田舎の墓じまいは誰に相談?寺は住職・集落の墓地は自治会など

田舎の墓じまいは誰に相談?寺は住職・集落の墓地は自治会など
目次

実家のある田舎に、先祖の墓がある。親は年をとり、自分は遠くに住んでいて、この先は守れそうにない。でも、まず誰に話せばいいのか——そこで手が止まっていませんか。

この記事では、田舎の墓をしまうときの最初の相談先を、墓のある場所ごとに整理します。しまわずに残す道と、空き家になる実家と一緒に片づけるときの考え方にも触れます。全日本仏教会と大和証券の調査、浄土宗と曹洞宗の公式のQ&A、総務省行政評価局の報告書、横浜市の市民アンケートを出典にしました。

まず結論から

  • 田舎の墓をしまうとき、最初に話す相手は墓地の管理者です。寺の墓地なら住職、集落の墓地なら管理する自治会や代表者です。改葬(遺骨を別の墓へ移すこと)の申請には、管理者が書く、遺骨が納まっていることの証明が要ります。
  • 家系の墓が、住んでいる都道府県の外にある人は28.7%です。全日本仏教会と大和証券が2024年12月、全国の20〜79歳6,192人に聞いた結果です。
  • しまわずに残す道もあります。曹洞宗の公式のQ&Aは、遠い菩提寺(先祖の墓があり、法事を頼んできた寺)に、住まいの近くで法事ができるか相談するよう勧めています。
  • 実家の家と墓は、受け継ぎ方の決まりが別です。民法は、墓の所有権を相続とは別に扱い、祖先の祭祀(先祖をまつること)を主宰する人が受け継ぐと定めています。
  • 墓石の撤去は、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も、市営霊園の案内で複数の業者からの見積もりを勧めています。

田舎の墓をしまうとき、最初に誰に話すのか

田舎の墓は、ひとつの種類ではありません。寺の境内の墓地もあれば、集落で守ってきた共同の墓地や、家の土地にある墓もあります。どこにあるかで、最初に話す相手が変わります。

集落の墓地は珍しくありません。福井県は2013年の県議会で、県内の墓地1,961か所(2012年度末)のうち、約半数が自治体・宗教法人・個人の設置だと答えました。それ以外のほとんどは、地域の団体などが管理する集落墓地です。総務省行政評価局の2023年の報告書も、全国の墓地・納骨堂の約9割は、個人や集落などが経営するものだとしています。

義実家の墓をしまうため、寺へ相談に行った人の記録です。

義実家の空き家を売る前に、墓のことを寺へ相談しに行った人(本人の記録・note)

あの土地は、商店も会社も、絶妙に絡み合っていた。何かをするならここ、これはここでなければ買えない。そういう、地域に密着した田舎だった。

だから私は、面倒なやり取りをしなくても、ここの行政に直接言えば、なんとかなるだろうと思っていた。

そうはいかないらしい。まずは、お寺さんとしっかり向き合ってからになりそうだ。正直、心が折れそうになる。

書き手は名字を継いでいますが、その家にはほとんど関わってこなかったといいます。それでも、話を進める役が回ってきました。浄土宗の公式のQ&Aも、墓を移したいときは、まず故郷の菩提寺に事情を話して相談するよう答えています。

出典: お坊さんは、私を見なかった|義実家の墓じまいで言われたこと(note)(台帳: V0004)

先に話すのは、礼儀のためだけではありません。改葬の申請書には、墓地の管理者が作った、遺骨などを納めた事実を証明する書面を添えると、国の省令が定めています。証明が難しい特別の事情があれば、市町村長が必要と認める、これに準ずる書面で代えられます。

墓のある場所最初に話す相手資料にあること
寺の境内の墓地住職浄土宗は、移す先を決める前に相談するよう答えます。静岡大学の中條暁仁氏の2024年の学会発表は、過疎山村の寺が、専任の住職から兼務の住職に替わり、住職が住まなくなる段階を挙げています。
集落の共同墓地管理する自治会や代表者八王子市は、管理者がいるかを保健所や自治会に確かめるよう案内します。無断で移すとトラブルになる場合がある、とも書いています。
家の土地や畑の墓(個人の墓地)墓地の持ち主の家八王子市は、ふつうの書類に加えて、墓地の経営許可書の写しを求めます。総務省の2023年の報告書には、法律ができる前からある墓地(みなし墓地)を、市が把握しきれていなかった例が出てきます。
寺の檀家だが、墓は集落の墓地寺と、墓地の管理者の両方2018年の論文によると、兵庫県の旧浜坂町では寺のほとんどが境内に墓地を持たず、檀家(寺を支え、法事を頼む家)は自治区や村の共同墓地に墓を持っています。

八王子市は、確かめても管理者がいない、または分からない共同墓地は、家の墓地(自家墳墓)とみなして手続きすると案内しています。どの場所の墓でも、管理者がいるかを先に確かめるところから始まります。

集落の墓の例は福井県の記事、住職のいない寺の墓は島根県の記事で取り上げました。お寺に包むお金の考え方は墓じまい費用の記事に、書類をそろえる順番は墓じまいの書類の記事にまとめています。

管理できなくなった田舎の墓は、残すか、しまうか

家系の墓が住まいから遠い人は、少なくありません。全日本仏教会と大和証券の2024年12月の調査では、家系の墓が住まいと同じ都道府県にある人は50.5%でした。違う都道府県にある人は28.7%です。

全国の20〜79歳6,192人に、家系の墓がどこにあるかを聞いた結果の円グラフ(2024年12月・ウエイトバック後)。住まいと同じ都道府県にあるが50.5%、住まいと違う都道府県にあるが28.7%、家系の墓はないが8.5%、あるかどうか知らないが12.3%
図1: 家系の墓のある場所。出典: 全日本仏教会・大和証券「仏教に関する実態把握調査(2024年度)報告書」

遠さに加えて、墓までの道のりが負担になることもあります。地元に昔からある墓地にあった夫の実家の墓を、義父が近くの寺の納骨堂へ移した人の記録です。

夫の実家の墓を、義父が近くの寺の納骨堂へ移した長男の妻(本人の記録・アメブロ)

それから数年は私達も一緒にお墓の手入れに行きましたが、

義父母も高齢になり、あの階段を登ってお墓に行くのが辛くなってきたようでした。

ある時義父が

「今度お墓を納骨堂に移すことにした」

と言って、

今のお寺を選んで決めてきたのでした。

義実家から車で5分の近さで、長く続いたお寺です。

前の墓は、路肩に車を止め、急な石段を50段ほど登った先にありました。10年ほどたった今、夫の実家は空き家です。集落などの墓地を管理する側が高齢になり、市町村に管理を任せようとする例も、総務省の2023年の報告書に出てきます。

出典: 義実家のお墓問題(認知症やっちゃんの日々・アメブロ)(台帳: V0088)

横浜市の市民アンケートでは、墓が遠い人ほど、参る回数が少なくなっていました。横浜市は2022年10月、墓を持つか使える1,119人に、お参りの回数を聞いています。市内に墓がある435人では、年3〜4回が37.0%で最も多い回答でした。神奈川県の外に墓がある480人では、年1〜2回が43.8%、数年に1回が32.3%です。

墓を持つか使える横浜市民の、墓のある地域別のお参りの回数(2022年10月)を示した100%積み上げ縦棒グラフ。横浜市内に墓がある435人は、年5回以上23.9%、年3〜4回37%、年1〜2回24.8%、数年に1回9%。横浜市外の神奈川県内に墓がある171人は、年5回以上17%、年3〜4回29.2%、年1〜2回33.3%、数年に1回12.9%、お参りはしない7%。神奈川県外に墓がある480人は、年3〜4回13.3%、年1〜2回43.8%、数年に1回32.3%。細い帯(年5回以上・お参りはしない・無回答のうち数%のもの)は数字を省いた
図2: 墓のある地域とお参りの回数(横浜市民)。出典: 横浜市「令和4年度 横浜市墓地に関する市民アンケート調査 報告書」

全日本仏教会の調査で、継ぐ墓がある3,292人に聞くと、すでに墓を移した人は5.3%、将来移したい人は16.0%でした。しまうか残すかの間には、いくつかの道があります。

道資料にあること
墓を残し、法事は菩提寺に頼む曹洞宗の公式のQ&Aは、遠方でも法要の場所へ出向いて法事を営む住職もいると答えます。無理なら、近くの寺を紹介してもらえる場合もあるとしています。
遺骨の一部を近くへ移す(分骨)浄土宗の公式のQ&Aは、移すのがよいか、分骨がよいかを十分に話し合うよう勧めています。
地元の寺の永代供養墓へ移す永代供養墓は、寺などが供養を続ける墓です。兵庫県の旧浜坂町では、2018年の論文の時点で、16の寺のうち3つが永代供養墓を建てていました。
住まいの近くの墓へ移す改葬の申請先は、今の墓がある市区町村だと、八王子市は案内しています。

浄土宗の公式のQ&Aは、移す先を決めて手続きを終えてから寺に伝えるのではなく、はじめに相談するよう書いています。墓を残したまま、法事を住まいの近くで頼む相談も、菩提寺にできます。

墓を残すと決めたときにしておくことは墓じまいしないとどうなるかの記事に、移す先の選び方は墓じまいで骨はどうなるかの記事と永代供養の記事にまとめました。

実家が空き家になるとき、墓も一緒に片づけるには

墓のことを考え始めるきっかけが、実家の片づけという人もいます。家族社会学の2020年の論文は、進学や就職、転勤で故郷に戻らない家族が多いと書いています。空き家が増えたように、故郷の墓も置き去りになる可能性がある、という指摘です。

父の七回忌のあと、墓と家を同じ時期に片づけた人の記録です。

父の七回忌のあと、墓の永代管理を申し込み、実家の家と土地も手放した姉妹の姉(本人の記録・note)

3年程前のこと

独り暮らしだった、父の七回忌をすませたタイミングで、お墓は永代管理の手続きをしました

墓参りはいつまで出来るか

妹は同県内だけれど車で1時間半、私は5時間かけての墓参りになります

子供達の墓参りは期待出来ず、私達の代で墓仕舞いをするとにしたのです

同じころ、台風のたびに近所への迷惑が心配だった実家は、3軒先にある父の実家(本家)の従兄弟に、売買の形で引き取ってもらいました。家の手続きは司法書士に頼んでいます。家と墓とでは、受け継ぐ決まりも違います。

出典: 実家の整理と墓仕舞い、お陰様で少し前に終わりました(note)(台帳: V0072)

民法897条は、家系図(系譜)、祭具、墓(墳墓)の所有権を、相続の決まりとは別に扱います。慣習に従って、祖先の祭祀を主宰する人が受け継ぎ、亡くなった人が指定した人がいればその人です。墓を誰が受け継ぐかは、家の相続とは別に決まります。

現地に何度も通えない人は、郵送で申請できるかを確かめます。名古屋市と八王子市は、改葬許可の申請を郵送でも受け付けています。代わりに頼める範囲は墓じまい業者の記事にまとめました。

撤去の見積もりは、積算の単位が店によって違います。石材店に尋ねた日本石材産業協会の2023年度の調査では、面積・体積・重量・一式などに分かれました。複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。北九州市も、市営霊園の案内で複数の業者からの見積もりを勧めています。田舎と都市で費用の差を比べた統計は、確かめた資料にはありませんでした。費用の目安は墓じまい費用の記事にあります。

まとめ

田舎の墓をしまうとき、最初に話すのは墓地の管理者です。寺の墓地なら住職、集落の墓地なら自治会や代表者で、改葬の申請にはその証明が要ります。まず、管理者がいるかを確かめます。

しまわずに、法事だけを住まいの近くで頼む道もあります。実家と墓は受け継ぎ方が別なので、分けて話を進めます。撤去は複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。墓じまい全体の流れは墓じまいとは何かの記事にまとめました。

実家の田舎の墓に向き合った3人の口コミ

最後に、田舎の実家の墓に向き合った3人の記録から、一節ずつ紹介します。

田舎の実家の墓に、今も姉が通ってくれている人(本人の記録・アメブロ)

今でも姉が頻繁に行ってはくれてる

私も実家へ行くときは

お墓へ寄る

でもこの先は続いていかない…

出典: お墓と実家(みかんのブログ・アメブロ)(台帳: V0119)

母を見送ったあと、離檀(寺の檀家をやめること)・墓じまい・実家じまいを順に進めた人(本人の記録・note)

外野の雑音があったり、難儀したこともあったけど、割ととんとん拍子に物事が進んだ。

兄弟・親戚が直葬・墓じまいを全く気にしない人達であったことも大きな一因だろう。結構、ここが重要だと思う。

出典: 早期退職してそろそろ1年 #番外、墓じまい と 実家じまい(note)(台帳: V0051)

遠方に住み、墓じまいをして、実家も解体した人(本人の記録・note)

そんな人たちが入ってるお墓も、みんなが住んだ家も、自分が全部終わらせてしまったことは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。家族に迷惑かけられないからしょうがないんだけどね。でもやっぱり寂しいな。

出典: 実家隣人(note)(台帳: V0112)

参考文献

  1. 浄土宗「よくあるご質問」Q お墓のお引越しはできますか?.
  2. 八王子市「改葬(お墓を移す)に関する手続き」.
  3. 福井県議会 (2013)「平成25年第379回定例会(第3号 一般質問)本文」健康福祉部長の答弁(無縁墓). 福井県議会会議録検索.
  4. 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年厚生省令第24号)第2条. e-Gov 法令検索.
  5. 全日本仏教会・大和証券 (2025) 仏教に関する実態把握調査(2024年度)報告書. 全国の20〜79歳の男女へのインターネット調査(2024年12月・本調査6,192サンプル).
  6. 曹洞宗 曹洞禅ネット SOTOZEN-NET「よくあるご質問(FAQ)」.
  7. 民法(明治29年法律第89号)第897条 祭祀に関する権利の承継. e-Gov 法令検索.
  8. 北九州市「諸手続きについて(市営霊園)」.
  9. 総務省行政評価局 (2023)「墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結果報告書」. 88市町村の実地調査を含む.
  10. 中條暁仁(静岡大学)(2024)「過疎山村における寺院の消滅と地域社会の対応」学会発表要旨. J-STAGE. doi:10.14866/ajg.2024a.0_35.
  11. 辻井敦大 (2018)「先祖祭祀の変容と寺院の参与―永代供養墓の建立と意図に注目して―」宗教と社会 24.
  12. 横浜市 (2023)「令和4年度 横浜市墓地に関する市民アンケート調査 報告書」. 20歳以上の市民5,000人を無作為抽出(2022年10月・回収1,822件).
  13. 安藤喜代美 (2020)「多様化する家族と新しい墓制・葬送のカタチ」家族社会学研究 32(1).
  14. 名古屋市「改葬」(2026年7月31日更新). 健康福祉局 生活衛生部 環境薬務課.
  15. 日本石材産業協会 (2023)「お墓じまいに関する業界内意識調査」結果(2023年度お墓じまいアンケート). 回答者は石材店.

当事者の口コミの出典: V0004(note)/V0088(アメブロ)/V0072(note)/V0119(アメブロ)/V0051(note)/V0112(note)。いずれも本人が公開している記録で、引用は原文のままです。

更新履歴: 2026-10-05 公開