まず結論から
- 墓じまいで司法書士が関わるのは、主に墓の土地の登記と、親の後見の場面です。『月報司法書士』2015年6月号の特集の前書きは、後見や財産管理の仕事で、墓地など祭祀財産(先祖をまつる財産)を継ぐ問題を検討するケースもあると書きます。
- 改葬(遺骨をほかの墓へ移すこと)の申請は、名古屋市の案内では通常、墓の使用者がします。名古屋市は、行政書士でない人が報酬を得て役所への書類を作るのは、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士法違反だと注意しています。
- 寺や霊園の墓の土地は、一般に、経営する寺院や公益法人、自治体のものと考えられています。横浜市の2022年の調査では、墓を持つか使える市民1,119人のうち、個人の所有地にある墓地は4.2%でした。
- 自分の土地にある墓は、土地の名義も継ぎます。登記の原因を「民法897条による承継」とし、相続人全員と継ぐ人が共同で申請するのが実務の扱いです。
- 親が認知症なら、家庭裁判所が審判で後見人を選びます。さいたま家庭裁判所によると、本人に一定額以上の預貯金などがあれば、弁護士や司法書士などの専門家を後見人か監督人に選ぶ運用が一般的です。
司法書士に、墓じまいの代行を頼めるのか
墓じまいの書類を、相続で付き合いのある司法書士にまとめて頼めないか。そう考える前に、実家の整理で司法書士に頼んだ人の記録を見ます。
妹と2人で、父の墓を永代管理の契約にし、実家を本家の従兄弟に引き取ってもらった人(note)
私達が家を解体することもなく、家が建ったまま、丸ごと本家が受け取ることになりました
もちろん「はい、あげます」では済まない 後で揉めないように、司法書士を依頼していました
父の七回忌を済ませた3年ほど前、墓は33年間の管理のあと合祀になる契約を結びました。家は、司法書士の助言で売買の形にしています。司法書士は登記と、それに付随した遺言に関わってきたと、先の特集の前書きは書いています。
出典: 実家の整理と墓仕舞い、お陰様で少し前に終わりました(note)(台帳: V0072)
同じ前書きは、墓などの祭祀財産の問題には、登記の仕事ほど関わりはなかったとも書いています。墓じまいの場面ごとに、誰がするか、誰に頼むかを、確かめた資料で並べます。
| 場面 | する人・頼む先 | 確かめられたこと |
|---|---|---|
| 改葬の申請書を出す | 墓の使用者が出します。報酬を払って書類の作成を頼む先は、法律に別段の定めがある場合を除き行政書士です。 | 名古屋市では、申請者は通常、墓の使用者です。使用者以外が出すときは委任状が要ります。 |
| 寺や霊園の墓の名義を継ぐ | 継ぐ人が、墓地の管理者に申請します。 | 横浜市営墓地は、承継許可申請書や戸籍謄本などを管理事務所に出します。 |
| 自分の土地にある墓の名義を継ぐ | 土地の登記です。司法書士が関わってきた仕事です。 | 登記の原因は「民法897条による承継」です。 |
| 親の代わりに契約する人を立てる | 家庭裁判所が審判で成年後見人を選びます。 | 成年後見人は、判断能力を欠く人に代わって契約を結び、財産を管理します。 |
| 法律のことを相談する | 法テラスの無料法律相談で、弁護士か司法書士に相談できます。 | 相続(遺言・相続放棄など)も相談できます。収入と資産の基準があります。 |
| 寺や親族ともめて、交渉を任せたい | 弁護士に頼みます。 | 弁護士でない人が報酬を得て、もめている件の交渉などを仕事にすることは禁じられています。認定を受けた司法書士(認定司法書士)の一定の訴訟代理などは別です。 |
申請書の中身と、そろえる書類は墓じまいの書類の記事に、代行に任せられる範囲は墓じまい業者の記事にまとめました。名古屋市は、申請書を郵送でも受け付けています。
墓石を撤去する工事は、複数の石材店から見積もりを取り、額と内訳を比べます。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事にあります。
名義人が亡くなった墓。名義の書き換えに登記は要るのか
親や身内が亡くなると、家の登記や口座の名義の手続きが続きます。では、墓の名義はどうするのか。従姉の遺産を相続し、従姉の家の墓をいずれしまうつもりの人の記録です。
闘病を支えた従姉の養女として相続人になり、従姉の家の墓をいずれしまうつもりの人(アメブロ)
3月に亡くなった従姉から相続した現金が500万ほどありました。
従姉の入院代、葬儀代、戒名料、納骨式、墓石彫刻、空家の片づけ、雑草刈り、交通費、司法書士や登記、その他もろもろで350万くらいかかりました。
この人は、1月に亡くなった従兄の口座の相続手続きも、司法書士に頼んでいます。墓は、こうした相続財産とは別に、継ぐ人が決まると法テラスは説明しています。
出典: 89歳、母の年金は月4万円、貯蓄も尽きます(アメブロ)(台帳: V0107)
寺や霊園の墓地は、一般に、経営の許可を受けた寺院や公益法人、自治体の所有と考えられていると、愛媛大学の竹内康博教授は書いています。
横浜市が2022年10月に聞いた調査では、墓を持つか使える市民1,119人のうち、寺などの宗教法人墓地が48.8%で最も多くありました。運営主体ごとの内訳は、墓じまいした後の土地の記事の図にあります。
寺や霊園の墓の名義の書き換えは、登記ではなく、墓地の管理者への手続きです。横浜市営墓地は「名義の書換(承継)」と呼び、必ず事前に墓地管理事務所へ相談するよう案内しています。使用者と違う姓でも継げます。
| 墓のある場所 | 名義を継ぐ手続き |
|---|---|
| 寺の墓地(大谷本廟の例) | 使用権承継願に、所属寺の住職の署名捺印が要ります。祭祀承継者指定書や、名義人と継ぐ人の戸籍謄本・印鑑登録証明書もそろえます。 |
| 公営墓地(横浜市営墓地の例) | 承継許可申請書、使用許可証、継ぐ人の住民票や戸籍謄本などを出します。 |
| 自分の土地にある墓 | 土地の所有権を継ぐ登記をします。相続人全員(遺言執行者がいればその人)と継ぐ人の共同申請が、実務の扱いです。 |
自分の土地の一部を墓地にした個人の墓地は、今は原則として新しく作れませんが、全国各地に多くあります。その土地の所有権は、民法897条で、祭祀を主宰する人に受け継がれると竹内教授は書いています。
八王子市は、自宅の墓地からの改葬について案内しています。墓地の経営許可の証明が出せない正当な理由があれば、権利者がわかる登記簿の写しなどを持って相談します。
墓地をやめて地目(登記された土地の用途)が変われば、登記されている持ち主(登記名義人)が1か月以内に変更の登記を申請します。法務局の記載例でも、申請人は登記記録にある今の登記名義人です。地目を変えるまでの順番は同じ土地の記事に、名義人が亡くなった墓を誰の名前でしまうかは祭祀承継者の記事に市ごとにまとめました。
親が認知症・継ぐ人が決まらない。家庭裁判所が関わるとき司法書士は
名義人の親が存命でも、認知症で契約を結べないことがあります。家の売却をきっかけに、義母に成年後見人を付けた人の記録です。
認知症の義母に成年後見人を付けた、息子の妻(note)。後見人は原文では「士業の方」
それが義母に後見人をつけるきっかけとなったのだが、家はまだいい、家は。税金やなんやらで、その存在を、親類縁者は意識せざるを得ない。 では、墓は?。 義母の代理として裁判所が指名した成年後見人の士業の方がしっかり話をまとめてくださったおかげで、私たちが高知県に行くことなく、義母の実家は売却された。
義母の実家の土地は、親族の共有名義でした。墓があると知ったのは、後見の準備中に出てきた寺の案内からです。墓の話には、誰も触れてくれないといいます。後見人の職務は、後見が終わるまで続きます。
出典: 墓の世話は誰がする?(note)(台帳: V0066)
後見人は、家庭裁判所の審判で選ばれます。専門家が加わる場合を、さいたま家庭裁判所の後見人向けQ&A(2020年1月)が説明しています。本人に一定額以上の預貯金などがあれば、弁護士や司法書士などの専門家を後見人に加えるか、監督人に選ぶ運用が一般的です。監督人には、続けて財産の管理や後見人の監督をしてもらいます。
| 場面 | 手続き・代わりに動く人 | 知っておくこと |
|---|---|---|
| 親が認知症で、契約を結べない | 家庭裁判所が審判で成年後見人を選びます。 | 後見人は、選任の審判をした家庭裁判所に、職務の内容を定期的に報告します。 |
| 継ぐ人が話し合いで決まらない | 家庭裁判所に、調停(話し合いの手続き)か審判を申し立てます。 | 法テラスの無料法律相談は、弁護士か司法書士が受けます。 |
| 自分の死後の墓の管理を頼みたい | 亡くなったあとの事務を頼む契約(死後事務委任契約)で、頼む事務の例に「埋葬後の墓の管理等」があります。 | 頼む相手の例に、弁護士・司法書士・行政書士といった「士業の人」が挙がっています。 |
継ぐ人は、実際には親族の話し合いで決まるのが通常です。決まり方の順番は祭祀承継者の記事に、後見人が改葬を申請するときの書類は同じ記事の後見人の節にまとめました。死後事務委任は一人っ子・独身の墓じまいの記事で扱っています。
法テラスの無料法律相談は、1回30分で、同じ問題につき3回まで受けられます。3人家族で東京に住むなら、収入29万9,200円・資産270万円が基準です。依頼する費用を法テラスが立て替える制度もあります。相続放棄を考えているなら、相続放棄と墓じまいの記事もあわせて読めます。
まとめ
墓じまいで司法書士が関わるのは、主に墓の土地の登記と、親の後見の場面です。名古屋市の案内では、改葬の申請は通常、墓の使用者がします。寺や霊園の墓の名義は、墓地の管理者に承継を申請して継ぎます。自分の土地にある墓は、民法897条による承継として、土地の登記をします。
親が認知症なら、家庭裁判所が後見人を選び、専門家が加わることもあります。迷ったら、法テラスの無料法律相談で、弁護士か司法書士に相談できます。撤去の工事は、複数の石材店から見積もりを取って比べます。北九州市も市立霊園の案内で勧めています。
墓じまいと一緒に、書類や登記に向き合った3人の口コミ
最後に、母の署名捺印をもらって寺と話した人、祖父が残した家の名義を整理した人、義実家の相続と納骨堂を話し合った人の記録から、一節ずつ紹介します。
母の署名捺印をもらって、菩提寺の住職と墓じまいの話を進めた人(note)
前回は、お話がうまく出来なくて、私自身もこーゆーのよく分かっていないこともあって、離檀のお話をしようと思ったけれど、言えないで終わってしまった。
ただ 墓じまいをします。 だけでは、名義人が生きている限り、離檀にはならないみたい。
出典: 菩提寺でついに「離檀」。墓じまいの費用と本音、全部書く(note)(台帳: V0067)
母方の祖父が残した田舎の家の名義を整理した孫。自分の代で墓じまいになりそうだと書く(note)
母方の祖父が亡くなったあと、 「さらに田舎に家があります」 という話が突然出てきました。
母も私も行ったことがない。 築約70年。 しかも親戚に貸している。
知らんがな。 書類を見ると、 家が2軒あることになっている。 増えるな。 現地へ行けば家は1軒。名義も複雑。登記などで 約10万円 飛びました。
出典: 災害、葬式、負動産。アラサー、人生から終活教材を配布された話(note)(台帳: V0028)
義父が移した納骨堂のこれからを、夫と義弟と話した長男の妻(アメブロ)
食べながら義弟が
手続き中の相続人登記申告の件や、今の義母の預金通帳の残額報告をしてくれて、
他には
庭の草刈りをいつ頼むかとか、
この家を処分するための準備など
夫と3人で話しました。
その中で夫が、
今後考えるのは
おふくろが亡くなった時に
あそこの納骨堂にいれるのか?
という事だよね。
出典: 義実家のお墓問題(認知症やっちゃんの日々・アメブロ)(台帳: V0088)
