遺骨の引き取りは一切できないとしています。
墓じまいは断れるのか。決めるのは誰か
墓じまいを持ちかけられた親が、首を縦に振らないこともあります。家の墓を移そうと、義父母に話した嫁の記録です。
北陸の都市にある家の墓を、自分たちが暮らす都市へ移そうと義父母に持ちかけた嫁(note)
身内がほとんどいない場所にあるお墓。
これから先、私たちがお墓参りに通い続けるのは難しい。
そこで、私たちが暮らしている都市にお墓を移すことを話してみた。
けれど、義父母は、
「私たちの目の黒いうちは、絶対に移さない」
と、頑として譲らなかった。
墓は、義父母の出身地である北陸の都市にあります。義父母も書き手の家族も、関東に住んでいます。義父はその後も墓を移さず、修繕しました。墓じまいの申請は、原則として墓地の使用者がします。
出典: 【嫁の記録】墓じまいから見えてきたこと(note)(台帳: V0024)
全日本墓園協会の横田睦専務理事は、国民生活センターの月刊誌「国民生活」2025年12月号で、改葬の許可を申請できるのは墓地の使用者が原則だと説明しています。国の省令は、使用者以外が申請するなら、使用者の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本を添えると定めています。
墓を動かしたくない人は、少なくありません。全日本仏教会と大和証券は2024年12月、継ぐ墓がある人に、墓を今の場所から移したいかを尋ねました。菩提寺(先祖の墓がある寺)がある地方住まいの60代以上では、「移したくない」の割合が47.5%でした。
あなたが名義人かどうかで、申請の扱いは次のように変わります。
| あなたの立場 | 墓じまいの申請はどうなるか |
|---|---|
| 親やきょうだいが名義人 | 申請するのは名義人。名義人と話し合い、墓を残す別の道を申し出る(次の節)。 |
| あなたが名義人 | ほかの人が申請するには、あなたの承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本が要る。郡山市も、使用者以外が改葬するときは、使用者本人の承諾が必要だと案内している。 |
| 名義人が亡くなっている | 名古屋市の市営霊園では、親族で協議して決まった人が名義人になってから墓じまいをする。墓を継ぐ人は慣習か亡くなった人の指定で決まり、慣習が明らかでなければ家庭裁判所が定める。 |
省令が挙げる書類に、親族の同意書の名前はありません。省令は3つ目に「その他市町村長が特に必要と認める書類」を挙げています。横田睦さんは、埋葬されている故人の親族の同意書が要る場合もあるかもしれない、と書いています。改葬許可証を出す窓口に、前もって相談するよう勧めています。
誰が申請するかの全体は墓じまいとはの記事に、申請書に添える書類は墓じまいの書類の記事にまとめました。
墓じまいを断るのが家族でなくお寺で、遺骨を納めた証明を出してもらえないときは、墓じまいトラブルの記事にまとめました。お寺と話がこじれたときの相談先は、お寺との交渉の記事にあります。墓じまいは義務なのか、決める権利は誰にあるのかは、墓じまいの法律の記事で整理しています。
名義人でなくても、代わりに何を申し出られるか
名義人でない人がまずできるのは、名義人と話し、墓を残す別の道を申し出ることです。進める側が、別の道を示した記録もあります。祖父母の墓をしまう孫が、墓がなくなるのは寂しいと話す従妹に返した言葉です。
祖父母の遺骨が入った実家の墓をしまうため、叔父や従妹に連絡した孫(アメブロ)
叔父さんが体調悪くて、あとわずか、とかならそれまで待つけど?
祖父が亡くなって33回忌も終えたけど、いつまで置いておいたら良いの?
分骨して別の納骨堂で管理してくれるのなら、合祀前にお骨を渡すよ?
従妹の返事は、別の納骨堂を構えるつもりはない、というものでした。書き手は、合祀でも本山や菩提寺で参れると伝え、押し切っています。遺骨の一部を分ける分骨には、改葬許可が要りません。
出典: 【墓じまい】最初の関門は「親族の同意を得る」(アメブロ)(台帳: V0116)
名義人でない人が申し出られる手を、市の案内と専門家の話から並べます。
| 申し出る手 | 市の案内・専門家の話にあること |
|---|---|
| 名義を継いで、自分が墓を守る | 札幌市の市営霊園は、名義人が存命のうちの譲渡を、双方の合意・墓碑が建っている・納骨されている・基本的に親族、の条件を全部満たすときに認める。名古屋市は、名義を継ぐこと(承継)を、「生前で承継しておきたい」だけでは認めない。名義人の健康状況などで適正な管理ができないなら、存命でも承継を認める場合がある。 |
| 分骨を受ける | 今の墓地の管理者から分骨証明書をもらい、分骨先の管理者に出す。市町村での手続きは無い(大津市)。 |
| 墓を残し、遺骨の一部だけ合葬墓へ移す | 浦安市は、墓所を使い続ける人も、遺骨の一部を合葬式墓地へ移せる。1体35,000円。 |
| 墓の近くの親族や住職に管理を託す | 新しい墓に使うお金を、管理を託す「委託金」として渡す方法を、横田睦さんが提案している。改葬の手続きも要らない。仏教学者の佐々木閑さんも、墓を残したいが世話をする人がいない場合に、管理費を納めて檀那寺(代々付き合いのある寺)に管理を頼む方法を挙げる。 |
分骨や合祀に抵抗を感じる人もいます。全日本仏教会と大和証券が2024年12月、全国の20〜79歳の6,192人に聞いた調査では、分骨に抵抗感がある人と無い人は半々でした。合祀に抵抗がある人は57.1%です。
合祀のあとは、遺骨を取り出せない施設があります。札幌市の合同納骨塚は、遺骨を骨壺から出し、ほかの人の遺骨と一緒に納めます。そのため、納骨後の引き取りは一切できないとしています。分骨を頼むなら、合祀の前に申し出ます。
分骨と改葬の線引きは改葬の記事に、取り出した遺骨の行き先は墓じまいの遺骨の行き先の記事に、寺に供養を任せる方法は永代供養の記事にまとめました。
墓を継いで残すと、何を引き受けるのか
墓を残すなら、誰かが名義人として墓を守り続けます。実家の墓の墓じまいを持ちかけられ、墓を残した家族の記録です。
実家の墓を守る家族から墓じまいを持ちかけられ、墓を残すことにした嫁いだ娘(note)
あれから息子は、お盆だけでなく年に数回はお墓参りに行き、草抜きを手伝ってくれている。今年のお盆も、息子夫婦は車で二時間ほどかけて帰ってきた。そこからお墓までは、さらに一時間ほど。
嫌なら墓の権利を譲る、とも言われていました。迷う書き手に、息子が自分が守ると言ったのが始まりです。こうした墓の清掃や修繕を、名古屋市の市営霊園は名義人の負担としています。
出典: お盆に、受け継ぐもの(note)(台帳: V0055)
名古屋市の市営霊園では、名義人は年間の管理料も払います。適切な管理がされないと、条例に基づいて使用権が取り消されることがあります。名義を継いで引き受けることを、市の例で並べます。
| 引き受けること | 市の例 |
|---|---|
| 毎年の管理料 | 札幌市の市営霊園は、2026年度から1区画で年6,800円。施設の老朽化や長引く低金利で、安定した維持管理が難しくなったためと説明している。 |
| 清掃と修繕 | 名古屋市は、墓と墓の上の工作物を、名義人の負担で清掃・修繕すると案内している。 |
| 管理料を納めないとき | 札幌市は、3年間納めないと使用許可を取り消せる。松戸市も、3か年にわたり納めないと取り消す。 |
| 前の名義人の滞納分 | 札幌市は、前の使用者の滞納分と、亡くなってから新しい使用者が決まるまでの管理料を、新しい使用者が払う。 |
| 名義変更の書類 | 北九州市は、承継の申請書(手数料300円)、戸籍謄本、ほかの権利者が記入した誓約書及び同意書などを出す。 |
管理料の額は、墓地によって違います。確かめた6つの市の、市営墓地の年額を並べます。
札幌市の管理料の対象は、2025年度以前に許可を受けて20年を経た区画と、2026年度以降に許可を受けた全区画です。札幌市では、名義を継ぐと、前の名義人の滞納分も払います。墓を残すと決めたら届けておくことは、墓じまいしないとどうなるかの記事にまとめました。
墓じまいの費用を出してと言われたら
墓じまいを持ちかけられるとき、費用の分担を頼まれることもあります。名古屋市の市営霊園は、撤去工事の業者を名義人が選び、工事費用は名義人が負担すると案内しています。松戸市も、墓地を元に戻す費用は使用者の負担としています。
身内で分けるかについて、森謙二さんの2020年の論文は、解釈の移り変わりを書いています。以前は、祭祀を継ぐ人がすべての責任を持つと解釈する人が多かったといいます。近年は、埋葬や葬儀の費用を相続人の間で分けるべきだと解釈する人も多いそうです。分け方の例は墓じまいの親戚のお金の記事にまとめました。
寺に払う離檀料(檀家をやめるときのお礼)について、国民生活センターは、明確な基準はないと助言しています。金額に納得がいかなければ、基本的に寺などと話し合います。相談先には消費者ホットライン(188)を挙げています。
分けるかを話す前に、額をそろえておきます。撤去を頼む石材店を1社に決めず、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も市営霊園の案内で、複数の業者からの見積もりを勧めています。相場は墓じまい費用の記事に、業者の選び方は墓じまい業者の記事にまとめました。
まとめ
墓じまいを申請するのは、原則として墓の名義人です。名義人でない人が申請するには、名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本が要ります。墓を残したい人は、名義を継ぐ、分骨を受ける、遺骨の一部だけ移す、管理を託す、の4つを申し出られます。
名古屋市の市営霊園では、墓を継いだ名義人が、毎年の管理料と清掃・修繕を引き受けます。横田睦さんは、墓じまいの前に、なるべく多くの親族と相談するよう勧めています。先祖への申し訳なさが残るなら墓じまいは罰当たりかの記事を、先祖の魂の行方が気になるなら墓じまいとスピリチュアルの記事を読んでみてください。
墓じまいを持ちかけられた家族をめぐる2人の口コミ
最後に、墓じまいを持ちかけられた家族の気持ちを書いた2人の記録から、一節ずつ紹介します。
後見人として、高齢者の墓のことに関わってきた支援者(note)
お年寄りにとって「墓じまい」は、自分の代でご先祖さまとの縁を切ってしまうような、重く辛い響きがあります。
出典: 「無縁仏にしたくない」——後見人として墓じまいに向き合ってきた話(note)(台帳: V0062)
伯母の墓の隣に買った墓地を手放したい、と父から相談された娘(note)
正直、私はその場では同意できなかった。確かに私が行けるのは、多くても年に2、3回くらい。頻繁には墓参りに行けないだろう。
出典: note Diary #31 墓じまいに迷う(note)(台帳: V0059)
