まず結論から
- 山の中の墓をしまうときも、遺骨を移すには遺骨のある市区町村の改葬許可(遺骨をほかの墓へ移す許可)が要ります。
- 撤去の見積もりは、店によって積算の単位が違います。写真と案内図を添えて、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も、複数の業者からの見積もりを勧めています。
- 見積書は「一式」の中身を確かめます。日本石材産業協会のガイドラインは、登録店に、一式に含むものの明記と、含まないものは別途費用になる旨の記載を求めています。
- 墓じまいを考えるきっかけの具体的な課題で最も多いのは、「今あるお墓の管理やお参りが大変」の21.0%です。全国石製品協同組合が2026年4月、全国の40〜70代500人に聞きました。
- 家の近くの自分の土地へ墓を移すにも、墓地の経営の許可が要ります。雲南市は、その基準に、近くに使える自治体の墓地が無いことなどを挙げています。
重機が入らない山の墓も、しまえるのか
山の斜面の墓を前に、まず浮かぶのは「工事ができるのか」という心配です。墓をしまうときは、墓石も撤去します。札幌市は市営霊園を返すとき、墓碑などの施設をすべて撤去し、更地にして返すよう求めています。
長野市も、個人の墓地の廃止を、遺骨をすべて移し、墓石などを撤去して墓地としての使用をやめることだと説明します。丘の中腹にある先祖の墓をしまった人の記録です。
名古屋で育ち、父の出身地・愛知県新城市の丘の中腹にある先祖の墓をしまった次男(本人の記録・note)
撤去費用は難易度、作業量によってかわります。 ウチの場合は墓石が4つに墓碑が1つの合計5つ。
更に急斜面をのぼったところにあります。
相場はわかりませんが、撤去費用も26万と寺で聞いた金額のほぼ半額でしたので、相見積りをとることもせず、お願いすることにしました。
頼んだのは、父の墓碑に名前を彫った新城市内の石材店です。現地で待ち合わせて見積もりを出し、撤去の2日後に前後の写真と請求書が届きました。北九州市は市立霊園で、墓石の撤去を含む工事のあと、竣工届に写真を添えるよう求めています。
出典: 墓じまいからの永代供養98万円也(note)(台帳: V0121)
見積もりの物差しは、店ごとに違います。日本石材産業協会は2023年度、石材店に積算の単位を尋ねました。答えは、平米(面積)・才数(体積)・kg(重量)・一式・基数(墓の数)・人工計算(人件費)に分かれています。
重機が入らない墓の撤去がどれだけ上がるかを示した調査や公的な目安は、確かめた資料にはありませんでした。だから、写真と案内図を添えて、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も、複数の業者からの見積もりを勧めています。札幌市では、市営霊園を返す申請書に、石材店の名前と工事の予定日を書きます。見積もりは、役所の手続きより先に動かしておきます。
届いた見積書は、項目ごとに確かめます。日本石材産業協会は、墓石業を直接規制する法律が無いとして、自主的なガイドラインを定めました。守ると誓約した店は、登録店として公表されます。ガイドラインが登録店に求めていることを、見積書で確かめる所に当てはめます。
| 見積書で確かめる所 | ガイドラインが登録店に求めていること |
|---|---|
| 「一式」「プラン」と書かれた項目 | 含まれるものの内容・仕様・数量などを明記し、含まれないものは別途費用が発生する旨を書くこと。 |
| 見積もりのあとの追加や変更 | 見積もり後の追加や変更、見積もり以外の追加費用について、誠実に説明すること。 |
| 見積書と請求書の違い | 内容や金額に差があるときは、その差や理由・原因を説明すること。 |
| 困ったときの相談先 | 協会の「お墓なんでも相談室」から相談があれば、速やかに解決に取り組むこと。 |
山の墓では、急斜面や運び出しの手間がどの項目に入っているかを、「一式」の中身と別途の費用で確かめます。見積もりの取り方の全体は墓じまい費用の記事に、石材店の選び方は墓じまい業者の記事にまとめました。
山の中の墓は、場所をどう伝えるのか
代替わりのうちに、家の墓の場所が分からなくなることもあります。2018年の論文は、兵庫県新温泉町の旧浜坂町で、初めて永代供養墓(寺などが供養を続ける墓)を建てた寺を取り上げています。建てた理由の一つは、都市部に移った檀家の孫の世代が、共同墓地にある家の墓の場所を分からなくなったことでした。
山の中にある父と先祖の墓をしまうため、見積もりを頼む前に準備をした人の記録です。
山の中に並ぶ父の墓と先祖の墓の2基をしまうため、5社に見積もりを頼んだ一人娘(本人の記録・note)
まず、お墓の写真を撮り、近くからの案内図も用意しました。 さらに、写真には矢印をつけて場所が分かるようにしました。
山の中のお墓は、場所が分かりにくいことも多いです。このひと手間で、業者の方が迷わず来てくれるので、とても助かります。
墓の足元の土は、数年前からやわらかくなっていたといいます。用意した写真と内容は5社にメールで送り、やり取りはすべてメールで済ませました。集落の墓地には、ふだん草が伸びたままの所もあります。
出典: 墓じまいを決めるまでの話【5社見積もりを取って分かったこと】(note)(台帳: V0001)
奈良市の旧都祁村の集落墓地を調べた研究者は、2021年の講演録で、見に行くなら盆が明けてから、と話しています。ふだんは墓掃除をしないので、草が伸び放題だといいます。
現地を何度も見に行けないなら、墓の写真と、近くからの案内図を用意し、同じ内容を複数の石材店に送ります。集落の墓地や寺の墓地で最初に誰に話すかは田舎の墓じまいの記事に、現地に行けない人が代わりに頼める範囲は墓じまい業者の記事にまとめました。
参れなくなった山の墓は、どこへ移すのか
山の墓をしまう理由には、参ること自体の大変さがあります。全国石製品協同組合は2026年4月、全国の40〜70代の500人に、墓じまいを考えるきっかけを聞きました。具体的な課題で最も多いのは、「今あるお墓の管理やお参りが大変」の21.0%です。
夫の実家の墓を、帰省した夏に家族でしまうと決めた人の記録です。
夫の実家の墓(山の丘陵地の急な斜面にある市営墓地)をしまうと、義母・義弟の家族と決めた長男の妻(本人の記録・アメブロ)
ウチの娘、姪っ子たちが勢揃いして、一度に3人の孫の顔を見たせいか義母の方から「やっぱりあんたらに迷惑かけれんしばあちゃん、墓じまいすることに決めたわ。」と決心の言葉を述べてくれました。
義母は義父の月命日に欠かさず参ってきましたが、膝を悪くしてから、もう行けないかもしれないと口にしていました。移す先は、親族も眠る寺の納骨堂です。墓を買う人の中にも、参りやすい場所を重く見る人がいます。
出典: 帰省と墓じまいのこと(アメブロ)(台帳: V0104)
鎌倉新書は2026年1月、2025年に「いいお墓」を通じて墓を買った人に、重視した点を聞きました。1,267件の回答で最も多いのは「お墓の種類」の50.0%です。「お墓参りにアクセスのよいエリア」も38.4%ありました。
家の近くの自分の土地に新しく墓を設けるには、墓地の経営の許可が要ります。雲南市の案内は、許可の基準に、自分や親族のための墓であること、近くに使える自治体の墓地が無いことなどを挙げます。がけ崩れの危険があるとして指定された区域(急傾斜地崩壊危険区域)を含まないことも、基準の一つです。
家の山林や畑にある墓から遺骨を移すとき、雲南市で要る申請は次のとおりです。
| したいこと | 要る申請(雲南市の案内) |
|---|---|
| 墓は残し、遺骨だけ別の墓へ移す | 改葬許可 |
| 墓をやめて、遺骨を別の墓へ移す | 改葬許可と、墓地の廃止の許可 |
| 墓をやめて、市内の自分の土地に新しく墓を建てる | 事前の協議、墓地の経営許可、改葬許可、墓地の廃止の許可 |
愛媛県西予市では、村の墓地まで参るのが大変だとして、家の近くへ墓を下ろした例がありました。2021年の講演録によると、講演した研究者が市の担当者に聞くと、無許可の墓地なので一切認めていない、という答えでした。遺骨が入っているので撤去もできない、とも答えています。家の近くへ移すなら、墓を建てる前に役所へ相談します。
移す先の種類は墓じまいで骨はどうなるかの記事と永代供養の記事に、書類をそろえる順番は墓じまいの書類の記事にまとめました。
まとめ
山の中の墓をしまうときも、遺骨のある市区町村の改葬許可が要ります。撤去の見積もりは店で積算の単位が違うので、写真と案内図を添えて複数の石材店から見積もりを取り、「一式」の中身をそろえて比べます。
墓を買う人の中には、参りやすい場所を重く見る人もいます。家の近くの土地へ移すなら、墓地の経営の許可が要ります。墓を開けるのが怖いと感じたら墓じまいで不幸になるかの記事を、全体の流れは墓じまいとは何かの記事を読んでみてください。
山の中の墓をしまった3人の口コミ
最後に、山の中の墓をしまった3人の記録から、一節ずつ紹介します。
山の中にある祖父母の墓をしまった孫(本人の記録・note)
祖母がその場所にお墓を建てたのは、見晴らしがよく、町一面を見渡せるからでした。
私にもきっと、そこに眠る選択肢もあったのでしょう。
けれども、お墓を守っていけない以上、致し方のないことです。
出典: お墓じまい⑥閉眼供養(note)(台帳: V0063)
関東に住み、金沢市の山の墓地にある父の実家の墓の墓じまいに、母・兄・妹と立ち会った娘(本人の記録・note)
石川県の金沢市にある、熊も出るという山の墓地で、お坊さん1名、石屋さん2名と待ち合わせた。
大きな墓地だけど、意外にも入り口から少し登っていったところに、お墓はあった。 よく考えたらこれだけたくさんの墓石。 これは、案内してもらわなければ、見つからないだろう。
出典: 墓じまいを見届けてきた(note)(台帳: V0069)
山の上の墓をしまい、檀家の寺の納骨堂を一区画借りた人(本人の記録・アメブロ)
ご先祖さま…
見晴らしは悪くなりましたが
きちんと供養を続けていきたい
故のことなので
おゆるし下さいね
出典: 墓じまい〜③(アメブロ)(台帳: V0079)
