墓じまいの法律は?墓地埋葬法・民法・刑法と義務・同意の範囲

墓じまいの法律は?墓地埋葬法・民法・刑法と義務・同意の範囲
目次

墓じまいを考え始めたら、まず法律で何が決まっているのかを知っておきたい。しなければならない義務なのか、親族全員の同意が要るのか、守らないと罰があるのか——そんな方に向けた記事です。

墓地埋葬法と施行規則、民法、刑法の条文から、場面ごとに何が決まっているかを整理しました。国民生活センターの「国民生活」、東京都と横浜市の条例、総務省行政評価局の報告書、厚生労働省の衛生行政報告例も確かめています。法律や手続きに向き合った人の口コミも添えます。

まず結論から

  • 墓じまいに主に関わるのは、墓地埋葬法・民法・刑法と、墓地ごとの条例や規則です。墓地埋葬法は、遺骨をほかの墓へ移すことを「改葬」と呼び、市町村長の許可を要すると定めています。
  • 墓地埋葬法が改葬について定めるのは、言葉の意味と許可の手続きです。祖先をまつることは法律上の義務ではない、と森謙二・茨城キリスト教大学名誉教授は考えています。返すと決めた区画を元に戻す決まりは、東京都と横浜市の条例にあります。
  • 名義人(墓地の使用者)でない人が改葬を申請するとき、省令が求めるのは名義人の承諾書などです。親族の同意の範囲、墓から魂を抜く法要(閉眼供養)、お布施の額は、墓地埋葬法にも施行規則にも定めがありません。
  • 許可を受けずに改葬した人は「二万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処すると、墓地埋葬法21条は定めています。刑法190条は、遺骨を捨てた(遺棄した)人などを三年以下の拘禁刑に処すると定めています。
  • 改葬の申請先は、遺骨が今ある市区町村です。親族や寺ともめそうなら、法テラスの無料法律相談で、弁護士か司法書士に相談できます。収入と資産の基準があります。

墓じまいを決めている法律は何か。場面ごとに別々の決まり

墓地埋葬法と施行規則の条文に、「墓じまい」という語は出てきません。森謙二氏は「国民生活」で、墓じまいは「法律上は『改葬』を装うことになります」と書いています。法律を調べながら、両親が存命のうちに準備を進める人の記録です。

父から将来の墓じまいを頼まれ、両親が存命のうちに準備を進める息子(個人ブログ・note)

改葬を行うには、市区町村長の許可が必要となる。改葬許可の申請書には、死亡者の本籍・住所・氏名・性別、死亡年月日、埋葬または火葬の場所と年月日、改葬の理由、改葬先などを記載することになっている。また、原則として、現在の墓地の管理者が作成した、埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面なども必要となる。

つまり、墓じまいをするからといって、現在のお墓から遺骨を勝手に取り出して合祀墓へ移すことはできない。 改葬許可を取得したうえで、遺骨を移す必要がある。

父は、自分の代ではなく息子の代で墓じまいをしてほしいと頼みました。この人は親族の了承を取り、分からない火葬の日付の書き方も前もって市役所で聞いています。申請書に書く事項と添える書類は、墓地埋葬法の施行規則2条が定めています。

出典: 僕の「墓じまい」(note)(台帳: V0005)

お墓に関する法律は墓地埋葬法が唯一で、その下に国の省令と都道府県の細則がある。愛媛大学の竹内康博氏は、2021年の講演でそう説明しています。そこに、墓を継ぐ人を決める民法897条と、遺骨を捨てることなどを罰する刑法190条が加わります。

墓地埋葬法は、遺骨をほかの墓や納骨堂へ移すことを「改葬」と定義しています。許可を出すのは、移す先ではなく、遺骨が今ある市区町村です。厚生労働省の衛生行政報告例では、2024年度に全国で許可された改葬は176,105件でした。場面ごとの決まりを表にまとめます。

場面決まり決めていること
遺骨をほかの墓へ移す墓地埋葬法2条・5条移すことを「改葬」と呼び、遺骨が今ある地の市町村長の許可を要します。改葬の記事へ。
申請書と添える書類施行規則2条改葬の場所などを書き、墓地の管理者の証明を添えます。名義人以外の申請には、名義人の承諾書などが要ります。書類の記事へ。
墓を継ぐ人民法897条亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の順で決まります。祭祀承継者の記事へ。
取り出した遺骨刑法190条遺骨を壊したり、捨てたり、自分のものにしたりした人は、三年以下の拘禁刑です。遺骨の扱いの節へ。
区画を返す東京都霊園条例16条・横浜市の条例14条使わなくなった区画は、元に戻します。東京都と横浜市の記事へ。
ゆかりのある人(縁故者)がいない墓施行規則3条改葬するには、官報と立札で1年間、申し出を待った書面などが要ります。放置された墓の節へ。
墓を受け継いだときの税相続税法12条墓所・霊びょう・祭具などは、相続税の課税価格に入れません。

墓じまいは義務なのか。決める権利と責任は誰にあるのか

墓じまいは、いつかしなければならないものなのか。気にかかっていても、誰が言い出すのかで止まる家もあります。義母の実家の墓について書いた人の記録です。

誰も管理していないとみられる、高知県の義母の実家の墓について書いた息子の妻(個人ブログ・note)

話をして?と夫をせっついても、義姉を促がしても、なぜかその話題に触れてくれない。 超常現象的なことは信じない人間なのだが、フットワークの軽いはずの人たちが、この手のことになると途端に足取り重くなるのはなぜなんだろう。何かが邪魔をしているとしか思えないのだ。 片付け魔の私は、とっとと墓終いをしたい。終う権利と義務のある人たちの腰が重く、動けない不思議。

この墓の存在を知ったのは、認知症の義母に後見人をつける準備をしていたときでした。その家の姓を名乗る人は、もういません。森謙二・茨城キリスト教大学名誉教授は、祖先の祭祀は法律上の義務ではないと考えています。

出典: 墓の世話は誰がする?(note)(台帳: V0066)

森氏は、その考えの例として、大阪高裁の1953年の決定を挙げています。民法の祭祀の条項は、祭祀の義務を定めたものではないとした決定です。

改葬の許可を申請できるのは、墓の名義人(墓地使用者)が原則だと、全日本墓園協会の横田睦専務理事は書いています。名古屋市の市営霊園では、名義人が管理料を払い、墓の清掃や修繕も負担します。適切に管理されなければ、条例に基づき使用権が取り消されることがあります。名義人と墓を継ぐ人の違いは、祭祀承継者の記事の名義の節にあります。

しまうかどうかとは別に、返すと決めたら、区画を元に戻して返す決まりがあります。横田氏も、残った墓石の撤去は「現状回復義務」として使用者の義務とされていると書いています。

墓地返すときの決まり
都立霊園使わなくなったら直ちに知事に届け出て、元に戻します。知事が特別の事情を認めれば、元に戻さなくてよいとしています。
横浜市営墓地使う必要がなくなったら、直ちに元に戻して市長に返します。返さなければ市長が必要な措置をとり、その費用を取れます。
曹洞宗の寺の墓地改葬の許可を得て墓石を撤去し、元に戻すことが必要だとしています。工事の費用がかかる場合もあります。

元に戻す工事の見積もりの単位(積算の仕方)は、店によって違います。日本石材産業協会が2023年に石材店に聞いた調査で分かったことです。複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事にあります。

法律で決まっていないこと。親族の同意・閉眼供養・お布施

役所の手続きのほかに、寺や親族とのやりとりも続きます。お布施や離檀料(檀家をやめるときに寺へ納めるお礼)の額は、どこかで決まっているのか。実家の墓を移した人は、こう書いています。

神奈川県西部の実家の墓を、都内の建物の中の合祀墓へ移した長男(個人ブログ)

お布施は、基本的には普段の法要の際と同程度で問題ないようです。 離檀料は法律で決まりはなく、支払いの義務はありませんが、これまでお世話になったお礼の気持ちも含めお渡しするのがよいかと思います。

この人には姉妹が3人います。墓をしまうとき、まず親戚を回って、相談ではなく提案から始めたといいます。花園大学の佐々木閑特別教授は、どの僧侶にいくら布施するかは、布施をする側に選択権があると述べています。

出典: 後悔しない! 墓じまい こうすればうまくいく(ヒロブログ 歳刻を愉しむ)(台帳: V0016)

親族の同意の範囲・閉眼供養・お布施の額は、墓地埋葬法と施行規則では決まっていません。決め方と尋ねる先を表にまとめます。

こと法律・省令では決め方・尋ねる先
親族の同意名義人以外が申請するとき、名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本を求めます。国民生活センターは、家族や親族を交えてよく話し合うよう助言しています。前もって話す節へ。
閉眼供養(魂抜き)定めはありません。呼び名は宗派でいろいろで、場所を移すことに宗教的な縛りはないはずだと、佐々木氏は述べています。魂抜きの記事へ。
お布施の額定めはありません。額の目安と尋ね方はお布施の記事へ。
離檀料定めはありません。国民生活センターは、明確な基準はなく、納得がいかなければ基本的に寺などと話し合うとしています。曹洞宗も、宗門として取り決めはないとしています。離檀料の記事へ。

知らせ方の文例は挨拶状の記事に、寺への切り出し方はお寺との交渉の記事にまとめました。

法律に反したとき・裁判になったとき

許可を受けずに改葬すると、罰金などの罰則があります。罰の決まりと、裁判で判断が示された例を表にまとめます。

起きたこと決まり・判断
許可を受けずに遺骨を移した墓地埋葬法21条は、5条1項に反した人を「二万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に処すると定めています。
取り出した遺骨を捨てた刑法190条は、遺骨を遺棄した人を三年以下の拘禁刑に処すると定めています。
寺が証明書を出さない施行規則は、特別の事情があれば、市町村長が必要と認める書面で代えられるとしています。全日本墓園協会のFAQが引く1955年の通達は、管理者が証明を拒んだら、代わりの書面で扱って差し支えないとしています。代わりの書面の例は200万円の記事の証明書の節へ。
墓参りの跡がある墓を、管理者が無縁の墓として撤去した高松高裁の2014年の判決は、調査を尽くさなかった過失があり、不法行為に当たるとしました。宗教法人の墓地の事件です。
継いだ墓の処分に、親族が異を唱えた継いだ墓の処分は自由で、ほかの親族は異を唱えられないとした1951年の広島高裁の判決を、浦川道太郎氏が挙げています。勝手に墓じまいされたときの記事へ。

寺や親族との話がこじれたら、法テラスの無料法律相談で、弁護士か司法書士に1回30分、同じ問題で3回まで相談できます。交渉を頼める相手は司法書士の記事の表にあります。

まとめ

墓じまいに主に関わる法律は、墓地埋葬法・民法・刑法です。改葬の許可は、遺骨が今ある市区町村が出します。返すと決めた区画を元に戻す決まりは、東京都や横浜市の条例にあります。

親族の同意の範囲や閉眼供養、お布施の額は、墓地埋葬法と施行規則に定めがありません。家族や親族とよく話し合い、工事は複数の石材店から見積もりを取って比べます。北九州市も市立霊園の案内で勧めています。手順の全体は墓じまいとはの記事の流れの節にあります。

法律と手続きに向き合った3人の口コミ

最後に、寺に相談したあとで調べた人、墓を継ぐ人のことを考えた人、いつか墓をしまうつもりの人の記録から、一節ずつ紹介します。

義実家の墓じまいを寺に相談し、そのあと調べたことを自分のブログに書いた人。まだ相談の段階(個人ブログ・note)

・お寺が証明書を出してくれないとき、それでも手は止まらないということ

・手元にあるお骨と、お墓に入っているお骨とでは、手続きがまったく違うこと

・お寺との交渉を頼めるのは弁護士で、行政書士ではないということ

出典: お坊さんは、私を見なかった|義実家の墓じまいで言われたこと(note)(台帳: V0004)

母が、実家の墓のある寺の樹木葬を申し込んだ40代の娘。墓には母の両親が眠る(個人ブログ・note)

母が墓に入りましたら、今度は弟が新しい墓守をすることになるでしょう(もちろんわたくしも墓参りには参りましょうが、法的な管理者は弟ということになります)。

出典: 墓じまいと母のこと【母と私と樹木葬】(note)(台帳: V0007)

祖父母と父の墓に月に一度参る、おひとりさまの娘。この墓もいつか処分するつもり(個人ブログ・note)

このお墓は、いつか処分します。 そのときは誰にも言わなくていい、私が決めて、私がやればいい。 そう思っていました。 でも、花が供えてあるということは、お参りに来ている人がいるということです。 だったら、墓じまいするときには、連絡しないといけない。

出典: 母だけがいないお墓に、手を合わせてきました(note)(台帳: V0065)

参考文献

  1. 総務省行政評価局 (2023)「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」表2-(3)-① 平成26年高松高等裁判所判決(抄).
  2. 日本石材産業協会 (2023)「お墓じまいに関する業界内意識調査」結果(2023年度お墓じまいアンケート). 回答者は石材店.
  3. 竹内康博 (2021)〈講演録〉民法と宗教法―墓地使用権の法的性格―. 愛知学院大学宗教法制研究所紀要 第61号, 109-141.
  4. 「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)第2条・第5条・第21条. e-Gov 法令検索.
  5. 「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23年厚生省令第24号)第2条・第3条. e-Gov 法令検索.
  6. 民法(明治29年法律第89号)第897条 祭祀に関する権利の承継. e-Gov 法令検索.
  7. 刑法(明治40年法律第45号)第190条 死体損壊等. e-Gov 法令検索.
  8. 厚生労働省 (2025)「衛生行政報告例 令和6年度」第6表 埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数(全国の行). e-Stat.
  9. 北九州市「諸手続きについて(市営霊園)」.
  10. 曹洞宗宗務庁 (2023)「離檀料・墓じまいに関する報道について」.
  11. 国民生活センター 見守り新鮮情報 第424号「墓じまい 離檀料に関するトラブルに注意」(小山市の転載ページ).
  12. 国民生活センター (2025)「国民生活」2025年12月号(No.160)特集「『家』を継げない時代の埋葬と祭祀を考える」特集1 森謙二(茨城キリスト教大学名誉教授)・特集2 佐々木閑(花園大学文学部特別教授)・特集3 横田睦(全日本墓園協会専務理事).
  13. 浦川道太郎 (2015) 祭祀財産承継にまつわる法律問題. 月報司法書士 2015年6月号 特集「墓地・葬送の問題」.
  14. 名古屋市「八事霊園・愛宕霊園 よくある質問」Q3-1.
  15. 日本司法支援センター(法テラス)「無料法律相談のご利用の流れ」.
  16. 東京都霊園条例 第16条(埋蔵施設等の原状回復). 東京都例規集.
  17. 横浜市「横浜市墓地及び納骨堂に関する条例」第14条(使用場所の返還). 横浜市例規集.
  18. 相続税法(昭和25年法律第73号)第12条 相続税の非課税財産. e-Gov 法令検索.
  19. 全日本墓園協会「平成28年度厚労科研費研究に伴う『墓地の経営・管理に関するFAQ』」4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題 Q3.

当事者の口コミの出典: V0005(note)/V0066(note)/V0016(個人ブログ)/V0004(note)/V0007(note)/V0065(note)。いずれも本人が公開している記録で、引用は原文のままです。

更新履歴: 2026-10-08 公開