まず結論から
- 義実家の墓じまいを申請できるのは、原則として墓の名義人だと八王子市は案内しています。嫁が手伝うなら、京都市では代理は委任状、嫁が申請者になるなら名義人の承諾書が要ります。
- 夫を亡くしても、嫁が夫の家の墓を継ぐと決まってはいません。継ぐ人は、亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の順で決まります。
- 婚姻で姓を改めて墓を継いだ人が、夫の死後に旧姓に戻るか、姻族関係(夫の親族との関係)を終わらせたときは、継ぐ人を決め直す定めがあります。亡夫の祭祀を継ぐ立場は当然には失わないとした判決もあります。
- 離婚して旧姓に戻るときも、墓を継いでいれば継ぐ人を決め直します。都立霊園と千葉市の霊園は、こうした名義人に代わって祭祀を主宰する人が名義を継げると定めています。
- 嫁いだ娘が実家の墓を継げる墓地もあります。横浜市の市営墓地は、使用者と違う姓でも名義を継げると案内しています。前橋市の樹林墓地は、他家に嫁いで親の墓を守れない人の遺骨の申込みを受けています。
義実家の墓じまい、嫁が決めていい?手伝うなら何が要る?
墓じまいでは、遺骨を別の墓へ移す手続き(改葬)を役所に申請します。八王子市は、申請できるのは原則として墓の名義人(墓地使用者)だと案内しています。名義人以外が申請するなら、名義人の承諾が要るとしています。
嫁いだ立場で、義父母の墓じまいを担った旅館の女将(note)
実は16年ほど前にも、義父母にじきじきに頼まれ、関西にあったお墓をたたんでこちらのお寺へお骨を移動させる、という経験をしました。 当時は「遠方で行きづらいから」という理由からでした。
この女将はいま、母方の実家の墓をどうするか、妹と話し合い始めています。名義人でない人が改葬を申請するなら、名義人の承諾書を添えると国の施行規則は定めています。
出典: 遠方の墓じまいと、嫁いだ私の立場~無縁仏にしないための小さな一歩(note)(台帳: V0045)
参議院の『立法と調査』(2008年)によれば、1980年代前半までは、墓の継ぎ方はさほど変わっていませんでした。長男と結婚した女性は嫁としての役割を期待され、死後は夫の家の墓に入ったといいます。
第一生命経済研究所は2009年9月、35〜79歳の全国の男女584人に「先祖」とは誰かを聞いています。配偶者の親や祖父母などを挙げた人は、女性52.7%、男性38.0%でした(複数回答)。
それでも、改葬を申請するのは原則として名義人です。嫁が手を動かすなら、委任状か名義人の承諾書を用意します。
| 場面 | 要るもの・確かめること |
|---|---|
| 名義人の代わりに役所へ出す | 京都市は、名義人の代理人が申請を代行するなら委任状を求めます。手順は京都市の墓じまいの記事にあります。 |
| 嫁が申請者になる | 名義人の承諾書を添えます。書類の中身は墓じまいの書類の記事で扱っています。 |
| 名義人がもう亡くなっている | 八王子市は、名義の変更が必要な場合があるとし、親族が墓地の管理者に相談してから手続きするよう案内しています。名義の継ぎ方は祭祀承継者の記事にまとめました。 |
| 撤去工事を頼む | 日本石材産業協会が2023年に会員の石材店に聞いた調査では、見積もりの単位(積算の仕方)が店によって違いました。複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者から見積りを取るよう勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事にあります。 |
費用を身内でどう分けるかは、墓じまいで親戚が包むお金の記事で扱っています。
夫を亡くしたら、夫の家の墓は嫁が継ぐ?死後離婚したら?
墓は相続財産と別に、祖先の祭祀(先祖をまつること)を主宰する人が継ぎます。夫が継ぐはずだった墓を、夫の死後に誰が継ぐかも、この決まりで決まります。
夫を亡くした妻(アメブロ)。夫は一人っ子で、夫の先祖代々の墓が田舎にある
仮に義父が先に亡くなれば、立場的には義母が担うことになるのだろう。だが、これまでの様子を見る限り、義母がその役を自らやるとはとても思えない。「もう高齢だし難しい」と言われてしまうかもしれない。
となると、やはり私に来るのか!?正直、それは勘弁してほしいと思った。
墓じまいの費用から実務から全部私がやるとなるとそこまで担えないし、責任を取る立場でもない。一瞬「姻族関係終了届」を出したい気持ちがよぎったほどだ。
夫の遺骨は、義父が見つけてきた永代供養墓に納めました。田舎の墓の墓じまいは、義父が兄弟への説明を先延ばしにし、進んでいません。民法897条では、墓を継ぐ人は亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の順で決まります。
出典: 《墓じまい問題 その1》(アメブロ)(台帳: V0031)
早稲田大学の浦川道太郎教授(当時)は、月報司法書士(2015年)で裁判例を整理しています。裁判所は、家制度につながる慣習を、継ぐ人を決める慣習とは認めてきませんでした。大分家裁の1975年の審判は、亡くなった人と同居して家を管理し、祭祀を実質的に主宰してきた亡長男の妻を、継ぐ人に指定しました。妻も継ぐことを望んでいました。
夫の死後、残された妻は、姻族関係を終わらせる意思を表示できます。旧姓に戻ることもできます。婚姻で姓を改めて墓を継いでいた人なら、関係人の話し合いで継ぐ人を決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めます。
一方で、東京地裁と東京高裁の1987年の判決は、妻が姻族関係を終わらせても、亡夫の祭祀を継ぐ立場は当然には失わないとしました。夫を除く婚家の先祖の祭祀は、位牌と仏壇を引き取った夫の弟が継いだと判断しています。墓の名義が誰にあるかで、嫁の立場は変わります。
| 墓の名義 | 嫁の立場 |
|---|---|
| 義父母のまま | 八王子市の案内では、改葬を申請できるのは原則として名義人です。嫁が申請するなら、名義人の承諾書を添えます。 |
| 夫のままで、夫が亡くなった | 継ぐ人は、亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の順で決まり、妻と決まってはいません。東京家裁の2007年の審判は、亡くなった人の長男ではなく妻を、継ぐ人に指定しました。 |
| 自分に移っていて、夫の死後に旧姓に戻った・姻族関係を終わらせた | 婚姻で姓を改めた人なら、継ぐ人を決め直します。都立霊園と千葉市の霊園は、名義人に代わって祭祀を主宰する人が名義を継げると定めています。手続きは東京都の墓じまいの記事と千葉市の墓じまいの記事にあります。 |
| 自分に移っていて、離婚した | 話し合いで離婚した(協議離婚)なら、当事者や関係人の話し合いで継ぐ人を決めます。都立霊園と千葉市の霊園も、名義人の離婚をこの場面に挙げています。 |
遺言や死後の頼みごとと墓を継ぐ人の関係は、祭祀承継者の記事の表にまとめました。
嫁いだ娘は、実家の墓を継ぐ?しまう?
「嫁」には、嫁いだ娘という立場もあります。浦川氏は、裁判例が継ぐ人を、姓が同じかどうかや男女、長子かどうかを顧みずに指定してきたと書いています。
嫁いだ娘として、実家の墓の墓じまいを持ちかけられた人(note)
母が亡くなって数年が経ったある日、実家のお墓を守っている家族から連絡が入った。
「墓じまいをしたい。嫌なら権利を譲るけれど」
嫁いだ身の私が、実家のお墓を引き継ぐのか。でも、私自身も嫁ぎ先のお墓に入る予定はない。
父は亡くなる直前にキリスト教に改め、母の決断で墓をキリスト教の墓に変えていました。迷っていたとき息子が墓を守ると言い、いまは息子夫婦が墓参りに通っています。嫁いだ女性が実家の供養を続ける例は、寺の法要の記録にもあります。
出典: お盆に、受け継ぐもの(note)(台帳: V0055)
辻井敦大氏の論文(2018年・『宗教と社会』)は、寺の先祖供養の法要を記録しています。先祖代々の家名と施主(法要を営む人)の苗字が違う例が、5〜10件ほどありました。継ぐ人が絶えた実家の祭祀を、嫁に出た女性が施主として続けている例とみています。
横浜市の市営墓地の案内は、使用者と違う姓でも名義を継げると書いています。継いだあとにしまう道も、守る道もあります。
| 道 | 確かめられたこと |
|---|---|
| 実家の墓の名義を継ぐ | 横浜市は、名義を継ぐときの書類が前の使用者との関係で違うので、事前に墓地の管理事務所へ相談するよう求めています。横浜市の墓じまいの記事もあります。 |
| しまって、継ぐ人の要らない墓へ移す | 前橋市の嶺公園の樹林墓地は、2026年度の募集の遺骨の枠で、他家に嫁いで親の墓を守れない場合を例に挙げています。申込者が祭祀の主宰者で、市民であることなどが条件です。選び方は墓じまいと永代供養の記事にあります。 |
| きょうだいが継いだ墓の供養を続ける | 論文が紹介する寺の住職によれば、こうした女性は夫側の家の墓があるため、きょうだいが継いだ墓を継げない状況にあります。将来はきょうだいの墓を改葬して、永代供養墓を使う予定だといいます。 |
自分のあとに継ぐ人がいないときの道は、一人っ子・独身の墓じまいの記事にまとめました。
まとめ
改葬を申請できるのは、八王子市の案内では原則として名義人です。嫁が手伝うなら、委任状か名義人の承諾書を用意します。夫の死後や離婚のあとは、墓の名義が自分に移っているかで答えが分かれます。婚姻で姓を改めて墓を継いでいれば、継ぐ人を決め直す定めがあります。嫁いだ娘も、違う姓で名義を継げる墓地があります。
墓をしまうときは、複数の石材店に見積もりを頼みます。北九州市も市立霊園の案内で勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事に、頼む先の種類は墓じまい業者の記事にまとめました。
夫の家の墓に向き合った3人の口コミ
最後に、夫の家の墓をめぐって、決める・相談する・先を案じる場面に立った3人の記録から、一節ずつ紹介します。
長男の嫁で、義父が自ら墓じまいを決めて納骨堂へ移した人(アメブロ)
あの義父が自ら墓じまいを決めて、前のお寺と色々交渉して離檀し、今のお寺の納骨堂に移してくれた事、めちゃくちゃ有難いと思いました。その頃は私達夫婦が引き継ぐものだ、と思っていたので。
出典: 義実家のお墓問題(認知症やっちゃんの日々・アメブロ)(台帳: V0088)
義実家の墓じまいで、寺へ相談に行く役が回ってきた人(note)
相談に行ったお寺のお坊さんとは、初対面ではない。何十年も前、義親の葬儀でお会いしている。
その方が、私を見なかった。
こちらの話を聞くとき。うなずくとき。説明をするとき。視線は、ずっとごきょうだいのほうを向いていた。私がいる側には、一度も向かなかった。
出典: お坊さんは、私を見なかった|義実家の墓じまいで言われたこと(note)(台帳: V0004)
夫が長男で、夫の実家の墓は次男が継ぐことになった人(アメブロ)
だけど私には、次男妻さんの気持ちも分かる。順番通りに次男が先に亡くなり、若い次男妻さんが死後離婚でもしてお墓を放棄したら?
その場合は我が家の娘、息子にお墓問題が回って来るのでは?と思うわけです
出典: それぞれの墓事情(アメブロ)(台帳: V0120)
