まず結論から
- 名義人(墓地の使用者)がしたのなら、国の決まりに親族の同意を求める定めはありません。2024年度に全国で許可された改葬(遺骨をほかの墓へ移すこと)は176,105件で、うち、ゆかりのある人(縁故者)がいない墓の改葬は3,006件でした。
- 名義人でない人がしたのなら、名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本(判決などの写し)が要ります。墓地の管理者が無縁の墓として改葬するには、官報と立札で1年間、申し出を待ちます。
- 誰が改葬し、遺骨をどこへ移したかは、墓地の管理者が備える帳簿に載せる決まりです。墓地の使用者や「その他死者に関係ある者」が求めれば、管理者は閲覧を拒めません。
- ほかの遺骨と一緒に納めた遺骨は、再び集めることが困難です。札幌市の合同納骨塚は、納骨後の引き取りは一切できないとしています。
- これから墓や遺骨を受け継ぐ人は、親族の話し合いで決まるのが通常です。話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に申し立てる道があります。
勝手に墓じまいされた。それは許されることなのか
墓参りの日に、墓が消えていたことを知った人の記録です。父方の親族とは、長く行き来がありませんでした。
父方の墓に約20年参ってきた当事者・父の兄の家族とは絶縁状態(個人ブログ・note)
なのに、ない。 見間違いかと思って何度も目をこすったが、 そこにはただ、ぽっかりと空いた綺麗すぎる更地があるだけだった。
状況が呑み込めないまま、 とりあえず次の予定のお寺さんへ向かった。 「あの、お墓参りに行ったら、お墓自体が消えてたんですけど……」と報告する。 お寺さんによると、 伯父が墓じまいをしたとのことだった。
この家は毎年、父の命日に寺で法要をし、父方の墓に参ってきました。墓の管理は、父の死後に「長男は俺だ!」と言った伯父の側に任せていました。国民生活センターの助言は、墓じまいには寺などが出す「埋葬証明書」などが要るとしています。
出典: お墓参りに行ったら、お墓が消えていた。絶縁した親戚の「墓じまい」(note)(台帳: V0027)
では、誰がすれば手続きとして通るのでしょうか。改葬の許可を申請するのは、墓地の使用者が原則です。森謙二さんは「月報司法書士」で、改葬は使用者が申請する改葬と、縁故者のいない墓の無縁改葬の2種類しかないと整理しています。誰がしたかで、要るものは次のように変わります。
| 誰がしたか | 国の決まりで要るもの | 知っておくこと |
|---|---|---|
| 名義人(墓地の使用者) | 元の墓地の管理者が出す、遺骨を納めている事実の証明です。省令の添付書類に、親族の同意書は挙がっていません。 | 管理者の証明が取れないときに代わりに出す書面の例に、故人の親族の同意書が挙がっています。 |
| 名義人でない人 | 名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本です。 | 名古屋市営霊園は、名義人が亡くなっていれば、親族等関係人の協議で決まった人が名義人になってから返すとしています。 |
| 墓地の管理者(無縁の墓として) | 官報に載せ、墓に立札を1年間立てて申し出を待ち、申し出が無かったことを示す書面などです。 | 宗教法人の墓地で、墓参の形跡があった墓を無縁として撤去した行為を、高松高等裁判所は2014年に不法行為としました。 |
無縁の墓として片付けられるまでの順番と年数は、墓じまいしないとどうなるかの記事にまとめました。件数で比べると、2024年度の改葬176,105件のうち、無縁墳墓等の改葬は3,006件でした。前の2年度も3千件台です。
誰がして、遺骨はどこへ行ったのか。どこで確かめるか
誰が墓じまいをしたのかは、まず元の墓地の管理者に尋ねます。寺の墓地なら住職、共同墓地なら代表者です。墓の名義を、共同墓地の管理人に確かめた兄弟の記録があります。
大阪・門真にある先祖代々の墓について、祖父の弟が自分の墓だと主張していた本家の長男(個人ブログ・note)
Q. 墓の名義ってどうなってるの?
A. その管理人さんからお墓の管理者名簿みたいなものが写真でパシャっと撮ってメールで送られて来ました。ばっちり死んだ親父の名前だけが書かれてました。
管理人は、墓を建てる人たちの持ち回りの代表でした。兄弟は、祖父の弟の消息も一つずつ調べています。墓地の管理者は帳簿を備え、墓地の使用者や死者に関係ある者から求められれば閲覧を拒めません。
出典: (雑記170日目) 続・墓じまい(note)(台帳: V0109)
帳簿に載せる項目は、施行規則が決めています。その一つが、改葬の許可を受けた人の住所・氏名・続柄と、改葬の場所・年月日です。改葬の申請には、移す先の墓地の受入証明か使用許可証の写しを添えます。郡山市と大津市の案内に、そう書かれています。書類の全体は墓じまいの書類の記事にまとめました。
| 確かめる先 | 分かること |
|---|---|
| 元の墓地の管理者(寺・霊園の管理事務所・共同墓地の代表者) | 帳簿に載った、改葬の許可を受けた人と改葬の場所です。墓地の使用者や死者に関係ある者が閲覧を求めたら、管理者は拒めません。 |
| 管理者が分からない共同墓地 | 八王子市は、管理者がいるかを保健所や地域の自治会に確かめるよう案内しています。 |
| 無縁の墓として改葬されたか | 官報と墓の立札で知らせる決まりです。岡崎市は、公告日・墓地使用者・死亡者・本籍を市のページに載せています。 |
総務省は2023年の報告書で、無縁改葬の手続きを確かめた42市町村の遺骨の移し先を調べました。最も多いのは合葬式の施設で、21市町村でした。撤去のあとのことは、放置された墓の撤去後の節にまとめました。
墓参りを続けてきた親族は、これから何ができるのか
墓じまいが済んでいても、できることは残ります。移した先で参ること、遺骨の扱いを確かめること、これから誰が受け継ぐかを話すことです。墓じまいの前に知らせが届き、自分たちでしまうことにした、いとこたちの記録があります。
母方の祖父母の墓に、いとこ9人で年1回参ってきた孫の一人(個人ブログ・note)
Sさんが取り仕切る伯父家3人の永代供養に参列させてもらう(都合のつく者だけ)。 祖父母の墓じまい&永代供養費は、Sさんが相続した遺産から全額支払う予定だったが、ワタシたちが半分を負担し、ワタシたちの都合で行う。
急展開だったけど。ある時、墓参りに行ったら墓がない!おじいちゃんたち、どこいっちゃったの~?という事態を免れたのは幸いでした。
発端は、弁護士から届いた一通の手紙でした。寺に連絡したら定期的に参る親族がいるようだと言われた、墓じまいの了承を得たい、という内容です。遺骨は寺の合祀墓に納めました。浄土宗は、合祀墓に納めた遺骨を再び集めることは困難だとしています。
出典: いとこ9人で墓じまい。きっかけ、しまい方、費用。そして墓参りは続く…(note)(台帳: V0071)
移した先で何ができるかは、ほかの遺骨と一緒に納めたかどうかで変わります。
| 遺骨の今 | 分かっていること | できること |
|---|---|---|
| ほかの遺骨と一緒に納めた(合祀・合葬) | 札幌市の合同納骨塚は、納骨後の引き取りは一切できないとしています。 | 札幌市の合同納骨塚では、納骨後も屋外の供花台の前で参れます。 |
| 骨壺ごと一体ずつ納めた | 分骨(遺骨の一部を分けて別に納めること)は、市町村長の許可は要らず、遺骨の所有権者の承諾が要ります。 | 遺骨を受け継いだ人に頼みます。遺骨は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」(先祖の供養を担う人)に帰属するとした、大阪高等裁判所の2023年の判決があります。 |
| 無縁の墓として改葬された | 2023年の総務省の報告書に、「区画(墓石)の現状復帰は行わないが、遺骨は返還可能である」と説明した市町村の例があります。 | 元の墓地の管理者に、遺骨を今どこに置いているかを尋ねます。 |
これから墓や遺骨を誰が受け継ぐかは、親族の話し合いで決まるのが通常です。家庭裁判所に持ち込むことは稀です。墓などの祭祀財産(祖先を祭るための財産)は、相続とは別に、亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の手続きで受け継ぐ人が決まります。家庭裁判所への申し立ては、調停なら相手方の住所地、審判なら相続開始地の家庭裁判所です。墓を継ぐ人の決まり方は、墓じまいは誰がするものかの節にもまとめました。
弁護士に相談するなら、法テラスの無料法律相談があります。収入と資産が一定の基準以下の人が対象で、1回30分、同じ問題で3回まで受けられます。
これから墓じまいをする人へ。同意が要らなくても先に話す
名義人の申請に、国の決まりは親族の同意書を求めていません。それでも横浜市や大津市の案内は、手続きの前に親族と話すことを置いています。親族への話は、役所の手続きより先です。
横浜市は「手続きを始める前に、ご親族内で話し合いをされることも必要です」としています。大津市は、墓じまいの手順の最初に「親族間での意思確認・意思決定」を置いています。国民生活センターも、家族や親族を交えてよく話し合うよう助言しています。
話し合いでは、費用のことも話題になります。北九州市は、複数の業者から見積もりを取るよう勧めています。見積もりの比べ方は墓じまい費用の記事に、費用を親戚とどう分けるかは親戚が出すお金の記事にまとめました。知らせ方の文例は、挨拶状の記事の、前もって話しておく節にあります。
まとめ
勝手に墓じまいされたと感じたら、まず誰がしたのかを確かめます。名義人がしたのなら、国の決まりに親族の同意を求める定めはありません。名義人でない人なら名義人の承諾書が、管理者が無縁の墓として改葬するなら1年間の公告が要ります。
誰が改葬し、遺骨をどこへ移したかは、元の墓地の管理者の帳簿に載ります。ほかの遺骨と一緒に納めたあとは、再び集めることが困難です。これから誰が受け継ぐかは、話し合いで決まるのが通常で、家庭裁判所に申し立てる道もあります。墓じまいそのものへのうしろめたさは、墓じまいで不幸になるかの記事で扱っています。
墓が消えていた・あとから知った・知らせた3人の口コミ
最後に、更地になった墓を目にした人、あとから知らされた人、知らせた人の記録から、一節ずつ紹介します。
郡山市営の東山霊園に夫の家の墓があり、毎年参っている当事者(個人ブログ・note)
今回のお墓参りで驚いた事は、なんと‼️ウチのお隣のお墓が「更地」になっていたことです。 これって、「墓じまい」なのでしょうね。
出典: 墓じまい(note)(台帳: V0047)
母の両親の墓を守ってきた母が、同じ寺の樹木葬を申し込んでから電話で知らせてきた娘(個人ブログ・note)
「○○寺(実家の墓がある寺)で樹木葬の募集をしててね」
・・・ん?? 「申し込んだわ」 もう申し込んだんかい。 「で、墓石の種類と彫る文字、一緒に考えてほしい」
出典: 墓じまいと母のこと【母と私と樹木葬】(note)(台帳: V0007)
本家の一人娘で、実家の墓をしまい、遺骨を菩提寺の永代供養塔に託した当事者(個人ブログ・アメブロ)
来週は、今はもう付き合いのないはとこ達にも、墓じまいの簡単な報告をしようと思っています。菩提寺の永代供養塔へ行けば、お参り出来るので。
出典: 全て完了しましたー墓じまいー(アメブロ)(台帳: V0118)
