まず結論から
- 役所で遺骨を移す許可を取る手続きは、神道の家でも仏式と同じです。許可を出すのは、遺骨がいまある市区町村長です。
- 違うのは、墓前のおまつりを頼む相手です。神社本庁は、節目の年の命日のおまつり(年祭)は神職にしてもらうと案内しています。
- 神社にお金を供えるときの表書きは「初穂料」「玉串料」「御榊料」などで、神社本庁はどれを使っても構わないとしています。
- 移し先は、宗教を問わない霊園からも選べます。都立霊園には、墓を継ぐ人(承継者)がいない使用者が墓を返し、都の合葬式墓地へ移す制度があります。
- 撤去工事は、複数の石材店から見積もりを取ります。北九州市も市立霊園の案内で、複数の業者からの見積りを勧めています。
仏式の言葉は、神道の家ではどう変わるのか
神道式で行うお葬式を「神葬祭」といいます。神社本庁は、いま日本で行われる葬儀の多くは仏式だと書いています。
神葬祭はいくつものおまつりからなり、地方によって少し違うこともあるとされています。仏式の言葉と、神道の家での呼び方を並べました。
| 仏式の言葉 | 神道の家では |
|---|---|
| 僧侶 | 神職。冨士霊園の案内では「神官」 |
| 法要 | 祖霊祭(年祭やお盆・お彼岸)。神社本庁は「仏式の法要にあたる」と書く |
| 四十九日 | 五十日祭(亡くなってから50日目)。納骨は、仏教は四十九日、神道は五十日祭と併せるのが一般的と冨士霊園は案内している |
| 納骨 | 埋葬祭(遺体・遺骨を埋葬するおまつり) |
| 仏壇 | 御霊舎(みたまや)。祖霊舎ともいう |
| 位牌 | 霊璽(れいじ) |
| 閉眼供養(魂抜き) | 神社本庁の神葬祭と先祖のおまつりの案内には出てこない |
仏式で墓を移すときの霊を抜く儀礼は、宗派によって呼び名がいろいろだと、花園大学の佐々木閑さんは書いています。神道の家で墓を移すときのおまつりの名前と中身は、神社本庁の神葬祭と先祖のおまつりの案内には見当たりません。墓前で何をするかは、頼む神職に尋ねます。
神社に頼めばいい?墓の書類とおまつりは頼む相手が別
神道の家の墓じまいでは、頼む相手が二つに分かれます。役所に出す書類の証明と、墓前のおまつりです。
改葬(遺骨をほかの墓へ移すこと)の許可の申請には、遺骨が納まっていることを墓地の管理者が証明した書面を付けると、省令は定めています。最初の相談先を、地域の氏神の神社にした人の記録です。
母が亡くなった年に建てた墓を、父の没後は一人で守ってきた未婚の一人っ子(個人ブログ・アメブロ)。体調不良もあって段取りを始め、日取りを決めた段階。家の宗教は書かれていない
今回、地域の氏神様の八幡様に問い合わせしてみたら同じ’永代供養’でも神道の永代供養先を教えてもらえたり、
(私が考えていたところはお寺の永代供養だった)
石屋さんを紹介してもらったり
この人はその後、八幡様に墓での儀式を頼み、石屋さん経由で移し先の受け入れ予約まで進めました。神社本庁の神葬祭の案内も、亡くなったことを氏神さまに報告するところから始まります。
出典: 11月11日11時に墓じまい(ボンボンの部屋・アメブロ)(台帳: V0030)
一方で、遺骨が納まっていることの証明を出すのは、今の墓地の管理者です。管理者は神社とは限りません。福山市は、市の共用墓地の一つを「(神道)」と分けて条例に載せています。
共同墓地や集落墓地では、証明を出す管理者がいないこともあると、全日本墓園協会の横田睦さんは書いています。何が代わりの書面になるかは市町村で違うので、改葬許可の窓口に前もって相談します。墓の書類は墓地の管理者に、墓前のおまつりは神職に頼みます。
| 頼む相手 | 頼むこと | 知っておくこと |
|---|---|---|
| 遺骨がいまある市区町村 | 改葬の許可の申請 | 許可を出すのは、遺骨がいまある地の市町村長 |
| 今の墓地の管理者(市・霊園・寺・集落など) | 遺骨が納まっていることの証明・区画の返し方 | 管理者がいない墓地は、改葬許可の窓口に前もって相談する |
| 神職 | 墓前のおまつり | 年祭は神職にしてもらうと神社本庁は案内。冨士霊園は納骨の予約で神官の手配が要るかを尋ねる |
| 石材店(複数) | 墓石の撤去の見積もりと工事 | 北九州市は、複数の業者からの見積りを勧めている |
役所に出す書類のそろえ方は墓じまいの書類の記事に、改葬という言葉の意味は改葬の記事にまとめています。公営の霊園で区画をどう返すかは、創価学会の家の墓じまいの記事に横浜市・北九州市・名古屋市の例を並べました。墓がお寺の墓地にあるなら、寺の墓の墓じまいの記事を先に読んでください。
神主へのお礼は、何と書いて包むのか
仏式の包みの書き方は、宗派ごとの公式の案内をお布施の表書きの記事で比べています。神道の家では、包みに書く言葉が変わります。神主さんに当日を仕切ってもらった家の記録です。
子のいなかった夫の義理の叔父の家から、夫が継いだ墓をしまった妻(個人ブログ・アメブロ)。墓に納まっていた遺骨は7柱
都立霊園なので、墓じまい後も都立霊園の合祀墓に納骨となります。
神道だったので、神社の神主さんに仕切って頂きました。
この家の見積もりの内訳には、神主さんへのお礼が10万円余り、供物とお花代が4万円弱と並んでいました。神社にお金を包むときの書き方は、神社本庁が公式サイトで案内しています。
出典: 墓じまいに参列(笑う私とみんなに福が来た・アメブロ)(台帳: V0014)
神社にお金を供えるときの表書きは、「初穂料」のほか「御神前」「御供」「玉串料」「御榊料」などです。神社本庁は、このどれを使っても構わないとしています。
神式の葬儀(神葬祭)のお供えには、「御霊前」「玉串料」「御榊料」が使われます。市販の不祝儀袋は「御霊前」とあっても、蓮の花の模様が付いていれば仏式用です。
| 包む場面 | 表書き |
|---|---|
| 神社にお金を供える | 初穂料・御神前・御供・玉串料・御榊料。どれを使ってもよい |
| 神葬祭のお供え | 御霊前・玉串料・御榊料 |
| 法要に招かれたとき | 神式は「御玉串料」。「御供物料」ならどの宗教でも通用する |
| 袋を選ぶとき | 「御霊前」とあっても、蓮の花の模様の袋は仏式用 |
神社本庁のこの案内は、神社へのお供えと葬儀についてのもので、墓じまいのおまつりを名指ししてはいません。お礼の額にも触れていません。額は、おまつりを頼むときに神社へ尋ねておくと、当日に迷いません。親族として包む額の目安は親戚が包むお金の記事に、当日の服装は服装の記事にまとめています。
しまったあと、遺骨はどこへ移すのか
神道の家の遺骨も、移し先は宗教を問わない墓地から選べます。冨士霊園は、宗旨・宗派を問わず、無宗教でも差し支えないとしています。後の人の負担を考えて、自分の代で墓と宗教を変えた祖母のことを、孫が書いた記録です。
父方の祖母が、自分の代で共同墓地と神道に変えたことを書いた孫(個人ブログ・note)。墓じまいはまだで、自分の代で墓を終えることになりそうだと書いている
そんな祖母は後年、「寺も墓も高い。後の人が大変だから共同墓地にする。神道にする」と、自分の代で変えました。
昔は、ばあちゃん、死後までコスパ意識高いな。と思っていました。
でも、家族を亡くし、遺骨すら戻らなかった祖母にとって、立派な墓を作ることと、亡くなった人を大切にすることは別だったのかもしれません。
祖母は若い頃の水害で子どもたちと姑を亡くし、遺骨は見つかりませんでした。のちに祖母自身も、その共同墓地に入っています。後の人が管理し続けなくてよい移し先は、いまの墓じまいでも多く選ばれています。
出典: 災害、葬式、負動産。アラサー、人生から終活教材を配布された話(あんこ・note)(台帳: V0028)
鎌倉新書が2026年1月に、同社のサイト「いいお墓」で資料請求や霊園見学をし、墓じまいを検討・実施した人に聞いた調査があります。遺骨の移し先で最も多かったのは「永代供養(合祀・合葬墓)」の43.2%で、継ぐ人の要らない形を選んだ人は約8割にのぼりました。
公営の霊園にも受け皿があります。都立霊園では、承継者がいない使用者が墓を返し、遺骨を東京都の合葬式墓地(ほかの人の遺骨と一緒に納める墓)へ移す施設変更ができます。移したあとは、使用料も年間管理料も要りません。いまの墓を更地にする費用は、使用者の負担です。
冨士霊園は、納骨の予約の電話で、僧侶・神官・牧師などの手配が要るかを尋ねています。納骨のときの神官の手配まで受ける霊園もあります。納骨の日の持ち物には、位牌や過去帳と並べて霊璽も挙げています。
| 移し先 | 受け入れの条件 | 確かめること |
|---|---|---|
| 都立霊園の合葬式墓地 | 都立霊園の使用者で、承継者がいない人 | 実施の有無や受付期間は年度で変わる。毎年4月以降に、使っている霊園へ問い合わせる |
| 宗教を問わない霊園(冨士霊園の例) | 宗旨・宗派を問わない。無宗教でもよい | 納骨の予約で、神官の手配が要るかを伝える |
| 神道の永代供養先 | 地域の氏神の神社に問い合わせて、教えてもらった人がいる(最初の口コミ) | パンフレットだけでなく、使用規則や料金表を見る |
神道の家の墓じまいは、どの順番で、いくらかかるのか
見積もりの単位(積算の仕方)は、石材店によって違います。最初に複数の石材店から見積もりを取り、項目をそろえて額と内訳を比べます。北九州市も、市立霊園の工事について、複数の業者からの見積りを勧めています。
移し先は、なるべく多くの親族と相談してから決めます。冨士霊園の改葬の案内では、移し先の受入証明書(受け入れることを示す書類)を添え、今の墓地の管理者の証明を受けた申請書を役所に出すと、改葬許可証が出ます。許可証は、移した先の墓地の管理者に渡します。墓前のおまつりは、年祭と同じように神職に相談します。墓石を撤去して元に戻すのは、墓地を使う人の義務とされています。
費用の目安は、宗教を分けずに聞いた調査で見ます。鎌倉新書の同じ調査で、実際に墓じまいをした・している人の費用は「31万円~70万円」が31.3%で最も多くなりました。内訳は費用の記事で、業者に頼める範囲は業者の記事で整理しています。
まとめ
神道の家でも、遺骨を移す許可を役所で取る手続きは仏式と同じです。証明は今の墓地の管理者に、墓前のおまつりは神職に頼みます。神社にお金を供えるときの表書きは、初穂料や玉串料など、どれを使っても構いません。移し先は、都立霊園の合葬式墓地や宗教を問わない霊園からも選べます。撤去は、複数の石材店の見積もりを比べてから頼みます。
