まず結論から
- 家が自分の代で絶えるなら、自分の代で墓をしまい、継ぐ人の要らない墓へ移すのが主な道です。鎌倉新書が2026年1月に「いいお墓」の利用者で墓じまいを考えた人・した人に聞くと、遺骨の移し先は継ぐ人の要らない形が約8割でした。
- 継ぐ人がいないことは、墓じまいを考える理由の上位です。同じ調査で、理由の2番目が「お墓の継承者がいない」44.1%でした。
- 「家」の制度は、1947年の民法改正で廃止されました。裁判所は、継ぐ人を男子から優先する見方も、亡くなった人と同じ氏を求める見方も採ってきませんでした。名古屋市の市営霊園は、甥や姪も名義を継げると答えています。
- 最後の1人は、自分の入る場所も決めておけます。都立霊園は、継ぐ人がいないと知事が認めれば、使用者の申し出で墓を合葬(ほかの人と一緒に納める形)の施設に変えます。本人や配偶者などの遺骨も納めます。
- 実家じまいと一緒に進めるなら、実家を手放す前に墓の使用許可証を探します。岡山市は、市営墓地を返す届の必須の書類に挙げています。撤去は複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も市営霊園の案内で勧めています。
家が自分の代で絶えるとき、墓はどうなるのか
継ぐ人がいないことは、墓をしまう人がよく挙げる理由です。調査の対象は違っても、3つの調査で理由の2番目か3番目でした。
姉妹2人とも嫁いだ人が、母の遺骨を実家の墓に納めた日の記録です。
姉と2人、どちらも嫁いだ娘。母の遺骨を、四日市にある実家の墓に納めた(本人の記録・アメブロ)
だが、その父自慢、というか拠り所?の墓が、
先祖代々続く古いものではなかったのだと思うと、
なんとも言えない気持ちになる。
姉も私も他家へ嫁ぎ、この墓を継ぐ者はいない。
父が亡くなったら、父の骨は墓に入れずに、そのまま墓じまいになるのだ。
これだけお金と思いがこもっているものも、
形すら無くなってしまう。
家を閉じるとは、こういうことなのだ。
何もかもが無に帰してしまうような空虚感。
納骨を終えたあと、墓の裏に、祖父が昭和14年に建てたと刻まれているのに気づいた場面です。2018年の論文は、東京都区部の寺の2016年の法要で、読み上げる家名と施主(法要を営む人)の名字が違う例を5〜10件ほど見ています。継ぐ人が絶えた実家の祭祀を、嫁に出た女性が施主として続けている例だとしています。
出典: 四十九日法要から納骨までがトライアスロンだった件 その2(アメブロ)(台帳: V0117)
「家」の制度は、1947年の民法改正で廃止されました。財産は兄弟姉妹で均等に相続するのが原則になり、墓などは、慣習に従って祖先の祭祀(先祖をまつること)を主宰すべき者が継ぐと、民法897条が定めました。
裁判所は、男の子・年上の子・婚姻した夫婦の子を先に選ぶ見方を採らず、亡くなった人と同じ氏であることも求めてきませんでした。横浜市は市営墓地の手続きの一覧に「使用者と違う姓でも承継できます」と書いています。嫁いで姓が変わった娘でも継げる墓地があるということです。継ぐ人の決まり方は祭祀承継者の記事にまとめました。
| 継ぐ人がいない墓の道 | 資料にあること |
|---|---|
| 継ぐ人を立てる | 名古屋市の市営霊園は、甥や姪でも名義を継げるとしています。続柄によっては、より近い親族の同意書が要る場合があります。 |
| 自分の代でしまい、継ぐ人の要らない墓へ移す | 宇都宮市は、引き継ぐ人がいないなら、家族や親族で話し合ったうえで墓じまいをするよう案内しています。市の合葬墓と長期納骨堂も挙げています。 |
| 今の墓を残し、最後に合葬へ切り替える | 都立霊園の施設変更です。次の節で説明します。 |
| そのままにする | 身内など縁のある人(縁故者)のいない墓の遺骨を移す許可の申請には、官報と墓の立札で1年間知らせても申し出がなかったことを示す書面が要ります。岐阜市は、市営墓地で、使用開始から30年以上名義が継がれていない区画が、全体の半数(約9,500区画)あるとしています。 |
同じ論文によると、東京都新宿区の寺の住職は、嫁に出た女性は夫側の家の墓があるため、きょうだいの墓を継げないと話しています。将来はその墓の遺骨を移して(改葬)、永代供養墓を使う予定だといいます。移す先の選び方は墓じまいで骨はどうなるかの記事、放置した墓の行方は墓じまいしないとどうなるかの記事にあります。
家の最後の1人は、自分の入る場所をどう決めておくか
墓をしまえば、先祖の遺骨の行き先は決まります。残るのは、最後の1人が亡くなったときの行き先です。継ぐ人の要らない墓は、その受け皿として広がってきました。
問芝志保氏の2022年の論文によると、1980年代後半には、単身者や子のいない夫婦が墓の契約を断られる問題が表面化しました。継承が見込めないと、公営・民営のどちらでも断られたといいます。
| 年 | 継ぐ人の要らない墓ができるまで |
|---|---|
| 1947年 | 民法改正で「家」の制度が廃止される。 |
| 1985年 | 比叡山延暦寺が、宗派を問わない永代供養墓地を開く。申し込みの多くは、男の子のいない夫婦や、単身・離婚した女性などだった。 |
| 1989年 | 新潟市の妙光寺に、宗派不問・会員制の合葬墓「安穏廟」ができる。 |
| 1991〜1998年度 | 都立霊園が、壁型墓地(1991年度)、長期収蔵施設(1993年度)、合葬式墓地(1998年度)を供給する。 |
| 1999年 | 岩手県一関市の知勝院に、日本初とされる樹木葬墓地が開く。 |
| 2003年 | 東京都霊園条例に、継ぐ人がいない墓を合葬の施設へ変える規定が加わる。 |
母が祖父母の墓をしまい、同じ寺の樹木葬に、自分と息子の入る場所まで用意した家の記録です。
祖父の買った墓を守ってきた母が、同じ寺の樹木葬を契約した。40代で子のいない娘の記録(note)
そして娘には子供がいない。
我が家は子供たちの代で絶えることになりますので、どちらかが(順番通りであれば息子が)墓じまいをすることになります。
母の選んだ墓は4人まで入ることができるものでした。
この会社は「散骨タイプ」の樹木葬も請け負っていますが、母はそれを選ばなかった。
既に鬼籍に入っている祖父と祖母、そして母の席。最後の空席に収まるのは弟になりましょう。
自分の家を持たないであろう息子に、最後の居場所を残せるのです。
元の墓は長い階段を登った先にあり、一人娘の母が両親の死後ずっと世話をしてきました。母はある日の電話で、その寺の樹木葬をもう申し込んだと告げてきたといいます。参議院の調査室の資料(2008年)も、継ぐ人を要しない墓は生前に申し込むのが一般的だと書いています。
出典: 墓じまいと母のこと【母と私と樹木葬】(note)(台帳: V0007)
最後の1人の行き先は、生きているうちに自分で決めておけます。今の墓を残し、最後に切り替える道もあります。東京都の霊園条例は、継ぐ人がいないと知事が認めれば、使用者の申し出で墓を合葬の施設に変えられると定めます。元の遺骨と本人・配偶者などの遺骨を納め、変更後の使用料は取りません。都の部長は2023年3月の都議会で、本人と配偶者は生前に登録すれば納骨できると答えました。
墓を託す相手は、親族でなくてもよい場合があります。全日本墓園協会の2016年のFAQは、配偶者も子もいない使用者が、同居していた人に口頭で墓を頼んでいた例に答えています。縁故関係がなくても承継は可能で、妥当だと思われるとしています。
| 自分の行き先の決め方 | 資料にあること |
|---|---|
| 継ぐ人の要らない墓を、生前に申し込む | 生前に申し込むのが一般的です。墓を返す人が自分の分も申し込める公営の墓は、一人っ子・独身の墓じまいの記事にまとめました。 |
| 今の墓を、最後に合葬へ切り替える | 都立霊園の施設変更です。本人と配偶者は生前に登録できます。都立霊園の手続きは東京都の墓じまいの記事で扱っています。 |
| 墓を託す人を決めておく | 同じFAQは、友人でも、民法897条で指定された人なら、墓地が拒むのは難しいと思われるとしています。指定の仕方は祭祀承継者の記事の表にあります。 |
| 亡くなったあとの事務を頼む | 身寄りのない人などが、死後の事務を家族以外に頼む「死後事務委任契約」が使われることが多いと、石川美明氏は2015年の月報司法書士に書いています。 |
| 何も決めていないと | 埋葬や火葬をする人がいないか、分からないときは、亡くなった場所の市町村長が行うと法律は定めています。 |
実家じまいと墓じまいを一緒に進めるとき、何から手をつけるか
家と墓の受け継ぎ方の違いは田舎の墓じまいの記事で扱いました。ここでは、家を手放す前にしておくことを見ます。家と墓を1年のうちに片づけた人の記録です。
実家で一人暮らしの母を見送り、離檀(寺の檀家をやめること)・墓じまい・実家じまいを順に進めた、子のいない人(本人の記録・note)
私に子供はいない。 母親の遺骨をお墓に入れても、そのうち墓守する人が居なくなる。 さて、どうしたものか。
墓守、差し迫った葬式、決断は早い方が良い。 住職は呼ばず直葬にすることにした。
・離檀 ・墓じまい ・実家じまい の流れである。
父が1人で入っていた墓は、母の気持ちをくんで、寺の新しい檀家として建てたものでした。墓の撤去と散骨を終えたあと、延べ3か月で実家を空にし、仲介で売っています。曹洞宗の公式のQ&Aも、故郷の親戚や縁者が少なくなった人に、まず菩提寺(先祖の墓がある寺)の住職と相談するよう勧めています。
出典: 早期退職してそろそろ1年 #番外、墓じまい と 実家じまい(note)(台帳: V0051)
実家を手放す前に、墓の使用許可証を探します。岡山市は、市営墓地を返す届の必須の書類に使用許可証を挙げています。
| 実家を手放す前に探すもの | 資料にあること |
|---|---|
| 墓の使用許可証 | 岡山市は、紛失したときは、返還届の添付書類欄の記載どおりに記入するよう案内しています。横浜市の市営墓地では、紛失したら再交付の手続きをします。 |
| 名義人とのつながりが分かる戸籍 | 岡山市は、墓の使用者が亡くなっていれば、使用者と申請者の続柄が分かる戸籍謄本と、申請者の住民票の写しも求めます。 |
| 墓に入っている人の本籍・氏名・亡くなった日 | 改葬(遺骨を移すこと)の申請書に、本籍・氏名・死亡年月日と、埋葬や火葬の場所・年月日を書きます。書き方は墓じまいの書類の記事にあります。 |
浄土宗の辞典によると、仏像・石塔・位牌などの「お性根を抜く」儀式は、撥遣式(はっけんしき)とも呼ばれます。実家の仏壇の位牌も、石塔と並んでこの儀式の対象に挙がっています。寺へのお礼の考え方は墓じまいのお布施の記事にまとめました。
日本石材産業協会が2023年度に石材店に聞いた調査では、見積もりの単位(積算の仕方)が店によって違いました。複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて比べます。北九州市も、市営霊園の案内で複数の業者からの見積りを勧めています。比べ方は墓じまい費用の記事に、現地に通えないときに頼める範囲は墓じまい業者の記事にあります。
まとめ
家が自分の代で絶えるなら、自分の代で墓をしまい、継ぐ人の要らない墓へ移すのが主な道です。墓は長男や同じ姓の人でなくても継げる場合があり、名古屋市の市営霊園は甥や姪にも名義の承継を認めています。最後の1人は、都立霊園の施設変更のように、自分の入る場所も生前に決めておけます。
実家を手放す前に墓の使用許可証を探し、撤去は複数の石材店に見積もりを頼みます。北九州市も市営霊園の案内で勧めています。墓じまい全体の流れは墓じまいとは何かの記事にまとめました。
家の墓を自分の代で閉じると決めた3人の口コミ
最後に、継ぐ人のいない家の墓に向き合った3人の記録から、一節ずつ紹介します。
江戸末期から続く家の墓を、子のいない夫婦で、母の七回忌のころにしまおうと考えている人(note)
親戚一同に相談し反対はなく、菩提寺の住職にも了解を得ています。いつ実施するかというと母の七回忌の2031年頃を考えています。
出典: 墓じまいについて考える(note)(台帳: V0038)
家族がいない人。母の遺骨を京都の大谷本廟に納め、祖父母と父の眠る墓はいずれ処分すると書く(note)
私には、家族がいません。
いずれこのお墓は、処分することになります。
いつ、とは決めていません。 決めていませんが、そのタイミングはきっと来るだろうと思っています。
そのときに、母のお骨をまた動かすより、最初から一緒に納めておこう。
そう考えました。
出典: 母だけがいないお墓に、手を合わせてきました(note)(台帳: V0065)
三姉妹で寺の墓をしまい、遺骨を寺の永代供養墓に合祀した人。実家じまいも済ませている(note)
1人ではとても無理だった。 絶対に心が折れていた。 3人へはもちろん、姉妹に産んでくれた父と母にも心からの感謝の気持ちがわく。私たちをここまで繋いでくれたご先祖様たちにも。 そして感じたのは、実家じまいの時とは異なり、寂しさよりも、安堵と少しの誇らしさだった。
出典: 墓じまい③ 〜無理ゲーと思われた壁に、自動ドアがついていた件〜(note)(台帳: V0060)
